正確で安全な距離測定は、インダストリアルIoT (IIoT) 環境にとって不可欠です。その用途は、セキュアな資産追跡や自動倉庫システムからビル・オートメーションやアクセス制御システムまで多岐にわたります。しかし、標準的な測距方法では、最新のIIoTアプリケーションで求められる精度とセキュリティ機能を提供するのが困難です。
NXPのMCX W72ワイヤレス・マイクロコントローラ・ユニット (MCU) は、Bluetooth®チャネル・サウンディング機能を内蔵してこれらの課題に対処します。また、FRDM-MCXW72およびMCXW72-LOC開発ボードを介したハードウェア・サポートにより、迅速なプロトタイプ作成と導入が可能になります。
Bluetoothチャネル・サウンディング・テクノロジの利点
Bluetoothによる測距は長年にわたって、受信信号強度表示 (RSSI) と到着角度/出発角度 (AoA/AoD) による手法に依存してきました。これらのアプローチは実装が簡単である一方、精度が限られ、セキュリティ上の脆弱性も抱えています。例えば、RSSI測定は環境要因やマルチパス干渉の影響を受けやすくなっています。どちらの方法も、攻撃者が信号強度を操作して距離測定をかく乱する中間者(Man-in-the-middle:MITM)攻撃に対して脆弱です。
Bluetoothチャネル・サウンディングでは、ラウンドトリップ時間と位相ベースの測距を組み合わせています。
Bluetooth 6.0仕様の一部であるBluetoothチャネル・サウンディングは、ラウンドトリップ時間(Round Trip Time:RTT)と位相ベース測距(Phase-Based Ranging:PBR)という2つの補完的な手法を組み合わせた、根本的に異なるアプローチを採用しています。RTTでは、攻撃者が再作成できない暗号化されたタイムスタンプ付きパケットを介して、距離の大まかな推定をセキュアに実行します。次に、PBRにより、交換されたトーンの位相シフトを測定することで細かい精度を確保し、屋外環境での標準的な精度として±0.5メートルを達成します。
チャネル・サウンディング・テクノロジは、タイムスタンプ付きの暗号化されたパケットを使用し、RTTとPBRの測定値を交差検証することにより、リレー攻撃やアンプ攻撃に対する強固な防御を構築します。このテクノロジは、スマート・ドアロック、アクセス制御システム、キーレス・カーアクセス、デジタル・ホーム・アクセス、ビル・オートメーション・システムなど、セキュリティに直接影響する高精度で正確な距離測定を必要とするアプリケーションに最適です。
高度なBluetoothチャネル・サウンディングとLocalization Compute Engineを使用してIoTプロジェクトを設計しましょう。次のプロジェクトに向けてFRDM-MCXW72開発ボードをご注文ください。
NXPのMCX W72:インダストリアルIoTアプリケーション向けチャネル・サウンディング
MCX W72は、インダストリアルIoTアプリケーション向けに設計されたNXPのBluetooth 6.0チャネル・サウンディング認定ワイヤレスMCUです。Bluetooth Low Energy (LE)、Matter、Thread、ZigBeeを含むマルチプロトコル・コネクティビティをサポートします。
MCX W72のブロック図。 ブロック図をダウンロードすると、拡大図がご覧いただけます。
MCX W72の測距機能の中核となるのが、専用のLocalization Compute Engine (LCE) です。この専用設計ハードウェアは、測位アルゴリズムをArm® Cortex®-M33コアに比べて最大10倍高速化し、アルゴリズムの実行時間を約45%短縮します。その結果、バッテリー駆動のIIoTデバイスにとって重要な、低レイテンシと低消費電力の両方が実現します。
NXPのMCX W72は、暗号鍵の保管や信頼できるブート・プロセスなど機密性の高い暗号動作を分離できるEdgeLock®セキュア・エンクレーブ・コア・プロファイルの統合を通じてセキュリティを処理します。さらに、高度なBluetooth LE無線は最大24の同時接続をサポートし、複数のデバイスが通信して測距動作を調整する必要がある複雑なIIoT環境向けに堅牢なコネクティビティを提供します。
ハードウェア・イネーブルメント:プロトタイプ作成を迅速化する開発ボード
NXPは、Bluetooth®チャネル・サウンディングを実際のアプリケーションに組み込む開発者を支援するために、ラピッド・プロトタイピング用の専用ハードウェア・プラットフォームを提供しています。これらのボードは、評価を簡素化し、市場投入までの時間を短縮するために役立つほか、セキュアで正確な測距ソリューションを構築するための柔軟なオプションを提供します。
FRDM-MCXW72開発プラットフォーム
FRDM-MCXW72を使用すると、NXPの実証済みのFRDMプラットフォーム・アプローチをワイヤレス開発にも適用できます。この費用対効果の高いボードには、NXP IoT Toolboxモバイル・アプリですぐに動作するワイヤレス・デモが事前にプログラムされており、開発者は箱を開けてから数分以内に基本的な機能を評価できます。Arduinoヘッダ、mikroBUS、ペリフェラル・モジュール (Pmod) コネクタなど、さまざまな拡張オプションが用意されているため、アプリケーション固有のプロトタイプ作成用にセンサや周辺機器を簡単に追加できます。また、LPC55S69に基づくオンボードMCULinkデバッガは、外部のデバッグ・ツールを必要としません。その他の機能としては、外部フラッシュ・メモリ、I²C (Inter-Integrated Circuit) センサ、光センサ、RGBおよび青色LED、コントローラ・エリア・ネットワーク (CAN) コネクティビティ、プリント基板 (PCB) アンテナ、導電性(ケーブル)測定用uFLコネクタなどがあります。
MCXW72-LOCローカリゼーション・ボード
MCXW72-LOCは、チャネル・サウンディング・アプリケーションの開発者向けに専用の評価プラットフォームを提供します。このIIoT評価キットは、Bluetooth LE、ZigBee、Thread、Matter、CANコネクティビティなど、MCX W72のマルチプロトコル・ワイヤレス・サポートに関して包括的なテスト機能を提供します。
MCXW72-LOCは、2つの2.4 GHzアンテナをRFスイッチによって動的に切り替えるデュアル・アンテナ・ダイバーシティ・システムを備えており、FRDM-MCXW72ボードのシングル・アンテナと比較して測距精度が向上します。また、キャパシタのはんだ付けを変更することで、アンテナの代わりにSMAコネクタも選択できます。これにより、導電性(ケーブル)測定の実験が可能になります。
MCXW72-LOCボードには、チャネル・サウンディングのデモが事前にプログラムされています。開発者は、2つのMCXW72-LOCボードを組み合わせて、ワイヤレス測距セッションのシームレスなデモを実行し、実際の状況でパフォーマンスを評価できます。また、高度なMCU-Linkデバッグ・プローブ、高出力および低消費電力オプション、デュアルCANトランシーバ、ボタン、スイッチ、LED、およびMikroE Clickコネクタを搭載し、センサを容易に統合できます。
開発エコシステムのサポート
どちらのボードも、NXPの開発エコシステムと完全に互換性があります。MCUXpressoソフトウェア開発キット (SDK) には、ドライバ、サンプル、および包括的なドキュメントが含まれています。また、アプリケーション・コード・ハブ (ACH) はエキスパートが作成したコード・サンプルによって開発の迅速化を支援し、拡張ボード・ハブ (EHB) はNXPおよびエコシステム・パートナーからの互換性のあるアドオン・ボードを開発者に提供します。チャネル・サウンディングの測定値を正確な距離推定値に変換する処理をNXP独自のアルゴリズムによって行うため、アプリケーション開発者にとって難しい計算が抽象化されます。
NXPのKW47:車載システムにチャネル・サウンディングを導入
KW47のアーキテクチャ。 ブロック図をダウンロードすると、拡大図がご覧いただけます。
MCX W72はIIoTをターゲットとしていますが、NXPのKW47は同じチャネル・サウンディング機能を車載アプリケーションに導入します。NXP初の車載グレードBluetooth 6.0チャネル・サウンディングMCUであるKW47は、AEC-Q100グレード2の認定要件を満たし、ASPICE (Automotive Software Process Improvement and Capability Determination)、MISRA (Motor Industry Software Reliability Association) のソフトウェア標準、およびAUTOSARに準拠したCAN通信をサポートします。
NXPのKW47は、セキュアなデジタル・キー・システムやカーアクセス・アプリケーションの対応距離を大幅に伸ばし、最大100メートル離れた位置からドライバーを検出できるほか、近距離では20~50 cmの精度を備えています。KW47とMCX W72の間で共有されるプラットフォーム・アーキテクチャには、同じLCEとEdgeLockセキュリティが含まれ、車載アプリケーションとIIoTアプリケーションで一貫した開発エクスペリエンスと相互運用性を確保できます。また、KW47-LOC開発ボードは、車載開発者に対してMCXW72-LOC for IIoTアプリケーションと同様の評価ツールを提供します。
量産対応ソリューションが利用可能
NXPのMCX W72とKW47はすでに量産中です。開発ボードが利用可能で、開発者はすぐにプロトタイプ作成を開始してソリューションの市場投入に備えることができます。
可能性を解き放ちましょう。FRDM-MCXW72の詳細をご覧ください。