NXPの新製品であるチャネル・サウンディング認定取得済みのKW47およびMCX W72ワイヤレスMCUは、自動車メーカーによる距離測定に役立ち、カー・アクセスや自律型システムに新たな測距ソリューションをもたらすともに、より広範な各種アプリケーションにも活用できます。
Bluetooth®テクノロジは、これまで単なる通信インターフェースとして捉えられていましたが、距離検知テクノロジとしての新たな活用方法が見出されています。これは、2024年8月にリリースされたBluetooth® Core 6.0に追加されたBluetooth®チャネル・サウンディングによって可能になりました。2016年にリリースされた新しいLE 2MとCoded PHY以来の画期的な進歩を示すこのブレークスルー・テクノロジは、環境の認識を向上させる新たなクラスの自律的な位置認識システムへの道を開きます。
NXP初のBluetooth 6.0チャネル・サウンディング認定済みかつCANおよびAUTOSAR対応の車載用MCU
Bluetoothチャネル・サウンディングは、電力効率に優れ、受信信号強度インジケータ (RSSI ) を使用するレガシー・システムに比べてより高いセキュリティと精度を実現しており、テクノロジの世界に新たな距離認識手法をもたらします。コネクテッド・デバイス間で距離が認識されることでさまざまな新しい可能性が生まれます。NXPは新しいKW47ファミリのシングルチップ・ワイヤレス・デバイスでイノベーションを推進しています。この製品は、NXPが初めてBluetooth Core 6.0のBluetoothチャネル・サウンディングに対応した車載認定デバイスであり、Bluetooth LEによる優れた位置特定を実現します。KW47は、AEC-Q100グレード2認定取得、ASPICEおよびMISRAソフトウェア品質規格への準拠、コントローラ・エリア・ネットワーク (CAN) 通信を活用したAUTOSARのサポートなど、自動車業界の最新の要件に適合しています。
その違いとは?Bluetoothを市場セグメントをまたいだ距離センサとして使用
従来のBluetoothシステムでは、位置特定において、精度に限界があり、セキュリティ面でも既知の脆弱性があるRSSI が使用されていました。これに対し、Bluetoothチャネル・サウンディングでは、高精度な位相ベースの測距 (PBR) とエンド・ツー・エンドのセキュリティを実現する往復時間 (RTT) ベースの測距を組み合わせて利用します。これにより、Bluetoothチャネル・サウンディング対応デバイスが、より高い精度とセキュリティをもって継続的に距離を特定することが可能になります。KW47は、自動車の世界にBluetoothチャネル・サウンディング機能を導入し、Bluetooth LEデバイスがドライバーの距離を正確に特定できるようにします。最大100メートル離れた位置からドライバーを検出し、接近距離を詳細に測定できるため、ドライバーの動きや行動を予測することが可能であり、近距離での測距では一般に20~50 cmの精度を達成します。そのため、早すぎたり遅すぎたりすることのない適切なタイミングで意図した操作をトリガーでき、カー・エントリー前の事前承認やシームレスなロック解除など、よりスマートでセキュアな機能にも対応できます。
その結果、ユーザー・エクスペリエンスにさらなる洗練性と自動化がもたらされます。システムは、ドライバーが近づいているタイミングやさまざまな機能を作動させるタイミング、バッテリーの持続時間延長のために休止状態を維持するタイミングを認識すると同時に、応答性とセキュリティを確保します。一方で、MCX W72は、これらの機能を自動車以外の市場にまで拡張します。KW47を含むスケーラブルな製品ファミリの一部であるMCX W72は、インダストリアルIoT、スマート・インフラストラクチャ、民生用アプリケーションにおいて同様のBluetoothチャネル・サウンディング機能を実現します。
正確かつセキュアで応答性に優れたNXPのKW47は、自動車にBluetoothチャネル・サウンディング機能をもたらします。KW47のBluetooth機能の詳細をご覧ください。
KW47とMCX W72が内包する強化されたセキュリティと専用ローカリゼーション・エンジン
KW47とMCX W72はいずれも、高性能のワイヤレス・コネクティビティと組込みインテリジェンスおよびセキュリティを兼ね備えています。プラットフォームには専用のローカリゼーション・コンピューティング・エンジン (LCE) が搭載されており、このLCEは、Cortex M33メイン・コアの最大10倍の速度で複雑な位置特定アルゴリズムを高速実行します。これにより、リアルタイムの測距アプリケーションにおいて応答時間が短縮されるとともに、電力効率が向上するため、セキュア・アクセスや屋内ナビゲーションなどのアプリケーションに最適です。セキュリティには、暗号鍵の保管や信頼できるブート・プロセスなど機密性の高い動作を分離できるEdgeLock®セキュア・エンクレーブ、コア・プロファイルを統合することで対応しています。高度なBluetooth LE無線はソフトウェアで定義されており、内部SDK検証の基準として24の同時接続を使用しながら、最大+10 dBmの送信出力で堅牢な長距離通信を実現します。
認証の複雑さ
Bluetooth Core 6.0対応の製品、特にBluetoothチャネル・サウンディングなどの高度な機能に対応した製品の認証は、複雑で入り組んだ進化中のプロセスです。認証の取得には、柔軟性に加え、Bluetooth Special Interest Group (SIG ) との緊密な連携、相互運用性に関わるイベントへの参加や新しい標準との整合性が必要です。NXPが早期より仕様の策定に関与していることは、システムに関する深いノウハウやグローバルな相互運用性テスト・イベントへの定常的な参加と相まって、標準の設定者およびテクノロジの実装者としてのNXPの役割を際立たせています。多方面にわたる精力的な取り組みの末、NXPで初となるBluetoothチャネル・サウンディング対応の車載グレードのチップであるKW47のリリースを迎えられたことをとても嬉しく思います。
より大きなファミリの一部としてのKW47とW72x
Bluetoothテクノロジは今や業界をまたいで浸透しており、この遍在性はNXPのポートフォリオにも反映されています。KW47はBluetoothチャネル・サウンディングを統合し、自動車アプリケーションにおける正確な距離測定と位置特定を可能にします。一方でMCX W72は、これらの高度な機能をインダストリアルIoTの世界に導入し、複雑な環境での正確な位置特定と空間認識をサポートします。
MCX W72は、同じプラットフォーム・アーキテクチャを、正確な位置特定、セキュア・アクセス、シームレスなコネクティビティが鍵となる自律的ホームやビルにまで拡張します。ZigBeeとThreadをサポートし、そのためのメモリ・フットプリントを備えたマルチプロトコル無線は、Matterに対応し、画期的なスキルの組み合わせを実現します。
共通プラットフォーム・アプローチの一環として、複数のローカリゼーション手法の整合により相互運用性を確保しています。NXPが早期にKW47とMCX W72のシリコン・プラットフォームおよびアルゴリズムのプロトタイプを作成し、エコシステム・パートナーに提供したのはこのためです。NXPのお客様、スマートフォンOEM、ツール・ベンダー、テスト機器メーカーは、コア仕様がリリースされる前から既にNXPの開発ボードを活用してBluetoothチャネル・サウンディングのあらゆる可能性を見出しており、BT SIGによる広範な相互運用性試験 (IOP) 後に向けて完全に備えています。
車載カー・アクセス・エコシステムとの連携
CCC準拠のアーキテクチャでは、Bluetooth LEと超広帯域無線 (UWB) が連携してユーザーの存在を認証し、セキュアなカー・エントリーを可能にします。カー・アクセス・コンソーシアムでは、Bluetoothチャネル・サウンディングやその他のBluetooth Core 6.0の機能をデジタル・キー・システムに組み込むことが検討されています。KW47チップは、Bluetoothチャネル・サウンディングを使用してUWBの作動タイミングと方法を管理することで、この組み合わせに機能強化と優れた電力効率をもたらします。これにより、システム・レベルのパフォーマンスが向上し、同様なハイエンドのユーザー・エクスペリエンスが提供されることが期待されます。NXPは常にCCC標準およびエコシステムへの主要な貢献者であり続けています。KW47は、将来を見据えたデジタル・キー向けの認証済みソリューションとともに、Bluetooth LEの第3世代としてその伝統を引き継ぐものです。カー・コネクティビティ・コンソーシアム (CCC) は世界的に認知されていますが、KW47は、中国における代替ソリューションであるIntelligent Connected Car Ecosystem Alliance (ICCE) およびIntelligent Car Connectivity Open Alliance (ICCOA) もサポートしています。
2025年中の量産開始に備え、サンプルを提供中
Bluetooth SIGによる認証を既に取得済みのKW47は、NXPで初となるBluetooth Core 6.0のBluetoothチャネル・サウンディングと任意のアドバタイジング・フィルタリング(Decision-Based Advertising Filtering:DBAF)に対応した車載グレードのワイヤレスMCUであり、Bluetooth Core 5.4のタイヤ空気圧モニタリング・システム (TPMS) に対応するBluetooth LE PAwRなどの機能も追加されています。KW47とMCX W72は、現在サンプルを提供中で、2025年12月の量産開始を目指しています。お客様がKW45やMCX W71での経験に基づいてデバイスの評価やプラットフォームへの統合を迅速に行えるようにする、開発ツールおよびリファレンス・デザインが用意されています。
車載用BluetoothアプリケーションについてはKW47を、産業用およびその他のアプリケーションについてはMCX W72をご覧ください。