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Matterの普及に伴い、複数のネットワークをサポートするスマートホーム機器が求められるようになり、その重要性が増しています。Matterは異なるブランドやエコシステムの間で相互運用性を実現する統合アプリケーション・レイヤであり、今日の住宅に設置済みの数百万台ものスマートホーム・デバイスと共存しながら、インターネット・プロトコルを土台とした基盤となってセキュアな相互運用性をもたらすことを目的に設計されています。
一般的なスマートホーム・ネットワークの多くは、次の図に示すように、複数のテクノロジを使用して構成されています。たとえば、ZigbeeやMatter over Threadを使用するバッテリ駆動または低消費電力のデバイスもあれば、Matter over Wi-Fiを使用した高度なデバイスや常時電力供給が必要なデバイスもあります。
詳細については、www.nxp.com/matterをご覧ください。
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このネットワーク・トポロジでは、セントラル・デバイスが少なくとも1つ存在し、このようなデバイス群を管理し相互接続することによってエコシステムの共存を保証しています。通常、このタスクを担う最適なデバイスがゲートウェイ/ハブであり、これによってスマートホームのローカル・ネットワーク(Zigbeeコーディネータ、Threadボーダ・ルータ、Matterコントローラー、Zigbee to Matterブリッジ)に複数のロールを埋め込む必要があります。デュアルPANのユースケースには、次のようなものがあります。
デュアルPANは、デバイスが2つのIEEE 802.15.4パーソナル・ネットワークに同時に参加できるようにする機能です。この機能により、既存の市場デバイスとMatterの相互運用が実現し、インテリジェント性の高い自動化が可能になります。たとえば、電力需要のピーク時に照明を自動的に暗くしたり、家電製品の電源を切ったり一時停止したりできます。
特定のユース・ケースでデュアルPANを最も効果的に実装する方法を決定するには、要件と重要度を評価し、優先順位を付ける必要があります。これには次の項目が含まれます。
NXPでは2つのアーキテクチャに対して広範なテストを実施し、設計の意思決定に役立つ背景情報とデータを提供しています。評価対象となった2つのアーキテクチャを以下の図に示します。エコシステムの構成や制限事項によっては、図中のRFチャネルAとBが同じになることも、異なることもあることに注意してください。
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NXPはこの2つのアーキテクチャを定義した上で、テストを実行する2つの構成を作成しました。
シングル無線機ソリューション | デュアル無線機ソリューション |
---|---|
i.MX Linuxホスト MCX W71(ThreadおよびZigbee) |
i.MX Linuxホスト K32W0 (Zigbee) + IW612 (Thread) |
テストのセットアップ、テストの実施、収集されたデータ、結果について、詳しい情報が収録されたアプリケーション・ノートを用意しています。
前述のように、ネットワーク内の各デバイスの役割がデュアルPANの結果に影響します。このようなデバイスはスリープ状態または主要回路が電源オンの状態(無線通信が常時可能な状態)で動作し、ネットワークでは同じRFチャネルまたは異なるRFチャンネルを使用できます。一般的に、デュアルPANのユース・ケースでは2つのルーティング・デバイス(常に電源オン)を使用します。
ネットワーク1 | ネットワーク2 |
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スリープ状態 | スリープ状態 |
ルーティング | スリープ状態 |
スリープ状態 | ルーティング |
ルーティング |
ルーティング |
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デュアルPANは、想定するユース・ケースと要件の優先順位に合わせて、シングル無線機ソリューションまたはデュアル無線機ソリューションとして構築できます。要件としては、サービス品質(ネットワーク・パフォーマンス)、各ネットワーク上のデバイスの役割、各ネットワークの所有権と制御権、システム・コストなどがあります。このデータは全体として、特にペイロード・サイズが大きくなりRFアクティビティが増加している状況で、デュアル無線機アーキテクチャで観察されるエラー・パケット損失とレイテンシが大幅に改善されることを示しています。
NXPの包括的なポートフォリオには、プロセッシングとネットワーキングに関する要件が異なる多様なデュアルPANユース・ケースに対応するソリューションが含まれています。以下の表に、NXPのシステム・レベル・ソリューションのスナップショットをアプリケーション別およびユース・ケース別に示しています。
アプリケーションとユース・ケース | シングル無線機ソリューション | デュアル無線機ソリューション |
---|---|---|
IoTハブZigbeeコーディネータ、Threadボーダ・ルータ、Wi-Fi、イーサネット、Matterコントローラ |
Linuxホスト i.MX 9(Matter、Threadボーダ・ルータ) |
Linuxホスト i.MX 9(Matter、Threadボーダ・ルータ) RTOSホスト |
ブリッジMatter ZigbeeとThread間のブリッジ(ZigbeeとThreadの両方のルーティング機能を備える) |
Linuxホスト i.MX 9(Matter、Threadボーダ・ルータ) RTOSホストRW612 (Matter、Threadボーダ・ルータ、Zigbee、Bluetooth LE) |
RTOSホスト RW612 (Matter、Threadボーダ・ルータ、Zigbee、Bluetooth LE) |
スマートホーム・デバイスを製造するデバイス・メーカーは、Matterの普及が進む中で、スマートホームをインテリジェント性の高い自律型スマートホームへと進化させ、同時に消費者が簡単に利用できるエクスペリエンスを実現する必要があります。そのためには、既存のテクノロジ、特に今日すでに数百万件もの住宅に設置されているデバイスをサポートしなければなりません。NXPは、このようなシームレスなエクスペリエンスの構築に伴う困難な問題を把握しており、主なテクノロジ要件に対応する専用ソリューションを提供することに引き続き取り組んでいきます。テクノロジ要件の概要については、この記事に加えて、関連のアプリケーション・ノートを参照してください。
NXP Semiconductors、ワイヤレス・コネクティビティ担当マーケティング・ディレクター
Sujata Neidigは半導体業界で30年以上の経験を持ち、現在はワイヤレス・コネクティビティ担当マーケティング・ディレクターとして、IoTコネクティビティに関連した製品マーケティングと標準準拠への取り組みを推進しています。また、NXPを代表してThread GroupおよびConnectivity Standards Allianceの理事会に加わっているほか、Thread Groupのマーケティング担当バイス・プレジデントも務めています。テキサス州オースティンを拠点としています。
ワイヤレス製品マーケティング・マネージャ
現在、ワイヤレス製品マーケティング・マネージャを務めるMichael Vannierは、ワイヤレス・コネクティビティを利用するソフトウェアやシステム・ソリューションの開発に10年以上取り組んだ経験があります。現在はNXPの製品マーケティング・チームの一員として、製品とソフトウェアの要件設定やワイヤレスMCUの仕様策定に携わっています。