ロボティクスは、業界全体にわたって、単に定義済みの機械的形態にAIを追加しただけのAIエンボディド・ロボットから、ロボットの形態、動作、検知機能がAIの能力と要件を中心に形成される、AIデファインド・ボディへと進化しています。
そして、この進化の展開とともに気付かされるのが、見るだけで感じることができないロボットは最終的に失敗する、という単純な真実です。真の自律性は、高性能コンピューティングからではなく、センサ・エッジから始まります。
現代のロボットは、高いスループットで認識、推定、AI推論を実行するために、AIグレードのコンピューティングにますます依存しています。これは、ビジョン、マッピング、プランニングを担う「ロボットの脳」です。しかし、最も高性能なグラフィックス・プロセッシング・ユニット (GPU) スタックを使用していたとしても、AIが判断したり行動を起こしたりするためには依然として、正確で、同期された、信頼できる実世界の物理的センシングが必要です。これには、振動、温度、圧力/流量、電流/電圧、重量、音響、位置などが含まれます。
高性能コンピューティングがロボットの脳として機能する一方、センサ、エッジ処理、ローカルAIはロボットの神経系および反射層として、認識から行動、適応までのループを形成します。
センシング、AIコンピューティング、リアルタイム制御が連携するロボット・システム・アーキテクチャ。
物理AIアーキテクチャをどのように組み合わせるか
これらの要素すべてがどのように組み合わさって現代の物理AIロボットを形成しているのかを実際に確認できるのは、アーキテクチャのレベルにおいてです。各部分がそれぞれの役割を担うことで、全体が1つのシステムとして考え、感じ、動くことができます。このソリューションは以下を提供します。
- センシングとエッジ・コンディショニング:マルチモーダル・センサによって、ロボットは動きや力、温度、音、位置などを認識できます。それらは適切な処理を経て同期された高品質のデータとなり、システムが状態推定、制御、および安全な適応型の動作のために使用できます
- 認識とAI:センシング層からのデータは、高性能コンピューティングで物体検出、姿勢推定、ステレオ深度、3D再構築、視覚的なSLAM(自己位置特定とマッピングの同時実行)などを実行するための素材となり、高レベルのインテリジェンス・ループを形成します
- 制御と作動:高性能コンピューティングによってグローバルなプランニングと認識を処理し、高レベルの動作目標を高速の内部ループに送信します。それによって、リアルタイム・モータ・コントローラがトルク、速度、位置のループを決定することで、すべての関節を安定させ、滑らかで精密な動きを維持できます。
- データと分析:エッジ・ゲートウェイとクラウド・サービスが、複数のセンサの傾向(スペクトル、熱、電気、位置)を組み合わせて(センサ・フュージョン)、状態ベースの監視と予知保全を実現します
なぜフュージョンなのか?なぜ今なのか?
アーキテクチャの各レイヤが互いに連携する(センシングがコンピューティングに情報を与え、コンピューティングが制御を導く)仕組みを理解すれば、フュージョンが重要である理由を理解できるようになります。日常の作業に取り組む協働ロボット・アームを想像してみてください。関節の奥深くでは、わずかな2~3 mAの電流オフセットとともにトルク・フィードバックのゆっくりした熱ドリフトが生じています。これはベアリングの摩耗を示す初期の兆候ですが、埋もれていて見えません。AIはどんなに優れた性能を備えていても、信頼できる信号に基づいてのみ機能します。フュージョンは、かすかな手がかりをノイズから拾い出し、ロボットが対処できる情報へと変えるのに役立ちます。
NAFEによるフュージョンのサポート
ロボティクスの分野全体にわたり、シングル・センサのしきい値からマルチセンサ・フュージョンに移行することで、信頼性と自律性が大幅に向上します。ロボットの関節とモータの正常性に関する研究では、温度、電流/電圧、振動、位置のフィードバックを融合させることで、異常検出の精度が劇的に向上し、従来の制限が適用される状態になる前に、バックラッシュ、過負荷、熱ドリフト、ベアリング摩耗などの初期の兆候を特定するのに役立つことが示されています。多くの導入シナリオでは、このマルチモーダル・フュージョンにより、ロボットの予期しない停止や緊急サービス・イベントの発生が30~45%減少します。
モバイルおよびヒューマノイドのプラットフォームでは、固有受容感覚信号(慣性測定ユニット (IMU)、トルク・センサ、エンコーダ)を環境センシング(視覚、深度、音響)と継続的に融合することで、故障検出、ナビゲーションの堅牢性、および安全な反応動作を強化できます。AIに基づく予測プログラムの拡張を進めるロボティクス・チームは、メンテナンスの労力が最大40%減少し、ミッション・レベルの障害が約50%減少したことを報告しています。しかし、この移行は、AIがロボットのボディ、パワートレイン、環境から豊富なマルチセンサ・データ・ストリームを継続的に供給されている場合にのみ可能になります。
まさにここで、NXPのソリューションが役立ちます。フュージョンが機能するのは、すべての信号がクリーンで、校正され、調整された状態でシステムに入力される場合のみであり、NAFEはそのために必要とされるセンシング基盤を提供するように設計されています。
このような物理AIへの移行により、すでに主要なプラットフォームの再構築が始まっています。NXPとNVIDIAによる最新の物理AIコラボレーションは、ロボットのボディ全体で高密度のリアルタイム・センシングを行う必要性が高まっていることを示しています。NVIDIAのHoloscanとNXPのエッジ・プロセッサは高性能コンピューティング・レイヤを提供しますが、これらのシステムの信頼性は、最終的には、それらに供給されるセンサ・データの質に依存します。
ここで、NAFEが基礎的な役割を果たします。それは、ヒューマノイドおよびモバイル・ロボットが信頼性の高いフュージョン、モーション制御、予知保全を行うために必要な、校正済みで同期されたマルチモーダル測定値を提供することです。
NXP NAFEは、センサ・フュージョンの基盤として、校正済み、時間調整済みのアナログ・データを提供します。
NAFEがロボティクスとインダストリアル・エッジでセンサ・フュージョンを推進
NAFEは、フュージョン・ワークフローのために構築されており、デターミニスティックで低ノイズのマルチモーダル測定値を提供します。共有される励起処理、同期されたデルタ・シグマ変換、組込みの診断機能により、フュージョン・アルゴリズムが必要とする校正済み、時間調整済みのデータ基盤を提供します。フュージョンに基づく変革の核心には、2つの強力なNXPコンポーネントがあります。
最大の汎用性を確保するために設計されたこれらのデバイスは、0~5 V、0~10 V、±5 V、±10 V、0~20 mA、4~20 mA、±20 mAなどの幅広いアナログ入出力信号をサポートしながら、高い確度 (0.01%) と精度(最大24ビット)によってクラス最高レベルの測定を実現します。
フュージョン用のマルチ入力ハードウェア・ファブリック
ロボティクスと予知保全には、複数のセンシング形式からデータをキャプチャする必要があります。NAFEのマルチチャネル・アーキテクチャは、統合アナログ・フロントエンド (AFE) により、振動、温度、圧力/流量、電流/電圧、音響、位置の各信号を厳密に制御され多重化された方法でサンプリングできます。その優れたクロスチャネル分離と、共有されるクロック・デルタシグマ・アーキテクチャにより、チャネル間の相関を改善し、センサ・フュージョンの精度を低下させる可能性のあるタイミング・エラーやミスマッチ・エラーを防ぎます。
高い精度により障害の初期の兆候を明らかに
最も強力な予測変数の多くは微妙なものであり、一定負荷下でのステータ温度のわずかな上昇、ベアリングのスペクトル・エンベロープのわずかなサイドバンド、インバーター電流の微小な位相スキューなどです。ロボット・モータのフュージョンに関する研究では、微妙なマルチシグナル・パターン(温度 + 電圧 + 位置)が予測において非常に大きな重みを持つことが明らかになっています。NAFEの精密な変換と低いノイズ・フロアにより、これらの微弱な兆候がノイズよりも高いレベルに持ち上げられ、AIとフィルタリングによって迅速に検出できるようになります。
組込み診断によるフュージョン・パイプラインの保護
フュージョンは、各チャネルが信頼できるものであることを前提としています。NAFEでは、断線/短絡検出、範囲外フラグ、校正/正常性チェックにより、破損したチャネルがフュージョンによる判断に影響を与えるのを防ぐことができます。これは、早期の感度を維持しながら誤警報率を低く保つために不可欠であり、AIに基づく予知保全プログラムによるダウンタイムとコストの改善を達成するための鍵となります。
フリート全体にわたる工場校正の拡張
予知保全はロボットのフリート全体に関わる問題です。工場での校正は、現場でのチューニングを減らし、ユニット間の再現性を向上させ、アセット間の比較可能性を強化します。これはまさに、特定のセンサに依存しない予知保全プラットフォームのブラウンフィールドでの導入を促進するために必要なものです。
これらの能力が組み合わされることで、フュージョンは理論的な実装を超えて、大きな規模でも実用的なものとなります。そのため、NAFEは次のようなROIの高いエッジ・シナリオで使用されることが増えています。
- 組み立てロボットとコボット:ヒューズ接合部の振動、モータの電流、ギヤボックスの音と温度により、バックラッシュ、潤滑の消失、ベアリングの摩耗などの初期兆候が明らかになることで、マルチモーダル・フュージョンは、動作精度に影響を与える前に、複数の兆候が示す微妙な劣化を捉えることができます
- マテリアル・ハンドリング・システム(ロボットをサポートするコンベア、ファン、ポンプ):フュージョンされたデータにより、振動スペクトル、超音波キャビテーションの兆候、エアフロ―/圧力、電流高調波などを組み合わせて不均衡、不整合、緩み、流量制限の自動トリアージを行うことで、回転装置における根本原因の明瞭性を高めながら誤警報を低減します
- 産業用パワー・エレクトロニクスとドライブ(ロボットのモーション・システム):ロボット・アーム、ガントリー、コンベア、自律機械に電力を供給しながら、ヒューズ・インバーターの電流/電圧高調波、熱上昇、取り付け箇所の振動などによって絶縁の経年劣化、ベアリングの摩耗、トルク・リップルの問題を検出することで、ロボット・セルの性能に波及するモーションの不安定性を早期に防ぎます
- モバイル・ロボットと自律走行搬送ロボット (AMR)(ロボット・フリート用のエッジ・ゲートウェイ)NAFEベースのエッジ・ゲートウェイを使用して、充電中またはメンテナンス中にホイール・モータの電流、ギヤボックスの振動、エンコーダのドリフト、熱的シグネチャをキャプチャすることで、AMRフリート全体の継続的なヘルス・プロファイルを把握して、ダウンタイムを短縮し、安全で信頼性の高いロボット・ナビゲーションとミッション実行を確保します
ロボット・アーム、AMR、および自動化されたセルを稼働させ続けるモーション・サブシステム全体にわたって、これらすべてのユース・ケースは、1つの共通の要件に依存しています。それは、新たな故障の予兆である機械的および電気的シグネチャをキャプチャできる、クリーンで同期されたマルチモーダルなセンサ・データです。NAFEエコシステムはまさに、そのようなデータを提供するために構築されています。
ロボティクス・アプリケーションでNAFEを活用
NAFEファミリは、高精度のシグマ・デルタAFEから、高電圧産業用製品、さらにはHART (Highway Addressable Remote Transducer) 対応オプションまでを網羅し、プロトタイピングから生産までにわたる統一されたデターミニスティックな測定アーキテクチャを提供します。
NAFEユニバーサル・センシング・モジュール (USM) の評価ボード、リファレンス・デザイン、およびすぐに使用できるグラフィカル・ユーザー・インターフェース (GUI) により、チームは各種センサを導入して、ロボットのヘルス・モニタリングとナビゲーション・グレードの信号処理に必要な信頼性の高いフュージョン・データを即座に視覚化することができます。ロボティクスにおける予知保全、マルチセンサ・フュージョン、フリート・レベルの信頼性を探求している開発者にとって、NAFEデバイスまたはユニバーサル入力モジュール (UIM) キットを評価することは、測定品質と統合のシンプルさを直に体験する最速の方法です。
NXPのロボティクス向けセンサ・フュージョン・ソリューションとしてのNAFE
センサ・フュージョンは、単一のセンサによるモニタリングよりも優れているため、精度が向上し、ダウンタイムとコストが大幅に削減され、ロボティクスや産業メンテナンスの標準となっています。NXPのNAFEは、高忠実度でマルチ入力の校正済みAFEを、豊富な診断機能とともに提供します。優れたインテリジェンスに加え、信頼性の高い信号をフリート全体に対して大規模かつ長期間にわたって供給できます。