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超広帯域無線 (UWB) は、電気自動車 (EV) の充電に関して自動車OEMに大きなメリットをもたらすと予想されています。そしてそれは、ほんの始まりにすぎません。ここでは、この汎用性の高いテクノロジを統合することで、現在、そして将来にわたって革新的な機能がどのように実現するのかについてご紹介します。
UWBは自動車業界を一変させる可能性を秘めたテクノロジであることは、最も普及しているユース・ケースの1つであるスマート・カー・アクセスによって実証されています。しかしUWBは、単にスマートフォンのデジタル・キーを使って車のロックを解除するだけの技術ではありません。安全性の高い正確なリアルタイム位置測定機能を短距離レーダーと組み合わせるという最新の次世代技術によって、OEMは1つのUWBベース・システムを多目的のプラットフォームに変えて、同じハードウェアで複数のユース・ケースに対応できるようになります。
UWBの次世代技術が実用化されたことで、OEMはスマート・カー・アクセス・システムを活用して、子供置き去り防止 (CPD)、シートベルト・リマインダ、手を使わずにトランクを開けられるキック検知などの機能を提供できます。これにより開発工程が合理化され、ソフトウェア更新で機能を追加できるようになるため、総所有コストの削減、市場投入までの時間短縮につながります。
近い将来、UWBは電気自動車の充電に利用できるようになります。すでに別の機能にUWBを利用している場合は、同じインフラストラクチャを使用して、最も一般的な4種類のEV充電をもっと快適に行えるようにすることができます。
NXP Trimension™は、最も広範なUWBポートフォリオの1つです。お客様に合わせたソリューションを、こちらでご紹介しています。
手動EV充電の場合、UWBテクノロジによって車に対する充電インフラの相対位置を特定し、運転者を手動充電器に誘導することができます。その後、運転者が充電器を車に接続します。このユースケースでは、充電器が運転者を認証してパーソナライズされた情報を提供することも可能です。たとえば、運転者の名前を呼びかけて挨拶したり、車の充電状態を通知したりできます。UWBを使用して、充電口の蓋を自動的に解錠・施錠したり、開閉したりすることもできます。
車両と充電器にUWBトランシーバを内蔵することで、車両に対する充電器の正確な位置を特定できます。これにより、ロボット充電器の作動領域の上に車両を正確に駐車することができます。車両が正しい位置に駐車されると、すぐに自動充電が開始されます。
このタイプの充電方法は、車体下からの自動EV充電に似ています。主な違いは、手動充電で一般的に使用される充電器を再利用して、ロボット・アームで自動EV充電を実施できることです。ロボット・アームでUWBテクノロジを利用して車両側面にある充電器接続位置を正確に特定し、充電を行います。
ワイヤレスEV充電では、UWBを利用して、車体下の磁性コイルと充電パッド内の充電コイルを位置合わせします。車の位置が決まると、共振電磁誘導を利用して電気エネルギーを伝達します。このプロセスはインダクティブ充電と呼ばれます。充電コイルの間に隙間が生じるため、車両と充電パッドの位置を正確に合わせることがさらに重要になります。UWBテクノロジを使用すると、これを確実に行うことができます。
子供置き去り防止やキック検知のユースケースで紹介したように、UWBはレーダー・モードでも使用できるため、充電プロセス中にUWBを利用して生体検知を行うことも可能です。そのユースケースでは、危険を及ぼす可能性がある対象が接近したときに、システムをオフにします。これはワイヤレス充電システムには必須の機能です。
UWBテクノロジによって、EV充電に必要な正確かつ安全なリアルタイムの位置測定が可能になります。EV充電のための位置測定機能を実装する方法は他にもありますが、UWBでは非常に高いレベルの安全性、パフォーマンス、測定精度、コスト効率が得られます。さらに、スマート・カー・アクセスに利用されているUWBは自動車業界ですでに実績を上げているテクノロジであり、すぐに利用できる標準も用意されています。
NXPではUWBテクノロジをTrimensionポートフォリオを通じて提供しており、自動車、モバイル、IoTデバイスの各分野で安全な精密測距を可能にするUWBソリューションを豊富に取り揃えています。Trimension製品の精密測距・測位機能によって、安全なアクセス制御、屋内測位、デバイス間通信、アイテム・トラッキングなど、幅広いユース・ケースで正確な位置情報と利便性が得られます。
Trimension NCJ29D6は初の自動車市場向けモノリシックUWBチップであり、セキュアな位置測定機能と短距離レーダーを統合型MCUと組み合わせています。OEMはこのチップを利用して、1つのUWBシステムで複数のユースケースに対応することができます。主要な自動車OEMが採用したことから、2025年モデルの自動車にこのシングル・チップを使用したデバイスが搭載される見込みです。
最も普及しているUWBユースケースの1つがスマート・カー・アクセスがであることは明らかですが、このテクノロジからはもっと多くの価値を引き出すことができます。自動車OEMはUWBを、現在および将来の幅広い機能を実現するために使用できる必須のテクノロジであると考える必要があります。EV充電はまさにそのような機能の1つであり、スマート・カー・アクセス、子供置き去り防止、キック検知に続くものです。
UWBの詳細と、UWBを使用してEV充電ユースケースを改良する方法については、 nxp.com/uwbにアクセスするか、NXPの営業担当者までお問い合わせください 。
Marc Manningerは、半導体業界で9年の経験を持つ製品およびマーケティング・マネージャです。サンパウロとGraz University of Technologyで学び、ソフトウェア工学と経営学の修士号を取得しています。専門職としてのキャリアでは、スマート・カー・アクセス向けのさまざまなソフトウェア・プロジェクトと製品に取り組んできました。現在は製品およびマーケティング・マネージャとして、車載用UWB、NFC、セキュア・エレメントを担当しています。
Bernhard Grosswindhagerは車載UWBを担当する製品およびマーケティング・マネージャであり、製品とマーケティング戦略に貢献しています。Graz University of Technologyで電気工学の博士号を取得し、UWBを利用した位置測定と通信に関する研究を行っています。学問的なキャリアとは別に、医療工学と自動車の分野でも幅広い職務を経験してきました。