GPSを利用したナビゲーション、インフォテイメント、ワイヤレス・コネクティビティなどの自動車テレマティクス機能は、道路を走るためのエンジンやホイールと同じくらい、ドライビング・エクスペリエンスに不可欠な存在となっています。このような自動車の大幅な進化をもたらしているのは、シリコン・テクノロジとソフトウェア・テクノロジの急速な進歩です。
最新の自動車はインテリジェント性の高いソフトウェア・デファインド・ビークル (SDV) プラットフォームであり、数百万行のコードで動作し、搭載されているセンサ、プロセッサ、ワイヤレス・モデム、トランシーバは車載ネットワークでリンクされています。開発者が自動車を設計する手法も進化しており、デジタル・ツイン仮想化などのAIを利用した手法を使って車両システムのデジタル版レプリカを作成し、リアルタイムでパフォーマンスをモデル化することができます。このような先進テクノロジを融合させることで、安全性が高くスマートで高度なコネクティビティを備えた、快適な自動車が実現します。
SDVプラットフォームでは、自動車に新しい機能を追加するためにハードウェア・コンポーネントを追加するのではなく、Wi-Fi、Bluetooth、GPS、携帯電話通信網などのワイヤレス接続を使用したOTA(無線)アップデートによるアップグレードを行います。データ・スループットの急増に対応するために、車載アーキテクチャは高速イーサネットを利用したネットワークへと移行しつつあります。
こうした自動車業界の動向を見据え、NXPはi.MX 94アプリケーション・プロセッサ・ファミリを導入しました。これはi.MX 9ポートフォリオの最新のファミリであり、現代の自動車の複雑化が進むコネクティビティ要件を満たすことを目的に設計されています。最大構成でArm Cortex-A55コア4個、Cortex-M7コア2個、Cortex-M33コア1個を搭載するi.MX 94ファミリは、パフォーマンス、電力効率、リアルタイム制御、機能安全、統合機能を組み合わせてテレマティクス・システム設計に取り入れた、他に類を見ない製品です。次のような優れた機能があります。
- i.MXプロセッサとして初めてイーサネット・タイムセンシティブ・ネットワーク (TSN) スイッチを搭載し、高速な初期化と低レイテンシでのデータ・パケット処理が可能に
- ペリフェラルを統合したi.MX 94ファミリは、Wi-Fi、Bluetooth、携帯電話モデム、車車間/路車間通信 (V2X)、GPSなど、車両のすべての外部ワイヤレス接続を管理するハブとして機能
- ポスト量子暗号 (PQC) による高度なセキュリティ
- 機能安全の強化により、自動車業界の厳しい基準への準拠をサポート
テレマティクスの世界は進化しています。NXPのi.MX 94ファミリが提供する幅広い車載用コネクティビティについては、こちらをご覧ください。
2.5 GイーサネットTSNスイッチの統合による初期化の高速化と低消費電力動作
i.MX 94ファミリはi.MXプロセッサとして初めてイーサネットTSNスイッチをオンチップ搭載しているため、外部イーサネット・スイッチが不要です。この画期的な統合により、開発者はコンポーネント数、基板スペース、部品表 (BOM) を最小限に抑えて開発を合理化し、システム全体のコストと複雑さを軽減できます。
イーサネットTSNスイッチの統合によって、重要データの優先順位付け、迅速な起動、不要なデータ転送の最小化を実現し、高速通信と高効率が求められる車載ネットワークに適した、エネルギー効率の高い高速ネットワーキングを可能にします。この統合によってプロセッシング・ユニットとネットワーク・コンポーネント間の距離を最小限に抑え、レイテンシを短縮しています。このことは、診断、緊急警報、車両状態データのリアルタイム送信など、遅延が許されないアプリケーションでは非常に重要です。
さらにイーサネット・スイッチを統合することで、外部スイッチを使用する場合よりも消費電力が少なくなります。開発者はプロセッサに内蔵されたリアルタイム・コアを使用して、イーサネット・スイッチをコールド・ブートから迅速に初期化でき、早期の内部ネットワーク可用性に関する厳しい要件を満たすことができます。また、オンチップのリアルタイム・コントローラでスイッチを管理しながら、チップの他の部分をシャットダウンできるため、作動中の消費電力を削減できます。また、i.MX 94ファミリはNXPのEnergy Flexアーキテクチャによって電力使用量を細かく制御できるため、自動車用のテレマティクスとコネクティビティに適した電力効率の高いプロセッサです。
NXPの新しいi.MX 94 アプリケーション・プロセッサ・ファミリ。
テレマティクス・アプリケーションに適したコネクティビティ・ドメイン・コントローラ
i.MX 94ファミリは、コネクティビティ・ドメイン・コントローラの中核を担うことを目的に最適化されています。コネクティビティ・ドメイン・コントローラは、最新のSDVアーキテクチャに合わせて車両のすべての外部ワイヤレス・コネクティビティを1つのECUに統合し、車載イーサネット・ネットワークに接続します。i.MX 94ファミリは高速イーサネットを内蔵しているだけでなく、SPI、I2C、UART、USB、PCIe、CAN-FDの各インターフェースを介してワイヤレス・モデム、トランシーバ、ネットワークに接続できます。5G携帯電話通信、ラジオ・チューナ、車車間/路車間通信 (V2X)、高精度全地球航法衛星システム (GNSS)、Wi-Fi、Bluetooth、超広帯域無線 (UWB) などのワイヤレス・コネクティビティに対応します。
すべての外部無線インターフェースを1つのECUに集約することで、すべての外部通信に一貫したサイバーセキュリティ・フィルタリングを適用するモジュール型コネクティビティ・ソリューションが実現します。また、RF共存管理を強化できるほか、クラウド管理型のOTAソフトウェア・アップデートをサポートします。
ポスト量子暗号による最先端のセキュリティ
最新の自動車コンポーネントは、他のコネクテッド・デバイスと同じセキュリティ・リスクをもたらします。また、コネクティビティの選択肢が広がったことで、自動車は複数の攻撃対象領域を抱えたワイヤレス・ノードになるため、セキュリティに関する重大な懸念が生じます。i.MX 94ファミリは、悪意のある侵入やサイバー攻撃から車載システムを保護するために、NXPのEdgeLockセキュア・エンクレーブ・テクノロジを搭載し、ポスト量子暗号 (PQC) をサポートします。
その他に組込まれているセキュリティ対策としては、リモート・リカバリ機能、高速ブートを実現する専用のV2X暗号アクセラレータ (Prime)、安全で遅延の少ない通信を実現するためのリアルタイム認証と更新された暗号プロトコルのサポートがあります。eIQ Neutron Neural Processing Unit (NPU) がチップに内蔵されているため、AIと機械学習 (ML) を利用した異常検出が可能になり、これまで特定されていなかった新しいゼロデイ攻撃を認識できます。このようなサイバーセキュリティ・テクノロジを組み合わせたi.MX 94ファミリは、テレマティクス向けの安全でセキュアなプロセッシング用途の選択肢となります。
組込みの機能安全と厳格な業界標準への準拠
i.MX 94ファミリはSoC内にハードウェアを統合しているため、高度に構成可能で安全性の高い通信機能と機能安全を実現でき、ISO 21434とISO 26262 ASIL B準拠をサポートします。冗長性、監視、エラー訂正などの機能を含む重要システムの管理に割り当てられた専用コンポーネントによって、テレマティクス・システムの安全な動作が保証されます。開発者が厳格なセーフティ要件を満たすシステムを構築できるよう、NXPは安全性が最適化されたファームウェア、ドライバ、セーフティ・ソフトウェア・コンポーネントを含む機能安全向けソフトウェア・ツールおよびライブラリを提供しています。
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NXPのi.MX 94ファミリが備える高速イーサネット機能、先進的なセキュリティ、機能安全のメリットを、車載用のテレマティクス・アプリケーションやコネクティビティ・アプリケーションで活用できることをご確認ください。
テレマティクスと車載ネットワーキングの詳細については、NXPのi.MX 94アプリケーション・プロセッサ・ファミリを参照してください。