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Conversations at the Edge (CATE) の新シーズンをご視聴いただいている皆様は、私たちがモバイル・ロボティクスについて深く掘り下げていることをご存知でしょう。最初の5回のエピソードでは、実用最小限の製品(Minimum Viable Product:MVP)が罠である理由、Raspberry Piが実稼働に適したツールではない理由、そして分散型インテリジェンスが予測不能な環境内で動作するロボットの安全性、拡張性、適応性を高めるための秘訣であることについて探りました。
ここで、ギアをシフトします。シーズン2のここから3回のエピソードでは、あらゆるロボティクス開発者が取り組んできたトピックである「オープン・ソース」に焦点を当てます。人によってそれは忌まわしいものであったり、賞賛すべきものであったり、その両方であったりしますが、いずれにしてもオープン・ソースは、私たちがモバイル・ロボットをどのように設計、拡張、保護するかに大きな影響を与えます。では、この新しいセグメントで取り上げた内容と、それが開発者にとって何を意味するのかをまとめてみましょう。
まずは多くの人が抱いている危惧についての議論から始めました。オープン・ソースを受け入れたら、競争上の優位性を失うことになるのでしょうか?自分の知的財産 (IP) が野に放たれ、競合他社によって再利用されてしまうのでしょうか?
真実としては、現代のオープン・ソース・プロジェクトは寛容なライセンスを利用しています。これは、何が共有され、何がプライベートに保たれるかを制御できることを意味します。NXPでは、このバランスを日常的に維持しています。NXPのチップには独自のドライバを必要とする専用IPブロックが含まれている一方、NXPはコミュニティのコードにも貢献しており、これは導入の加速やエコシステムの強化につながっています。
開発者にとっては、これは自由を意味します。なぜなら、オープン・ソースを利用することで「車輪の再発明」を避けることができるからです。例えば、一般的なセンサ用のドライバやコネクティビティ・スタックのリソースは、オープン・ソースで容易に入手できます。自社開発のアルゴリズム、独自のハードウェア統合、業界固有のアプリケーションなど、重要性の高い部分で差別化を維持することができます。全体的に見ると、より多くのコラボレーション、より多くのテスト、既存のフレームワークとのより高い互換性によってコードが恩恵を受けるため、迅速化に加えて堅牢性の向上にもつながります。
覆す必要があったもう1つの神話が、オープン・ソースは「安全性が低い」というものです。工場を検査したり、病院を案内したり、原子力発電所に進入したりするモバイル・ロボットを構築する場合、セキュリティは単なるオプションではありません。
事実はこうです。オープン・ソースは実際にはセキュリティの向上に役立ちます。大規模なコミュニティでは、コードがより多くの人の目にさらされるため、閉じた環境の場合と比較して、脆弱性の発見と修正がより頻繁に行われます。これをハードウェアおよびシステム・レベルでセキュリティのベスト・プラクティスと組み合わせることで、より強力な基盤を構築できます。
NXPのロボティクス向けリファレンス・プラットフォームには、メイン・プロセッサとともにセキュア・エレメントが搭載されています。これにより、認証、偽造防止、ユーザー検証のために各ボードに固有の証明書が提供されます。また、開発者はIEC 62443や欧州のサイバー・レジリエンス法などの厳しい基準を満たす必要がありますが、オープン・ソースのソフトウェアがその妨げになることはありません。
最後は、本当に共感できる開発者の現実に目を向けます。私たちの多くはLinuxで経験を積んでいるので、組込み開発に着手する際には、異なるツール、異なる制約、異なる考え方といった不都合な事実に直面することになります。しかし、必ずしもそうではないとしたら?
このエピソードでは、ZephyrやNuttXなどの最新のリアルタイム・オペレーティング・システム (RTOS) が、Linuxネイティブの開発者による組込み開発を容易にするという事実を紹介します。どちらもPOSIX準拠なので、シェルとコマンドの外観や使い勝手は慣れ親しんだものになります。NuttXを実行しているバッテリー・マネジメント・システムにSSHで接続したい場合も、問題ありません。Cognitive Pilotモデルの予測制御ソフトウェアをボード間で移行する必要がある場合も、両方でZephyrを実行していればシームレスに移植できます。
それは単なる安心感だけではありません。このポータビリティとスケーラビリティにより、一度設計したプラットフォームをSKU全体に拡張して開発時間を節約したり、設計をデプロイ後も新しい機能に適応させたりできます。ドライバや機能が随時追加されるオープン・ソース・コミュニティに参加することで、気が付けば組込み開発に異質な感じを覚えることもなくなっているでしょう。
NXPがスケーラブルなAI、モジュール型の設計、インテリジェントな制御システムを通じて、どのようにモバイル・ロボティクスの未来を推進しているかをご覧ください。ホワイトペーパー「固定アームからヒューマノイドへ:モバイル・ロボティクスの旅」をダウンロードしてお読みください。
もしすべてを結び付ける共通の糸が1本あるとすれば、それは「オープン・ソースは不利益ではなく、利益である」という事実です。適切なハードウェアや安全対策と組み合わせれば、互換性、拡張性、さらにはセキュリティの向上にもつながります。
モバイル・ロボティクスに関する議論はこれで終わりではありません。次のセグメントでは特別ゲストをお迎えして、センサ・フュージョンとビジョンの進化について、そしてこの2つのテクノロジがロボットの知覚や環境的相互作用をどのように再定義しているかについて掘り下げます。
ぜひnxp.comやNXPのYouTubeチャンネルでこれまでのエピソードをチェックしながら、次回のConversations at the Edgeまでお待ちください!
タグ: ファクトリ・オートメーション, インダストリアル