NXPのFRDMプラットフォーム・ソリューションは、開発ツールへのアクセスを容易にし、プロトタイプと量産段階のギャップを埋めます。FRDMボードは、プロフェッショナルグレードの機能を備えながらも、コスト効率に優れた、使いやすいフォーマットになっており、コンセプトから市場投入までのプロセスを加速します。FRDM i.MX 93、FRDM i.MX 91、FRDM i.MX 91S開発プラットフォームの中から選ぶのは容易ではありませんが、各プラットフォームがアプリケーションの要件にどのように適合するかを理解すれば、決断は簡単になります。
FRDM i.MX 91S開発プラットフォームは、FRDM i.MX 9シリーズ開発プラットフォームのエントリ・モデルです。
FRDM i.MX 9シリーズの概要
FRDM i.MX 9シリーズは、Arm® Cortex®-A55プロセッサ・コアを中心とするスケーラブルなアーキテクチャをベースとしています。このアーキテクチャはファミリ全体の能力を決定づけるLinux®対応の処理能力を備えており、オプションのCortex-M33リアルタイム・コアとニューラル・プロセッシング・ユニット (NPU) アクセラレーションの有無がファミリの各メンバの違いとなっています。i.MX 91とi.MX 93アプリケーション・プロセッサのピン互換性により、プリント基板 (PCB) の再設計を必要とせずに、これらのプラットフォーム間で直接移行できます。
性能と価格の適切なバランスで次の設計プロジェクトを加速します。
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ワイヤレス・コネクティビティも開発プラットフォームによって異なります。FRDM i.MX 9シリーズは、NXPのWi-Fi 6トライラジオ・ソリューションを搭載したu-bloxモジュールがはんだ付けされているため、ワイヤレス・コネクティビティの柔軟かつスケーラブルなプロトタイプ作成が可能です。FRDM i.MX 91ボードはIoT向けに最適化されたIW610ファミリをベースにしたMAYA-W4モジュールを搭載し、FRDM i.MX 93ボードはより高度なワイヤレス機能を実現するためにIW612ファミリをベースにしたMAYA-W2モジュールを搭載しています。
価格帯と性能レベル
エントリレベルのFRDM i.MX 91Sは、基本的なLinuxアプリケーション向けに手頃な価格で提供されています。多くのマイクロコントローラ開発ボードと競合する価格帯で、Linuxのフル機能を提供します。次の価格帯のFRDM i.MX91は、機能が強化され、メモリが拡張されており、バランスの取れた性能を提供します。このプラットフォームは、エントリレベルのプラットフォーム (FRDM i.MX 91S) よりも高い処理能力や大きなメモリを必要とするものの、プレミアム価格に見合った高度な機能は必要としないプロジェクトに適しています。最後に、プレミアム・レベルのFRDM i.MX 9シリーズ・プラットフォーム (FRDM i.MX 93) は、AIアクセラレーション、高度なマルチメディア・サポート、ヘテロジニアス・プロセッシングなどの機能を備え、最も要求の厳しい、または複雑なアプリケーションにも対応できる最も高い性能を提供します。
FRDM i.MX 91開発ボードは、FRDM i.MX 9シリーズの中で価格と性能のバランスを実現しています。
適切なプラットフォームの選び方
この3つのプラットフォームというアプローチを理解するには、開発ボードが3つあるにもかかわらず、搭載されているプロセッサは2種類であることを認識することが重要です。i.MX 91アプリケーション・プロセッサはFRDM i.MX 91SとFRDM i.MX 91開発プラットフォームの両方に搭載され、より高度なi.MX 93プロセッサはFRDM i.MX 93開発プラットフォームに搭載されています。i.MX 91プロセッサは、効率と費用対効果の面で最適化された単一のArm Cortex-A55コアをベースに構築されており、マルチコア処理の複雑さを伴わずにLinux機能を必要とするアプリケーションに最適です。
FRDM i.MX 93開発ボードは、FRDM i.MX 9シリーズで最上位の選択肢です。
i.MX 91ベースの2つのプラットフォームの主な違いは、処理能力ではなく、メモリ構成と機能実装です。一方、i.MX 93プロセッサは2つのCortex-A55コアに加え、Cortex-M33とNPUを搭載し、Linuxアプリケーション、リアルタイム・タスク、AIワークロードを同時に処理するヘテロジニアスな環境を実現します。
開発対象を理解することで、開発目標に適したプラットフォームを選定できます。たとえば、複数のセンサから温度、湿度、空気の質に関するデータを収集し、ローカルで処理して、定期的にクラウド・サービスにレポートを送信する、基本的な環境モニタリング・システムを構築しているとします。FRDM i.MX 91Sは、データ収集と送信のためのLinuxスタックとセンサ・インターフェースを備えているため、このようなゲートウェイ機能に最適です。アプリケーションに本当に必要な処理能力と機能を選択することで、不要なコストを回避できます。
一方、産業用オートメーション・コントローラなど、より複雑なシステムを構築する場合は、FRDM i.MX 91がより適した選択肢となる可能性があります。機械のインターフェースの管理、リアルタイム・センサ・データの処理、そしてイーサネット経由による工場ネットワークとの通信が可能です。
FRDM i.MX 93は、高解像度のビデオをキャプチャし、AIモデルを使用してリアルタイムでオブジェクトを検出して動きを追跡するインテリジェントなセキュリティ・カメラ・システムなど、高度な機能を必要とするアプリケーションに最適です。
次の場合は、FRDM i.MX 91Sを選択します。
- 予算が厳しい
- アプリケーションに必要なメモリが512 MB未満
- 基本的なゲートウェイ機能やシンプルなインターフェースを開発する
- Linuxネットワークが大きなメリットを提供しているマイクロコントローラ・プラットフォームから移行する
次の場合は、FRDM i.MX 91を選択します。
- アプリケーションに性能と機能のバランスが必要
- ネットワーク機能が要件の中心
- オーディオの評価と開発がプロジェクトの重要な要素
- 基本的な要件を超えているものの、AIアクセラレーションは必要ないプロジェクト
次の場合は、FRDM i.MX 93を選択します。
- アプリケーションにAIと機械学習の要件がある
- アプリケーションに高度なマルチメディア機能が必要
- アプリケーションにリアルタイム処理が必要
ソフトウェア・サポートおよび開発ツール
FRDM i.MX 91Sは、512 MBのメモリ制約内で動作するように設計された最小限のLinuxディストリビューションを実行します。部品番号の「S」は、最小限のリソース要件でLinux機能を維持するFRDM i.MX 91の簡易版であることを示しています。この軽量BSPには、基本的なドライバとライブラリのみが含まれており、制約のある環境に最適化された、合理化されたソフトウェア基盤を提供します。開発者やエンジニアにとって、これはシステムの立ち上げが加速し、デバッグが容易になり、特定のアプリケーション・ニーズに合わせてソフトウェア・スタックを柔軟にカスタマイズできることを意味します。依存関係が削減され、複雑さが軽減されるため、開発を加速すると同時に、効率的で信頼性の高い性能が確保されます。
一方、FRDM i.MX 91とFRDM i.MX 93は、包括的な機能セットを備えた完全なLinuxディストリビューションを実行できます。i.MX 93は、機械学習モデルの開発と展開を支援する専用のAI開発機能を含む、包括的なツールセットを提供します。i.MX 91は、複雑なユーザー・インターフェースを必要とするアプリケーションのために、グラフィカル・ユーザー・インターフェース (GUI) 設計ツールと広範なサポートを提供します。
アップデートとサポートはどのプラットフォームでも一貫しており、各ボードは統一されたスケジュールに従って定期的にLinuxアップデートを受け取ります(Debianについては年に2回、Yoctoについては年に1回)。
成長と将来の要件に備えた計画
戦略的なプラットフォーム選択は、直近のプロトタイプの先を見据え、プロジェクトの将来的な発展に備える必要があります。1つのアプローチとしては、初期のプロトタイプ作成と概念実証にはFRDM i.MX 91Sを使用し、その後、処理能力、メモリ、または高度な機能の追加が必要になった時点でFRDM i.MX 91またはFRDM i.MX 93に移行することが挙げられます。
プラットフォーム間のアーキテクチャ上の関係性により、この成長戦略は非常に効果的です。たとえば、i.MX 91とi.MX 93は同じピン・レイアウトを採用しているため、PCB設計を一方のプラットフォームからもう一方のプラットフォームに直接移行できます。
3つのプラットフォームすべてにわたるエコシステムの互換性も同様に重要です。FRDM i.MX 9シリーズのボードはすべて同じ40ピン・コネクタ・インターフェースを採用しているため、カメラ・モジュールやディスプレイなどのアクセサリをファミリ全体で使用できるため、拡張ボードへの投資が費用対効果の高いものとなります。
FRDMによる革新
FRDM i.MX 9ボードは、Linuxベースの組込み開発に最適なソリューションです。戦略的に位置付けられた3つのプラットフォームは、それぞれ異なる性能、機能、コスト要件に合わせてカスタマイズされています。プラットフォーム間の価格の違いにより、変化するニーズに合わせて最適なオプションを柔軟に選択できます。
拡張された(そして進化する)FRDMエコシステムの詳細については、nxp.comをご覧ください。