使い捨て梱包材は環境を脅かす大きな問題であり、2022年にEU域内で廃棄された梱包材は住民1人あたり約187 kg、総計で8,340万トンに達しています。EU域内ではプラスチックの最大40%が梱包材として使用されていますが、植物関連業界の最新のイノベーションが、この現状に大きな変化をもたらそうとしています。再利用可能な輸送用梱包材の利用を推進する取り組みの1つである、inotecのインモールド・ラベルには、植物用トレイの再利用率を最大限に高めるためにNXPのUCODE RAIN RFIDチップが使用されています。
植物業界の梱包材への要件は変わりつつある。
EUの包装・包装廃棄物規則 (PPWR) は、2030年までに輸送用梱包材を再利用可能にすることを義務付けています。2030年以降、輸送用(国内輸送、国外輸送、同一企業の事業所間輸送)に使い捨てプラスチックを使用することが欧州全域で禁止されます。これは特に、現在年間で最大7億個の使い捨てプラスチック・トレイを使用しているヨーロッパの植物卸売業界にとって大きな課題となっています。Environmental Action Germanyの試算では、ドイツだけでも年間1億5,000万個のトレイ(2,100万キロ)が廃棄物に分類されています。
追跡と再利用が可能な、信頼性の高いトレイ。
欧州の温室園芸作物市場が2032年までに210億ユーロ/240億ドルの規模に成長すると見込まれている中で、EU域内の生産者や取引業者は、新しいPPWR規制を非常に深刻な問題として認識しています。2022年に起業したEuro Plant Tray (EPT) 協同組合が最近開発したのは、地球環境に配慮した再利用可能な植物用トレイです。その核となるのは、inotecのラベルに埋め込まれたNXPのUCODE® RAIN RFIDチップです。NXPのUCODEテクノロジは、ラベルの従来型バーコード、QRコード、読み取り可能なテキストをサポートするだけでなく、再利用の行程全体でトレイを追跡するために役立ちます。このソリューションは耐久性に優れ、植物が輸送される各段階で高い視認性を実現するだけでなく、廃棄や在庫品の損失を防ぐためにも役立ちます。
厳格な環境要件を満たす。
EPTは、inotecの革新的なラベルに対して非常に厳しい要件を指定しました。この新しい植物用トレイは、いくつもの地点を経由する厳しい輸送行程で100回以上再利用できるよう設計されており、このラベルはそのすべての段階で使用されます。まず、生産者がトレイに植物を植えて、卸売業者に出荷します。次に小売業者と販売店に配送され、トレイが空になると、洗浄と選別が行われます。その後、同じサイクルが最初から開始されます。トレイは適切な管理を行えば何年も使用できます。冷蔵に耐え、水温30°Cで30バールの水圧に耐え、超長距離の輸送にも耐えます。
そもそも、製造工程の段階で、ラベルは射出成形プロセスの高温に耐える必要があります。機械的な頑丈さを備え、傷がつきにくいこと、汚れや紫外線に強いこと、さらに洗浄剤への耐久性が高いことも必要です。そして言うまでもなく、植物を温室から顧客に届けるまでの一般的な行程の中で、汚れや暗さ、寒さなどの厳しい条件下でもラベルを読み取れることが求められます。inotecが特別に開発した、NXPのUCODEチップ搭載のRAIN RFIDインモールド・ラベルは、こういった要件をすべて満たしたソリューションです。
循環性のある選択肢が求められている。
EPTは理想的なソリューションを求め、複数の関係企業の協力を得て、生産者から卸売業者、最終小売業者までのサプライチェーンを5種類選び、テスト・トレイの評価を実施しました。高い評価を得たバージョンが、現在生産されています。頑丈なポリプロピレン・プラスチック製の革新的なリユーサブル・トレイは、適切に使用すれば最大20年間使用でき、植物の卸売流通サイクルの中をノンストップで循環させることができます。タグ付きトレイは9メートル離れた場所から識別できるため、流通する間も常に追跡することができます。RAIN RFIDスキャナはトレイの数と各トレイのシリアル番号を読み取るため、トレイを目視で数える必要がなく、2Dデータ・マトリックス・コードを読み取る手間もかかりません。
持続可能性の高い成功の種をまく。
新しい規制と要件の変化が世界中で認識されつつある現在、柔軟なソリューションと革新的なパートナーがかつてないほど切実に求められるようになっています。責任ある生産と消費は常に重要な課題と位置付けられますが、今回のNXPとinotecのテクノロジを組み合わせたEPTの事例のように興味深いユースケースは、テクノロジによって持続可能な画期的ソリューションが生み出されたときに何が可能になるのかを思い起こさせてくれます。