NXPの広範なMCXポートフォリオに、これまでで最も堅牢でかつ安全性を重視した製品としてMCX Eシリーズが新たに加わりました。このリリースにより、NXPは業界で最も広範な5 V対応MCUの提供を実現しており、開発者に対し、3 Vから5 Vまでの設計で一貫した開発経験をもたらすとともに、過酷なエッジ条件に幅広く対応するレジリエントなシステムの構築を可能にしています。
エッジの堅牢性が高まるということは、マイクロコントローラのレジリエンスを強化する必要があることを意味します。NXPが拡張性の高いMCXポートフォリオをMCX Eシリーズによってさらに拡充した理由はそこにあります。MCX Eシリーズは、電気的および温度的に最も過酷な環境において信頼性の高い制御を実現するように設計された、Arm® Cortex®-M4Fベースの新しいMCUラインナップです。このシリーズの第1弾のファミリとなるMCX E24は、インダストリアル・オートメーション、セーフ・アプライアンス、エネルギー管理で必要とされる性能、安全性、および堅牢性を提供します。NXPは、拡張されたMCX Eシリーズにより、幅広い範囲の過酷なエッジ・アプリケーションに向けて、長期的な信頼性と拡張性を実現しています。
MCX Eでエッジの課題を解決
エッジ・コンピューティングの普及が進むにつれて、設計者はより多様かつ過酷な環境へとその活用の幅を広げようとしています。しかし、それには以下のようなさまざまな課題が伴います。
- 電磁干渉 (EMI) により、制御システムの動作の信頼性が損なわれる可能性がある
- 極限温度にさらされたり、24時間365日稼働させる必要があるコンポーネントは、故障することなく過酷な条件に耐えられる必要がある
- コネクテッド・デバイスが増加してアタック・サーフェスが広がるほど、エッジでのセキュリティの脅威が高まる
- リソースに制約のあるエッジ・デバイスに安全性、セキュリティ、性能を統合しようとするほど、開発がより複雑になる
NXPは、MCUのリーディング・サプライヤとして、エッジ・コンピューティングを進化させる必要性を理解しています。MCX Eシリーズは、これらの課題に真っ向から取り組むことを目的に設計されました。5 Vでの堅牢な動作、産業グレードの温度定格、組込みの安全性診断、およびセキュア・プロビジョニングを融合させたMCX Eシリーズにより、開発者は性能やスケーラビリティを損なうことなく、レジリエントでセキュアなシステムを構築できるようになります。
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重要となる性能と精度を確保
MCX Eシリーズの基盤となるMCX E24ファミリは、優れたノイズ耐性、高精度なミックスド・シグナルの統合、機能安全への対応、最新の組込みセキュリティのすべてを、拡張性の高い5 V対応MCUプラットフォーム内に兼ね備えています。スマートなHVACシステムを開発する場合であっても、産業用ロボットを開発する場合であっても、MCX E24は信頼できるエッジ制御ノードとして機能するように設計されているため、過酷な環境において信頼性に優れた性能を発揮します。
MCX E24は、浮動小数点およびDSPの拡張機能を備えた112 MHz Arm Cortex-M4プロセッサを内蔵するとともに、最大2 MBのフラッシュと256 KBのECC保護付きSRAMに加え、EEPROMエミュレーションによってサポートされています。堅牢なメモリ・アーキテクチャは、PWM生成およびモータ制御向けの8つのFlexTimerモジュール、サンプリング・レート1 Mspsのデュアル12ビットADC、DAC内蔵のアナログ・コンパレータなど、リアルタイム・パフォーマンス機能によってサポートされています。
MCX E24シリーズのブロック図 ブロック図をダウンロードすると、拡大図がご覧いただけます。
これらのコンポーネントは、デターミニスティックな応答が求められるクローズドループ・アプリケーション向けの密結合された制御システムを形成します。NXPのリアルタイム制御組込みソフトウェア・ライブラリ(Real-Time Control Embedded Software Library:RTCESL)と組み合わせることで、開発者はフィールド指向制御 (FOC) などの高度な制御技術を、最小限のCPU負荷(FRDM-MCXE247開発プラットフォームを使用した社内ベンチマークに従い、10 kHzの更新レートで21%未満)で実装できます。
産業グレードの堅牢性と安全性
MCX E24ファミリは、過酷な電気的環境に対応するためにゼロから設計されました。5 Vのセンサやアクチュエータとの直接インターフェースに対応する2.7 V~5.5 Vの範囲での完全な動作をサポートし、産業用設備におけるノイズ耐性を向上させます。デバイスは、定格温度-40°C~125°Cで、24時間365日の稼働に対応するとともに、10年間の製品供給の対象となっています。
多くのアプリケーションで、誤用、故障、損傷に関連する事故を回避するために安全性が要求されます。例えば、可動部を備えたデバイスでは、電気システムは保護されるか、予測可能な形で故障するように設計されなければなりません。MCX E24は、安全性が重視されるこのようなアプリケーションのために、SIL 2までのIEC 61508システム向けに設計された包括的な機能安全アーキテクチャを備えています。また、ハードウェア診断には、プログラム・フロー・モニタリング、クロックおよび電力の監視機能、ECC付きフラッシュ/SRAM/レジスタ、ウォッチドッグ・タイマ、CRCエンジン、フォルト・ログ機能などが含まれます。これらの機能は、家電向けのIEC 60730クラスB事前認証済みのライブラリおよびIEC 61508対応のソフトウェア・フレームワークを備えた、NXPのSafeAssureドキュメント・スイートによってさらに補完されています。
コネクテッド・エッジ用の組込みセキュリティ
エッジのセキュリティ要件が厳格化されており、MCX E24はNXP EdgeLock Assuranceのサポートを組み込むことでこれに対応しています。各デバイスには、セキュア・ブートローダ、デバッグ認証、および製造時にプロビジョニングされる一意かつ不変のデバイスIDが含まれています。また、MCX E24は、事前書き込み済みのフラッシュ・プログラマもサポートしています。これにより、デバッグ・インターフェースやセキュアな環境を必要とせずに、製造時にシリアル・インターフェース経由でファームウェアをセキュアにフラッシュすることが可能です。
一方では、統合EdgeLockアクセラレータ (CSEc) が対称暗号化をオフロードし、AES-CBC、ECB、CMACモードをサポートして、セキュアな鍵保管とデータ完全性を実現します。これらの機能により、設計者は、初回の起動から製品寿命に至るまで、MCX Eデバイスの信頼性について心配する必要がありません。
開発者を成功に導く設計
MCX Eシリーズは、広範なMCXマイクロコントローラ・ポートフォリオの一部として、統一されたMCUXpresso開発者エクスペリエンスのメリットを享受しています。このエコシステムには以下のものが含まれます。
- Visual Studio Code、MCUXpresso IDE、IAR、KeilのIDEサポート
- ペリフェラル・ドライバ、ミドルウェア、およびRTOS統合(FreeRTOS、Zephyr)を備えたSDK
- セキュア・プロビジョニング・ツール(MCUXpresso SECおよびSPSDK)
- 高度なサンプルやデモを備えたアプリケーション・コード・ハブ
ワークフローがGUIベースであっても、CI/CD統合であっても、ツールチェーンはお客様の開発スタイルに適応します。
FRDM-MCXE247プラットフォームを用いた迅速なプロトタイプ作成
アプリケーションの開発を加速するために、NXPはFRDM-MCXE247開発ボードもリリースしています。FRDM-MCXE247は、コンパクトで低コストのハードウェア・プラットフォームであり、以下の機能を搭載しています。
- USB Type-C電源およびデバッグ・インターフェース
- 10/100 Mbit/sイーサネットPHY
- 3個のCAN FDトランシーバ
- オンボード・センサおよび8 MB外部フラッシュ
- Arduino®、Pmod™、mikroBUS™アドオン・ボードのサポート
FRDM-MCXE247開発ボード。
開発者は、開封してすぐに、アプリケーション・コード・ハブやGitHubのソフトウェア、さらにはNXPウェブサイトのアプリケーション・ノートを活用して、モータ制御、インダストリアル・ネットワーク、セキュア・ブートのユース・ケースを掘り下げることができます。また、直ちにMCX Eシリーズの精度を確認するために、リアルタイム制御組込みソフトウェア・ライブラリ (RTCESL) に事前統合されている既製のセンサレスPMSMデモを実装することができます。これは、簡単にリアルタイム制御アプリケーションに組み込み、NXPのモータ制御リファレンス・デザインで使用できる一群のアルゴリズムです。
エッジのスケーラビリティを満たす産業グレードの制御
MCX Eシリーズは、MCX MCUポートフォリオに産業向けの堅牢性、組込みセーフティ、およびセキュアなコネクティビティをもたらします。MCX Eシリーズは、一般的な性能から超低消費電力、ワイヤレス・コネクティビティまで、すべてに対して最適化された他のシリーズを補完するものであり、ソフトウェアの再利用性や開発の効率を犠牲にすることなく、組込み設計者がエッジ・アーキテクチャ全体の各ノードに適したコントローラを選択できるようにします。
そして、NXPが歩みを止めることはありません。今年後半にリリース予定のMCX E31にご注目ください。NXPは今後も製品を拡充するとともに、可能性の限界を押し上げることに注力し、エンジニアがイノベーションの未来をけん引できるよう業界で最も先進的かつ包括的なMCUソリューションを提供していきます。
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