i.MX 937システム・オン・チップ (SoC) は、高性能エッジAIと、コストおよび消費電力を最適化した設計を、信頼性の高いスケーラブルなプラットフォームで両立させます。
エッジ設計者は、低消費電力のエントリレベルのチップと高価なハイエンド・プロセッサの二択を迫られることがよくあります。中間の選択肢が欠けているため、設計をスケールアップ/スケールダウンすることが困難でコストがかかる可能性があります。設計の変更や製品ラインナップの拡大に伴い、エンジニアはそれに対応できる柔軟性と拡張性を備えたマイクロプロセッサ (MPU) のラインナップを必要としています。
NXPは、車載、インダストリアル、IoTエッジの展開を拡張するために特別に設計されたスマートでコスト効率の高いソリューションである新しいi.MX 937アプリケーション・プロセッサでこうしたギャップを解消します。クアッドコアArm® Cortex® A55コンプレックス、専用のNXP eIQ® Neutronニューラル・プロセッサ (NPU)、およびi.MX 95/i.MX 952ファミリとのドロップイン互換性を備えたi.MX 937は、野心的なコンセプトを応答性、安全性、コスト効率、および電力効率の高い製品へと変換することを可能にします。
i.MX 937アプリケーション・プロセッサを選ぶ理由
今日の設計者にとってよくある制約として、硬直化したハードウェア・アーキテクチャが幅広いアプリケーションへの適応性を欠いていることが挙げられます。プロジェクトでパフォーマンスの向上や新しいAI機能が必要な場合、現状では通常、リスクが高く、費用のかかるプリント基板 (PCB) の完全な再設計が必要です。多くのアップグレード・パスには、製品ラインナップを効率的に拡大するために必要なピン間およびソフトウェア間の互換性が欠けています。その結果、製品ラインナップが拡大するにつれて、複数のソフトウェアの流れと、共通点のないハードウェア・レイアウトを管理するという複雑なタスクに直面します。
i.MX 937アプリケーション・プロセッサのブロック図。 ブロック図をダウンロードすると、拡大図がご覧いただけます。
i.MX 937プロセッサは、ボトルネックの軽減に役立ちます。i.MX 95およびi.MX 952ファミリとのドロップイン互換性を備えたi.MX 937プロセッサなら、1つのシステムを設計するだけで、パフォーマンスをシームレスにスケールアップまたはスケールダウンすることができます。これにより、ゼロから始めるというオーバーヘッドを増やすことなく、特定の市場ニーズに応えることができる前例のない柔軟性がもたらされ、確実に製品ポートフォリオを常に次に備えた状態にすることができます。
ハイパフォーマンスのマルチメディアとエッジAI
i.MX 937 MPUは、最新のヒューマン・マシン・インターフェース (HMI) およびエッジAIアプリケーション向けのLinux®対応プラットフォームとして設計されています。そのために、アプリケーション処理用の1.4 GHzクアッドコアArm Cortex-A55コンプレックス、リアルタイム・ワークロード専用の667 MHz Arm Cortex-M7、およびシステム管理タスク用の低消費電力Arm Cortex-M33コアを搭載しています。このコンピューティング・コンプレックスは、最大4500 MT/s x16またはx32のLPDDR (Low-Power Double Data Rate) 5または3733 MT/s(メガトランスファー毎秒)のLPDDR4xとインライン誤り訂正符号 (ECC) およびメモリ暗号化機能によって支えられています。
マルチメディア・サブシステムも同じく充実しており、Arm® Mali™G310 3Dグラフィックス・プロセッシング・ユニット (GPU) およびH.264エンコーディングとH.264/H.265デコーディング用の1080pビデオ・プロセッシング・ユニット (VPU) を備えています。高度なビジョンをサポートするために、このチップには、2 eTOPS*の機械学習 (ML) アクセラレーションを実現するNXP eIQ Neutron NPUが搭載されています。一方、モバイル・インダストリ・プロセッサ・インターフェース=カメラ・シリアル・インターフェース (MIPI-CSI) は赤/緑/青+赤外線 (RGB-IR) をサポートしているため、設計者は最小限の外部コンポーネントでカメラ・システムを実装できます。
(*注:eTOPs (equivalent TOPs) は、複数のベンチマークにわたる、i.MX 8M Plusアプリケーション・プロセッサを基準にしたデバイスの平均性能に基づく性能指標です。)
主な仕様の概要
- クアッドコアArm Cortex-A55 @最大1.4 GHz
- Arm Cortex-M7リアルタイム・コア @667 MHz
- Arm Cortex-M33低消費電力システム管理コア
- NXP eIQ Neutron NPU (2 eTOPS)
- Arm Mali G310 3D GPU
- 1080p60 H.265/H.264デコード、H.264エンコードVPU
- 4500 MT/s x16またはx32 LPDDR5または3733 MT/s LPDDR4x、インラインECCおよびメモリ暗号化機能搭載
- EdgeLock®セキュア・エンクレーブ
- i.MX 952およびi.MX 95ファミリと互換性のあるFCBGA (Flip-Chip Ball Grid Array) パッケージ・オプション
最大限の拡張性、最小限の労力
エンジニアリング・チームがよく直面する主な障害は、エントリレベルのモデルと高性能モデルの間でスケールアップ/スケールダウンする際の開発リソースの断片化です。これまで、製品を拡張するには、ソフトウェアを新しいボード・サポート・パッケージ (BSP) に移植し、まったく異なるツールチェーンを管理する必要がありました。i.MX 937プロセッサを採用すると、フラグシップのi.MX 95およびi.MX 952ファミリと同じBSP、セキュリティ・アーキテクチャ、およびブート構造を共有する統合開発エコシステムにアクセスできます。単一のソフトウェア投資を利用して、幅広いパフォーマンス階層に製品を展開できます。
ハードウェアについても拡張性がもたらされます。コスト最適化された15 x 15 mm FCBGAパッケージは、i.MX 952ファミリとピン互換で、一般的な車載およびインダストリアル向けのPCB設計基準を満たしながら、費用対効果の高い6層から8層のスルーホールPCBをサポートするように設計されています。より大きな19 x 19 mmパッケージは、i.MX 952およびi.MX 95ファミリの両方に対応しています。
実世界への影響
i.MX 937は、コンピューティング性能とマルチメディア性能を提供し、車載、インダストリアル、IoTの各分野にインテリジェンスをもたらします。
車載
3D対応のパワフルなGPUを搭載したi.MX 937プロセッサは、スタンドアロンのヘッド・ユニット、セカンダリ・ディスプレイ、二輪車向けコネクテッド・クラスタなどのアプリケーションに最適です。
産業オートメーションおよびロボティクス
生産現場には、厳しい安全基準を維持しながら、リアルタイムで見て対応できるロボットが必要です。i.MX 937は、ヒューマノイドやモバイル・ロボットがオブジェクト認識や経路計画を行うために必要な3DグラフィックスとNPUアクセラレーションを提供します。デュアル・ギガビット・イーサネットとTSN (Time-Sensitive Networking) をサポートしているため、インダストリアルHMIと制御システムがネットワークを介してシームレスに確実に同期されます。
スマートホームとビル制御
スマートホームのエコシステムでは、i.MX 937プロセッサは、高セキュリティなゲートウェイや高度なHMIパネルを実現します。設計者は、ディスプレイとカメラというインターフェースを使用して、フェイス・トラッキングや音声アシスタントにローカルAIを利用する高解像度のビデオ・ドアホンやセキュリティ・パネルを構築できます。一方、統合されたEdgeLockセキュア・エンクレーブは、機密性の高いユーザー・データをハードウェア・レベルで保護します。
ヘルスケアと患者モニタリング
医療機器のHMIには、患者の安全を確保するために、超高信頼性のディスプレイとリアルタイム制御が必要です。i.MX 937プロセッサを採用すると、設計者はバイタルを追跡し、エッジAIを活用してスタッフに異常を警告する高解像度の監視デバイスを作成できます。セキュア・ブートと暗号化アクセラレーションを備えているため、患者のデータ・プライバシーに関する厳しい規制要件を満たすことができます。
i.MX 937プロセッサの利点
要約すると、i.MX 937 SoCは以下を提供します
- Linuxベース・システム向けのコスト効率に優れたリアルタイムおよびアプリケーション・コンピューティング
- i.MX 95およびi.MX 952ファミリとのドロップイン互換性
- 効率的なエッジAIとビジョン・プロセッシング専用の2 eTOPS NPU
- 高性能3D GPUと1080p VPUによる没入型HMI体験
- EdgeLockセキュア・エンクレーブによる高度なハードウェア・セキュリティ
i.MX 937は、真に市場をリードする製品をよりスマートに構築し、より迅速に拡張し、提供することを可能にします。
次の設計を作る準備はできていますか?詳細については、i.MX 937の製品ページをご覧ください。