半導体製造フローのすべてのテスト工程は1つの判断に基づいています。それは、その工程がもたらす価値は、それに伴うコストに見合う必要があるからです。場合によっては、その判断はビジネス・ケースに明文化されます。しかし、多くの場合は、欠陥がどこで発生するのか、それを検出するのにどれだけのコストがかかるのかについて長年蓄積されたデータに基づく確立された手法として、製造フローに組み込まれています。とはいえ、その根底にある判断は同じです。つまり、フローのこの段階で不良を発見するのは、そのためにかかるコストに見合う価値があるという判断です。そして、それは品質に関する判断ではなく、むしろ財務上の判断です。
その判断の背後には、3つの考え方があります。第1に、テストは完璧な結果をもたらすものではなく、フィルタとして機能します。そして、現実世界のあらゆるフィルタと同様に、その選別能力には限界があります。第2に、欠陥に伴うコストは製品ライフサイクルのどの段階で欠陥が発見されるかによって大きく異なり、そのコストは下流工程へと進むたびに急激に増加します。第3に、一部の欠陥は全テスト工程を通じても検出されず、デバイスが実際の使用環境に投入された後になって初めて顕在化する可能性があります。
テストの仕組みと完璧なフィルタが存在しない理由
テストは、チップを直接「良品」と「不良品」に分類するものではありません。各チップがあらかじめ定義された電気的基準を満たしているかどうかに基づいて、合格または不合格に分類します。通常、この分類は正常に動作するチップか欠陥のあるチップかとほぼ一致しますが、必ずしも完全には一致しません。テストはフィルタであり、微妙なばらつきのある集団に適用されるフィルタと同様に、その選別能力には限界があります。そのため、チップは本来とは反対側に分類されることがあります。
テストに不合格となったものの、実際には正常に動作するチップは過検出と呼ばれます。過検出されたチップはすべて、正常に動作するチップであるにもかかわらず、選別によって除外され、廃棄されます。このコストは即座に顕在化し、歩留まり、良品1個あたりのコスト、さらには生産ラインを流れるすべてのウェハの経済性に直接影響します。
一方、テストには合格したものの、実際には欠陥を抱えているチップはエスケープと呼ばれます。そのチップが出荷され、何かしらの製品に組み込まれ、後になって故障が出た場合、そのコストはテスト工程ではなく、顧客先、受入検査、実使用中、または最も要求の厳しい用途で顕在化します。そして、最も要求の厳しい用途で顕在化した場合は、保証対応範囲をはるかに超える重大な影響を及ぼします。
この2つのケースはトレードオフの関係にあります。テスト基準を厳しくすれば、エスケープの数は減少しますが、歩留まり損失が増加します。逆に基準を緩めれば歩留まりは改善しますが、欠陥チップがエンド・ユーザーの元に届く可能性が高まります。テスト基準をどれだけ厳しくするかは、製品、顧客層、そして対象市場における過検出とエスケープのそれぞれの影響を考慮したうえで、どのコストがより許容できるかを熟考したうえで判断します。
現実世界のどのフィルタも、エスケープを完全にゼロにすることはできません。重要なのは、それぞれのケースのコストを正しく把握したうえで、そのバランスをどう取るかということです。
半導体のテストはフィルタとして機能します。良品が却下されること(歩留まり損失)もあれば、欠陥品が検出をすり抜けて顧客の元に届くこと(エスケープ)もあります。
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10倍の法則:業界を超えて見られる共通パターン
欠陥にかかるコストはそれがどの段階で発見されるかによって変わるという考え方は、半導体業界に特有のものではなく、製造業、建設業、ソフトウェア開発、金融サービスなど、さまざまな分野で見られます。その際によく使われる言葉に「10倍の法則」というものがあります。これは「1-10-100の法則」とも呼ばれます。
- 欠陥を予防することが最もコストが低い
- 欠陥が発生し、それが顧客の元に届く前に社内で検出・修正した場合、コストはおよそ10倍になる
- その欠陥が顧客の元に届いた場合、コストはおよそ100倍になる可能性がある
10倍の法則の解説
この倍率はあくまで概算です。重要なのは、その数値が示す構造的なパターンです。予防は、製品に大きなコストが積み上がる前の早い段階で行われます。社内での修正は、すでに一定のコストが積み上がった製品に対して行われます。さらに、市場流出後の欠陥への対応は、すでに顧客の元に届き、多くの場合はより大きなシステムに組み込まれ、保証責任を伴う製品に対して行われます。用途によっては追加の規制対応リスクも発生します。
半導体製造の場合、この考え方がテスト・フローの各段階にそのまま当てはまります。同じ欠陥であっても、発見される場所によってコストは異なります。
欠陥コストは、発見場所がバリュー・チェーンの下流へ進むほど急激に増加します。
- ウェハ・テスト:ダイが不良として識別され、パッケージング・コストがかかる前に除外される。この場合のコストはおおよそ1
- パッケージ・テスト:すでにパッケージングが施されており、製品価値はウェハのときよりかなり高くなっている。この場合のコストはおおよそ10
- 顧客による受入検査:チップがすでに出荷され、物流を経て顧客の手元にある。この場合のコストはおおよそ100
- システム組立て:チップがより大きな製品に組み込まれており、チップの取り外しや交換にかかるコストはチップ単体ではなくシステム全体のコストに近づく。この場合のコストはおおよそ1,000
- フィールド故障:製品がすでに運用中であり、返品、輸送、故障解析、交換対応に加え、ブランドへの影響や顧客関係への影響が積み重なる。この場合のコストは10,000以上
全体像を理解するために、ウェハ・テストの段階であれば数セントのコストで選別して除外することができた欠陥を例に考えてみましょう。
- パッケージ・テスト中に発見された場合、コストはパッケージ済みの部品の価格のみです
- システム組立て中に発見された場合、チップが組み込まれたシステム全体の価格になる可能性があります
- フィールドで発見された場合、返品プロセスが発生し、その総コストは製品の用途や使用環境に応じて異なります。そしてコストは累積していきます
- ウェハ・テストをすり抜けてフィールドに到達した欠陥は、コストが10倍ではなく、1万倍以上になります。
ここで、過検出とエスケープの非対称性が具体的に見えてきます。過検出のコストはチップ1個分の利益に相当します。一方で、顧客の元に到達したエスケープは、その何十倍も大きなコストがかかる可能性があります。そして、発見場所が下流へと進むほど、その差はさらに拡大していきます。
10倍の法則の適用
実際の数値を当てはめることで、この法則は概念的な枠組みを超えて、実用的なガイドとなります。テスト工程のコストはわかっています。その工程を省略した場合のエスケープ率も推定できます。また、フィールド・リターン1件あたりの平均コストも測定できます。これらの数字を集めて、10倍の法則に照らすと、テストへの投資を正当化できるだけでなく、それが経済合理的な選択であることも明らかになることがよくあります。そして多くの場合、コストの差は大きなものになります。
ただし、顧客基盤をセグメント別に見た場合、この計算は変わってきます。たとえば、民生機器のフィールド・リターンにはある種のコスト構造があります。一方、自動車業界や医療業界のフィールド・リターンは、規制の関係で、コスト構造が異なっています。安全上のリスクと法的責任リスクがまったくの別次元です。安全性が重視される用途向けの製品を主に扱う企業は本質的に異なるコスト構造の下で事業を行っており、テスト投資に関する意思決定はそれに即したものであるべきです。
キラー欠陥、潜在欠陥、および信頼性のレイヤ
エスケープ率だけでは全体像の一部しか捉えられません。すべての欠陥がテスト時に故障を引き起こすわけではないからです。中には、直ちに検出可能な故障として現れる欠陥があります。これらはキラー欠陥と呼ばれます。キラー欠陥は歩留まり損失として現れ、計測され、出荷前に排除されます。
2つ目のカテゴリーは、数が少なくて見つけにくいうえに、より大きな影響を及ぼすことがよくあります。これらは潜在欠陥、または信頼性欠陥と呼ばれます。潜在欠陥はチップが受けるすべてのテストに合格し、出荷され、実際の運用に入った後で故障します。実際の使用環境でチップが受ける熱ストレスと電気的ストレスが組み合わさることによって故障の引き金になることもあります。また、長期間の使用によって、テストでは検出対象となっていなかった限界的な弱点が表面化することもあります。
複数の半導体メーカーの研究では、この2種類の欠陥の間に一貫した統計的関係があることが示されています。テスト時に歩留まり損失を引き起こすキラー欠陥100件に対して、およそ1~2件の潜在欠陥がフィールドでの信頼性故障につながります。歩留まり損失を引き起こす欠陥と潜在欠陥を引き起こす欠陥は、基本的には同種の欠陥です。違いは主に、その欠陥の大きさや、ダイ上のどこに発生するかにあります。
潜在欠陥がもたらす違い
潜在欠陥は初期テストを通過し、実使用中に故障する可能性があるため、メーカーはフィールド・リターンのリスクを低減するために、歩留まりパターンやストレス・スクリーニングを活用しています。
第1に、高歩留まりのウェハが必ずしも高信頼性のウェハであるとは限りません。しかし、低歩留まりのウェハは、統計的に見て潜在欠陥リスクの高いチップを生み出す可能性が高くなります。テスト時に悪い結果を示したロットほど、フィールド故障が多く発生する傾向があります。このため、たとえテストに合格したチップであっても、ウェハ上で多数の不良チップに囲まれている場合には出荷対象から除外するメーカーもあります。歩留まり欠陥と潜在欠陥は空間的相関性が十分に強いため、すべての電気テストを通過していても、不良チップに囲まれたチップはリスクが高いと判断されます。
第2に、潜在欠陥が関係している場合、エスケープの計算でフィールド・リターン・コストが過小評価されることがあります。前のセクションで説明したコストの階段構造は、「欠陥が特定の工程で発見される」という前提に立っています。しかし潜在欠陥はこの前提を崩します。潜在欠陥は、チップが数週間、数か月、あるいは数年にわたって運用された後に初めて顕在化することがあります。その時点では故障はコスト構造の最も深く、最も高コストな段階に到達しています。そのコストはチップ交換だけでは済みません。故障診断、現場対応、そして規制対象用途では原因調査や報告対応まで含まれます。
半導体業界はこの問題を深刻に受け止めており、そのことはテスト・フローに表れています。バーンイン・テストにより、高温・高電圧環境にチップをさらすことで初期故障を加速させ、潜在欠陥を顧客先ではなく工場内で顕在化させます。さらに補完的な手法も用いられます。IDDQ(静止電源電流)測定により、機能テストでは見つけにくい微細な電気的異常を検出するために静止電流を測定します。また、ストレス・スクリーニングにより、管理された極限条件下でチップを評価することで、出荷前に限界的なデバイスをふるい落とします。
不良率は通常、PPM(100万個あたりの不良品の数)で表され、自動車分野のようにより厳しい品質基準を持つ市場ではPPB(10億個あたりの不良品の数)で管理されます。こうした目標値が、スクリーニング技術、監視手法、プロセス制御への継続的な投資を促しています。信頼性は、「許容すべき残余リスク」ではなく、「継続的に低減すべき対象」として扱われています。
テストの経済性に関する3つのポイント
実際には、こうしたテストの経済性から、企業が歩留まり、コスト、そして下流工程のリスクのバランスをどのように取るべきかについて、3つの実務的な結論が導かれます。
第1に、テスト歩留まりは複数の側面を持つ財務指標です。上流工程がどれだけ効率的であるか、現在のテスト基準によってどれだけ利益が削られているか、顧客側へどれだけのリスクが持ち越されているかを示しています。そのうちの1つだけを最適化し、他を無視すると、ある指標では優秀に見えても、別の指標では有害な結果を招く意思決定につながります。
第2に、顧客セグメントはエスケープ率そのものと同じくらい重要です。損益分岐点分析は、テスト投資が回収可能になる地点を示してくれます。しかし、どこまで投資すべきかはわかりません。フィールド・リターンに法的責任や規制対応責任が伴う市場では、適切なテスト投資水準はその損益分岐点を大きく上回る所に存在します。平均コストに目を向けていると、テール・リスクが見えなくなることがあります。しかし、この業界ではそのテール・リスクが極めて高コストになる場合があります。
第3に、欠陥の早期発見は、コスト回避だけでなく、そのコストが組織内のどこで発生するか、そして結果を自社でどの程度コントロールできるかにも関係しています。ウェハ・テストで見つかった欠陥は、製造上の問題であり、解決の道筋も単純です。しかし、同じ欠陥が顧客によって発見された場合は、まったく別の種類の問題になります。その場合には、多くの部門が関与し、時間がかかり、結果を予測するのが非常に難しくなります。欠陥を早期に発見するほど、対策の選択肢は多くあります。そして、下流工程へ進むにつれて、低コストの対策ほど効果が小さくなっていく傾向があります。
この考え方は多くの業界に当てはまります。ただし、半導体業界では、その結果の代償が特に大きくなります。
¹出典 – Price、D. W.、およびSutherland、D. G.、Semiconductor Digestの「Process Watch: The most expensive defect – Part 2」、2015年。