NXPのMCUを中心としたソリューションにより、エントリレベルのデジタル・コネクテッド・クラスタ (DCC) がスマートフォンのミラーリングに対応します。ライダーが必要とする各種機能が最新のクラスタに統合されるほか、今後もさらに高度な機能がリアルタイム (RT) ロードマップに加わる予定です。
よりスマートなライディング、よりシンプルな技術
ライダーは、高価で複雑なフル装備のインフォテインメント・システムがなくても、ダッシュボードでいつものスマートフォン・アプリに簡単にアクセスできるようになります。NXPのi.MX RT1170マイクロコントローラ・ユニット (MCU)により、エントリレベルのデジタル・コネクテッド・クラスタは飛躍的なアップグレードを遂げます。スマートフォンからのシームレスなミラーリングにより、二輪車はナビゲーション、音楽、通話などライダーがよく利用する機能を、シンプルで費用対効果の高いパッケージとして、一目で見やすい形で提供できます。i.MX RT1170 MCUは、この変革の原動力となり、よりスマートでコネクテッドなライディング体験を実現します。
セーフティとシンプルさの融合
スマートフォン・ミラーリングのメリットは、すぐに得られる画期的なものです。ステアリング中に携帯電話に触ったり、風雨にさらされる壊れやすいマウントに頼ったりする必要はもうありません。クラスタに組み込まれた耐候性ディスプレイにスマートフォンの画面が直接ミラーリングされるため、ライダーはスマートフォンをポケットや収納コンパートメントに安全にしまっておけます。このハンズフリーのシステムにより、気を散らすことを最小限に抑えながら、利便性を大きく高め、ナビゲーション、音楽、コミュニケーションをライディングの中心に据えることができます。
スマートフォン・ミラーリングはウィンウィン
従来のスマートフォン・プロジェクションでは、専用のビデオ・デコーダのような追加のハードウェアが必要になることが多く、部品表 (BOM) と全体的なシステム・コストが増加します。しかし、NXPのi.MX RT1170をベースとしたエントリレベルのクラスタは、そのような状況を変えます。最も要求の高いスマートフォン・ミラーリング・フローを完全にソフトウェアで処理することで、高価なコンポーネントが不要になり、ライダーのエクスペリエンスを損なうことなく、少ない予算で洗練されたソリューションが得られます。
OEMにとっては、既存のハードウェアを有効に活用できるメリットがあります。ライダーにとっては、待ち望んでいた便利なコネクテッド環境が実現します。将来のRTデバイスは進化し続けていく一方、i.MX RT1170 MCUはすでに、大きなインパクトと低コストとの間で最適なバランスを実現しています。
NXPのi.MX RT1170 MCUが、ライダーのスマートフォンのディスプレイを二輪車のクラスタにミラーリングし、ナビゲーション、音楽、通話などの機能を提供する方法をご覧ください。
i.MX RT1170 MCUのデュアルコア・アーキテクチャ
i.MX RT1170は、マイクロプロセッシング・ユニット (MPU) のようなパフォーマンスとグラフィックスを、MCUのリアルタイム動作、コスト、使いやすさと組み合わせたクロスオーバーMCUです。デュアルArm® Cortex®コア(最大800 MHzのM7、最大400 MHzのM4)、最大2 MBのオンチップ・スタティック・ランダム・アクセス・メモリ (SRAM)、ベクトル・グラフィックス・アクセラレーションと豊富なコネクティビティを備えた2Dグラフィックス・プロセッシング・ユニット (GPU) を搭載しています。MCUXpressoソフトウェア・エコシステムによってサポートされ、グラフィックス重視のコネクテッド・クラスタの実用的な基盤となります。
ミラーリングのパフォーマンスを確保するために、ソフトウェア・アーキテクチャでは両方のコアを注意深く使用します。ワークロードはM7とM4に分割され、CPUや帯域幅を大量に消費するタスクは基本的なクラスタ・タスクから分離します。コンパクトなリアルタイムのソフトウェア環境 (FreeRTOS) ですべてが実行されるため、統合がシンプルに保たれ、エントリレベルの設計に適した手頃な価格のソリューションを実現できます。
i.MX RT1170 MCUによるスマートフォン・ミラーリングの仕組み
スマートフォン・ミラーリングの設計では、いくつかの要素を組み合わせてシームレスな体験を実現します。ここでは、コンポーネントの詳細な内訳と連携の仕組みについて説明します。
- 接続設定:スマートフォンはWi-Fi®ステーションおよびDHCP (Dynamic Host Configuration Protocol) クライアントとしてi.MX RT1170 MCUに接続し、i.MX RT1170はAW611モジュールを使用してWi-Fiアクセス・ポイントおよびDHCPサーバとして機能します
- 画面キャプチャと送信:スマートフォンのアプリが画面をキャプチャし、MJPEGとしてエンコードしたものを、TCP/IP (Transmission Control Protocol/Internet Protocol) を介してi.MX RT1170 MCUに送信します。
- i.MX RT1170 MCUは、MJPEGストリームをYUVにデコードし、Pixel Pipelineを介して赤、緑、青 (RGB) に変換した後、MIPI-DSI (Mobile Industry Processor Interface - Display Serial Interface) 経由でLCDタッチスクリーンにレンダリングします
- LCDのタッチ・イベントはi.MX RT1170 MCUによってキャプチャされ、リモート制御のためにTCP/IP経由でスマートフォンに送信されます
- フレーム・レート制御:i.MX RT1170 MCUがスマートフォンにFPSフィードバックを提供し、スマートフォンはこの入力に基づいて送信レートを動的に調整します
NXPのi.MX RT1170 MCUに基づくスマートフォン・ミラーリングの図。
組込みコネクティビティで使い慣れた機能を提供
DCCは、使い慣れたスマートフォン機能をクラスタ・ディスプレイに取り込むことで、ライディング体験を変革します。ライダーのスマートフォン、ディスプレイ、ヘッドセット間のシームレスなコネクティビティにより、ネットワークへの接続を簡単に維持できます。ライダーは通話に応答したり、メッセージ・アラートを表示したり、連絡先を選択したり、音楽再生を制御したり、後部座席の人と曲を共有したりできますが、その間ずっと運転に集中し続けることができます。便利なエンターテインメントだけでなく、コネクテッド・プラットフォームは「バイクを探す」などの実用的な機能も提供し、よりスマートで直感的なライディングを可能にします。
今後の展開
i.MX RT1170 MCUは、二輪車の変革に加えて、コスト最適化された自動車用デジタル・クラスタにおいてもその価値をすでに実証しており、車両ラインアップ全体でスケーラブルなパスを示しています。電動スクーター、電動自転車、モペット用のコネクテッド・クラスタの開発に取り組んでいるOEMにとって、このプラットフォームは、ユーザー・エクスペリエンス、手頃な価格、市場投入までの時間短縮を組み合わせた魅力的なものです。
現在のi.MX RT1170 MCUプログラムは、ソフトウェアのアップグレード、OTA(無線)アップデート、ユーザー・インターフェース (UI) の強化、地域固有の機能パックなどを通じて進化を続けています。それにより、スマートフォン・ミラーリングを今すぐ開始し、さまざまなモデルにわたって拡張していきながら、ゼロから始めることなく同じソフトウェア・ツールとエコシステム・パートナーを活用して成長し続けることができます。二輪車のモビリティについてさらに詳しく知りたい方は、NXPの二輪車向けデジタル・コネクテッド・クラスタ・ソリューションをご覧ください。