近年、糖尿病や慢性閉塞性肺疾患などの慢性疾患の増加に対応するスペシャリティ医薬品などのバイオ医薬品が増加しています。同時に、在宅でのセルフケアにもこれまで以上に焦点が当てられており、特に注射剤や吸入薬の投与などにおいて、患者が治療を自己管理するようになっています。これらの自己投与薬の多くは、患者と医薬品間、および医療機関と患者の間に有用なリンクを確立する、コネクテッド薬物送達デバイスを利用して提供されます。
短距離ワイヤレス・テクノロジである近距離無線通信 (NFC) テクノロジを機械的デバイスに追加することで、患者にとってセキュアで使いやすいエクスペリエンスを実現できます。たとえば、デバイスが純粋に機械的なものである場合は、パッシブまたはコネクテッドNFCタグを使用すれば、リーダー(スマートフォンなど)によって生成されたNFCフィールドからエネルギーをハーベスティングできるので、他の電子部品やバッテリーを必要とせずにデバイスへのコネクティビティを追加できます。一方で、デバイスに電子機器と電源がすでに装備されている場合は、NFCリーダー・フロントエンドまたはNFCコントローラを設計に追加できます。
スマートフォン・ベースのサポート
ユース・ケースに応じて、患者がモバイル・アプリをインストールする必要がある場合もあれば、既存のインターネット接続を使用してスマートフォンからデバイスに接続し、デジタル・ガイダンスが提供されるウェブサイトを起動できる場合もあります。1回タップするだけで、患者は製品認証の確認、手順に沿ったアプリケーション・ガイドの受信、自動化されたタイム・スタンプに基づくデジタル形式での日々の記録の保存などを行うことができます。モバイル・アプリは、簡単なデータ処理タスクを実行して患者にリアルタイムの情報を表示したり、より複雑な処理や分析のためにデータをクラウドに送信したりできます。
スマートフォン・ベースの患者サポート
スマートデバイス/消耗品の統合
NFCを使用して、再使用可能な薬物送達デバイスと、カートリッジや充填済みシリンジなどの使い捨て薬剤容器との間の通信を自動化できます。この場合、デバイスは、容器内または容器表面上のパッシブNFCタグと直接通信するNFCリーダーを備えています。NFC通信を使用して、消耗品が本物であることや医薬品が有効期限内であることを確かめたり、医薬品の種類やバッチ番号を確認したり、デバイス設定の調整が必要なパラメータを読み取ったりすることができます。また、NFCリーダーは投与イベントを記録できるため、これにより消耗品の再使用を防ぐことができます。さらに、薬物送達デバイスによるセンサ・ベースのフィードバックを通じて、医薬品が正しく取り扱いおよび投与されていることをリアルタイムで確認することも可能です。
コネクティビティと患者アドヒアランス
世界保健機関 (WHO) などの研究によると、慢性疾患患者の50%は、投与を忘れたり、投与量を間違ったり、治療を完全に中止したりして、治療を遵守していません。これは多くの場合、薬物の副作用、投与頻度、過剰投与/過少投与、または薬物送達デバイスの操作性に原因があります。コネクテッド・デバイスを使用することで、患者はより適切に自己管理できるとともに、投与に関する即時フィードバックを受け取ることができます。自動機能を使用して、注入量、日付と時刻などの重要な情報を無理なく把握できます。また、通知機能は、リマインダとして次回の投与期限を患者に知らせたり、投与を忘れた場合にアラートを送ったりするのに役立ちます。さらに、収集したデータは、より複雑なデータ処理のためにクラウド・サービスにアップロードしたり、患者の担当医に情報を提供するために既存のヘルスケア・システムと共有することもできます。
セキュリティと患者の安心
残念なことに、偽造品、偽装、適用外使用、流用製品が世界中で急速に広まっており、WHOは偽造品について「この10年間で最も緊急の医療課題の1つ」と述べています。
製薬会社は、自社の薬物送達コンビネーション・システムのセキュリティに不安を感じている患者を安心させるため、および間違った製品や偽の製品の使用を防ぐために、認証と承認のプロセスを追加することができます。
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認証は、デバイスまたはその薬が真正であることを検証し、アプリケーションまたはそのデータへのセキュアなアクセスを確保します。識別はオンライン許可リストを使用してシリアル番号を検証しますが、NFCベースの認証は、セキュアな暗号化機能を使用して、アイテムのNFCタグ・データと資格情報に基づく強化されたチェックを実行します。承認は、さらに各タグの属性を確認して、ユーザーがデータや薬物送達システムに正しくアクセスできるようにします。
NXPのスマート・テクノロジ・ソリューション
NXPは、優れたリーダーおよびタグICソリューションを提供し、強化された機能、相互運用性、性能からメリットを得られる高度な統合システムの設計を支援します。
NFCで対応可能なデバイスと消耗品のシステム
NXPのNFC認証タグには、標準に基づくAES-128暗号化が備わっています。よく使用されるタグは、NTAG 424 DNA、NTAG 22x DNA(ISO 14443/Type 2またはType 4タグ)、ICODE DNA(ISO 15693/Type 5タグ)で、これらはさまざまな動作距離とフォーム・ファクタ寸法に対応しています。一部のタグは、大量複製を防ぐために、NFC対応電話での読み取りのたびに行われるウェブベースのダイナミックNFCメッセージ認証をサポートしています。一部のタグは相互認証メカニズムをサポートしており、認証されたリーダーのみが機密タグ・データにアクセスできるようにし、不正アクセスから保護します。一部のタグには、開封表示、充填レベル、機械的機能の完了などをバッテリーなしでも検知できる高度なステータス検出機能が備わっています。
NXPのNTAG 5 (ISO 15693/T5T) コネクテッドNFCタグは、外部のセンサやマイクロコントローラに接続するための電気システム・インターフェースを備えたシステムで使用するための多用途デバイスです。医療機器では、NXPのコネクテッド・タグは、薬が適切な温度範囲内にあることを確認するのに役立ち、吸入装置の圧力を制御することもできます。また、アクセス権を備えた高度なメモリ・データ保護もサポートしています。
これらのNFCタグはすべて、NXPの最新のシングルチップNFCマイクロコントローラPN7642でサポートされています。このマイコンは最高の集積度と小型フットプリントを備えているため、小型の薬物送達デバイスにもNFCのリーダー機能、処理、暗号化セキュリティを追加できます。
ヘルスケアにおけるコネクティビティの未来
コネクティビティは、慢性疾患を持つ患者をはじめとする患者のヘルスケアの質を最大限に引き上げるうえで、今後も重要な役割を果たしていきます。NXPは、高品質かつ信頼性の高い製品と広範なパートナー・ネットワークを活用し、コネクテッド薬物送達デバイスの分野における主要なテクノロジ・プロバイダーであり続けています。