PCA9617Aは、低電圧(0.8 V~5.5 V)と高電圧(2.2 V~5.5 V)のファストモード・プラス (Fm+) I²CバスまたはSMBusアプリケーション間でレベル・シフトを行うCMOS集積回路です。レベル変換時にI²Cバス・システムのすべての動作モードと機能を保持するとともに、データ (SDA) ラインとクロック (SCL) ラインの両方を双方向にバッファリングしてI²Cバスを拡張することで、1 MHz時に540 pFまたは低速時に最大4000 pFの2つのバスを実現します。PCA9617Aを使用すると、システム設計者はバスを電圧と静電容量の両方について絶縁された2つのバスに分割できます。SDAピンおよびSCLピンは過電圧への耐性があり、PCA9617Aの電源がオフのときにはハイインピーダンスになります。
2.2 V~5.5 Vのバス側のポートBドライバには静的レベル・オフセットがありますが、可変電圧バス側のポートAドライバには静的オフセット電圧が不要です。これにより、ポートBのLOWはポートAでほぼ0 VのLOWに変換され、低電圧ロジックのより小さな電圧スイングに対応できます。
PCA9617AのポートB I/Oドライバは静的オフセット設計であるため、他のバス・バッファの静的オフセットや増加されたオフセットには接続できません。ただし、複数のPCA9617AのポートAを相互に接続することで、共通バスでポートAを使用したスター型トポグラフィが可能になり、ポートAを静的または増加オフセット出力を備えた他のバッファに直接接続できます。複数のPCA9617をポートAからポートBに直列に接続でき、この際にオフセット電圧は蓄積しないため、ToF (Time of Flight) 遅延のみを考慮する必要があります。
PCA9617Aのドライバは、VCC(A)が0.8 Vを超え、VCC(B)が2.2 Vを超えない限り有効になりません。ENピンはVCC(B)を基準としており、システムの制御下でドライバをオン/オフするためにも使用できます。イネーブル・ピンの状態の変更はバスがアイドル状態のときのみ行うよう注意が必要です。
ポートBの内部バッファLOWの出力プルダウンは約0.55 Vに設定されており、内部バッファの入力しきい値はそれよりも約90 mV低く(0.45 Vに)設定されています。ポートBのI/Oが内部でLOWに駆動された場合、このLOWは入力によるLOWとしては認識されません。これにより、ラッチ状態の発生が防止されます。ポートAの出力プルダウンはハードLOWを駆動し、入力レベルは0.35 VCC(A)に設定されています。これは、低電圧側の電源電圧が最小0.8 Vのシステムで、より低いLOWレベルが必要な場合に対応するためです。