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スマートホームのコネクテッド・デバイスからインダストリアル・ネットワークまで、最新の組込みシステムにはワイヤレス・コネクティビティが不可欠です。NXPでは、マイクロコントローラ・ユニット (MCU) やマイクロプロセッサ・ユニット (MPU) のワイヤレス・ソフトウェアを簡素化することで、開発を迅速化し、一貫性と拡張性の向上につなげています。
NXPのワイヤレス・ソフトウェアは、Wi-Fi、Bluetooth(ClassicおよびLE)、ZigBee、Thread、近距離無線通信 (NFC)、超広帯域無線 (UWB)、さらにはWi-SUNやワイヤレスM-BusなどのSub-1 GHzテクノロジなど、多様なプロトコルをサポートしています。その幅広いサポートは、NXPのハードウェア・ポートフォリオと開発エコシステムの幅広さに対応するものです。
開発に使用しているのがi.MXアプリケーション・プロセッサであっても、MCXマイクロコントローラであっても、NXPのワイヤレス・スタックが基本的なソフトウェア・イネーブルメントの一部を構成しています。つまり、LinuxやAndroidのボード・サポート・パッケージ (BSP)、MCUXpressoソフトウェア開発キット (SDK)、およびZephyrの各種ビルドにワイヤレスが統合され、グラフィックス、AI、音声処理などのツールとともに提供されます。
NXPのアプローチはシンプルです。コネクティビティを個別または特殊なケースとして扱うべきではありません。NXPのソフトウェア・エコシステムに属する他の部分と同様にアクセスできるようにし、同様な一貫性を持たせる必要があります。
ワイヤレスの実装には、アプリケーションに応じて複数の形式があります。スタンドアロンのソリューション(MCX W、RW612など)では、単一のチップ上にプロセッサと無線を搭載した完全なワイヤレス・システム・オン・チップ (SoC) が使用されます。ホストレス構成では、無線はスタックの上位レイヤを実行する外部プロセッサに接続されます。
スタンドアロンのユース・ケースは特に興味深いものです。コントローラ、スタック、およびお客様のアプリケーションを単一のデバイス上で緊密に統合する必要があるため、メモリ管理と電力の最適化が重要になります。NXPでは、これらの制約に対処するために、開発者が限られたシステム・リソース内でソフトウェアの動作を微調整できる、構成可能なフレームワークと低消費電力ライブラリを提供しています。
低消費電力は、特にZigBeeやThreadなどのプロトコルを実行するバッテリー駆動デバイスでは、常に最優先事項でした。しかし最近は、特に欧州連合のサイバー・レジリエンス法 (CRA) に照らして、長期的なソフトウェア・サポートとセキュリティ・コンプライアンスという新しい優先事項が浮上しています。
この変化により、多くのお客様が、統合スタック、コミュニティ・サポート、および長期的なアップデートのための明確な道筋を提供する、Zephyrベースのエコシステムを検討するようになりました。このため、NXPは従来のMCUXpresso環境とZephyrの両方をサポートし、開発者がコンプライアンスと製品ライフサイクルのニーズに最適なエコシステムを選択できるようにしています。
最新のワイヤレス・コネクティビティ・ソフトウェア・リリースであるバージョン25.06では、開発者がより高い柔軟性と制御性を得られるように設計された、いくつかの重要な機能を導入しました。
この新機能により、開発者はビルド時に必要な機能のみを選択して含めることができます。開発者は、1つですべてに対応できるファームウェア・イメージを提供するのではなく、ビルドを調整してRAMの使用量とフラッシュのフットプリントを削減できるようになりました。これは特に、MCUベースのワイヤレス・システムでは重要です。
特に電動スクーターやオートバイなどの二輪車では、スクリーン投影や、スマートフォンからデバイスへのストリーミングに関心が高まっています。i.MX RTクロスオーバーMCUではWi-Fi Directがサポートされ、これらのモバイル・ユース・ケースでより優れたユーザー・エクスペリエンスを提供できるようになりました。
NXPのMCX W MCUは、Bluetooth 6のチャネル・サウンディング認証を取得した最初の製品の1つです。これにより、正確な方向探索と高度な屋内測位機能への扉が開かれます。
おそらく新機能と同じくらい重要なのが、それをどのように提供するかです。NXPでは、NXPの開発エクスペリエンスと自然に調和するワイヤレス・イネーブルメントを提供するために多額の投資を行っています。これには、GitHubの統合、WestとCMakeのサポートに加え、四半期ごとに行われるMCUXpresso SDKおよびボード・サポート・パッケージ (BSP) のリリースへの参加が含まれます。
ワイヤレス・ミドルウェアは現在、NXPの他のテクノロジと同じビルド・ツリー内にあり、同じワークフローに従っています。すでにNXP製品を使用して開発を行っている場合、新しいツールチェーンを学習する必要はありません。ワイヤレス、グラフィックス、機械学習 (ML)、音声、セキュリティなど、すべてが同じアーキテクチャと提供モデルのもとで統合されています。
これにより、開発コストが減少し、サポートとバグ追跡が簡素化され、市場投入までの時間が短縮されます。
ワイヤレス・テクノロジは往々にして複雑ですが、私たちの仕事は、それを開発者にとって親しみやすく、柔軟で、スケーラブルなものにすることです。最小限の消費電力でセンサ・ノードを構築する場合でも、デュアル・ラジオで充実したマルチメディア・エクスペリエンスを実現する場合でも、NXPのワイヤレス・ソフトウェアは、お客様の目的に合わせて設計されています。
NXP Semiconductors、開発システム・アプリケーション・エンジニア
Kyle Dandoは、エンジニアが組込み設計に必要なツールの使用方法を学習できるよう支援することに情熱を注いでいます。NXPでは、イネーブルメント・ソフトウェアの提供方法の改善に注力しています。ワイヤレス部門のスタッフと協力し、NXPワイヤレス・マイクロコントローラを利用した開発を容易に開始できるようにする取り組みを進めています。Kyle Dandoはパデュー大学とサンタクララ大学でコンピュータと電気工学の学位を取得しています。ハードウェアとソフトウェアの設計業務の経験があり、さまざまな組込み設計ツールに関する顧客向けの講習イベントを多数こなしています。
NXP Semiconductors、ワイヤレス・コネクティビティ・ソフトウェア、製品管理ディレクター
Max Palumboは、NXPの主要なソフトウェア・エコシステム(MCUXpresso、Zephyr、Linux、Android)におけるマイクロコントローラ製品およびマイクロプロセッサ製品向けのワイヤレス・コネクティビティ・ソフトウェアを提供する製品管理チームの責任者を務めています。2020年にNXPに入社し、Wi-Fi、Bluetooth(ClassicおよびLow Energy)、ZigBee、Threadを扱う業務に10年ほど携わってきました。過去には、組込みソフトウェア・アーキテクト、フィールド・アプリケーション・エンジニアの職責を担い、Bluetooth SIGのMeshワーキング・グループでは副議長を務めました。ワーテルロー大学でナノテクノロジー工学の学士号を取得しています。
タグ: テクノロジ, ワイヤレス・コネクティビティ