MCX Eシリーズは、業界で最も幅広い5 Vマイクロコントローラ・ユニット (MCU) のポートフォリオで、産業および家電製品の設計にスケーラブルな性能、組込みの機能安全、長寿命の信頼性をもたらします。
最新のインダストリアル・システムや家電システムに対する期待はこれまで以上に高まっています。モーターは何年も問題なく動作し、電力変換システムは過酷な動作条件に耐えられる必要がある一方で、すべてのデバイスをサイバー脅威や物理的な故障から保護する必要があります。この性能と安全性のバランスを実現することは容易でないことは明らかです。
新しいMCX E31ファミリのマイクロコントローラは、この状況を一変させます。この5 V MCUのポートフォリオは、組込みのハードウェア安全対策、高度なセキュリティ、および高い信頼性を組み合わせることで、性能と信頼性を損なうことなく認証取得までの時間を短縮するのに役立ちます。
MCX E31を選ぶべき理由
チームは安全性が重視されるシステムやインダストリアル・システムを構築する際に、繰り返し発生する多くの問題に直面します。認証取得には数か月にわたるエンジニアリング作業が必要であり、極端な動作範囲でシステムの信頼性を証明することは困難です。そのため、多くの設計では、性能と機能安全の両方を実現するために依然として複数のMCUが必要です。
MCX E31シリーズのブロック図。 ブロック図をダウンロードすると、拡大図がご覧いただけます。
MCX E31ファミリは、ハードウェア・レベルのソリューションを提供します。SIL 3への体系的な道筋である、TÜV SÜDによるSIL 2のハードウェア整合性認証を申請中*であるだけでなく、EdgeLockセキュア・エンクレーブを搭載することで、安全性とセキュリティのコンプライアンス遵守の負担を軽減します。さらに、最大135℃の産業用グレードへの準拠と10年間の寿命プロファイルにより、安定した動作を実現し、ダウンタイムや現場での予期せぬ故障を最小限に抑えます。
主な特長:
- FPU/DSP搭載160 MHz Arm® Cortex®-M7コア
- 最大4 MBのフラッシュおよび512 KBのSRAM(ECC保護付き)
- PSAレベル2認証を取得したEdgeLockセキュア・エンクレーブ
- 電力変換およびモータ制御 (PCMC) サブシステムを統合
- 最大6つのCAN FDおよびTSN対応10/100 Mbpsイーサネット
- 高密度QFPオプションにより、同じフットプリントでI/Oが2倍になり、コネクティビティが拡張
- -40 °C~135 °Cの拡張産業用範囲、10年間のミッション・プロファイル
- MCUXpresso SDKおよびアプリケーション・コード・ハブによるFRDM-MCXE31B開発ボードのサポート
MCX E31が解決するもの
最新の組込みシステムは、高性能だけでなく、実証済みの安全性、長期にわたる信頼性、そして合理化された設計を実現するという、ますます高まるプレッシャーに直面しています。MCX E31ファミリは、これらの課題に正面から取り組み、ハードウェアレベルのイノベーションにより、認証取得の簡素化、システムの耐障害性の強化、そして複数のMCUの必要性の低減を実現します。MCX E31ポートフォリオが産業機器や家電製品の開発における最も根深い課題をどのように解決するのかを以下にご紹介します。
安全認証対応済み
MCX E31は、認証済みライブラリのみに頼るのではなく、シリコン自体に安全性が統合されています。プログラム・フロー監視、冗長ウォッチドッグ、エラー・レポート機能により、ハードウェアレベルで安全性のベースラインを構築することで、認証取得を加速し、システムのIEC 61508準拠の実証コストを削減します。
長期使用に耐えられる堅牢性と信頼性
信頼性の一側面として温度耐性が挙げられますが、それだけではありません。エンジニアは、データ破損や予期せぬ障害から保護するメカニズムも必要としています。そのため、MCX E31は、フラッシュ・メモリとスタティック・ランダム・アクセス・メモリ (SRAM) の誤り訂正符号 (ECC)、クロックおよび電源監視、そしてプログラム可能なシステム応答による障害収集機能を搭載しています。負荷に関係なく、データ整合性と予測可能なシステム動作により、機器は計画外のダウンタイムなしで安全に動作できます。
より多くの機能、より少ないMCU
MCX E31は160 MHz Arm Cortex-M7コアを搭載することで、MCX E24のArm Cortex-M4Fコアと比較して、高度な演算処理能力が要求されるアプリケーションのパフォーマンスを大幅に向上させます。さらに、専用のモータ制御および電力変換サブシステム、イーサネット・タイムセンシティブ・ネットワーク (TSN)、最大6つのコントローラ・エリア・ネットワーク・フレキシブル・データ・レート (CAN FD) インターフェースを直接統合しています。高性能コンピューティング、ミックスド・シグナル制御、堅牢なネットワーク機能を組み合わせることで、MCX E31は、従来は複数のデバイスを必要としていた統合型システム・アーキテクチャを実現できます。
MCX E31が適している分野:現実世界への影響
MCX E31ファミリは単なるMCUではありません。安全性、スマート性、コネクテッド性に優れた次世代インダストリアル・システムを支えるエンジンです。MCX E31は、次のような分野で開発者が限界を押し広げるのに役立ちます。
産業オートメーションおよびロボティクス:
MCX E31の160 MHz Cortex-M7コアと統合モータ制御サブシステムは、高速コンベア・ダイバータから精密ロボティクスやドローンまで、複雑な動き、リアルタイムの安全性、高度なネットワーキングをすべて1チップで実現します。6つのCAN FDバスとイーサネットTSNをサポートしているため、最大限の信頼性と最小限のダウンタイムで工場の現場を管理することができます。
スマート・エネルギーおよび電力変換:
家庭用または産業用のエネルギー蓄積システムや分散型バッテリー・システムを開発する場合でも、MCX E31の内蔵の電力変換アクセラレータと堅牢な安全機能が、過酷な条件下で設計がうまく機能し、稼働時間を延ばし、安全認証取得を迅速化するのに役立ちます。
セーフ・アプライアンスおよび工具:
耐久性に優れた設計のHVAC、ヒート・ポンプ、ボイラー、電動工具を想像してみてください。MCX E31は、拡張温度範囲とSIL 2のハードウェア整合性により、過酷な環境でも長期にわたり信頼性の高いセキュアな運用を実現します。
医療、交通、その他:
MCX E31は、医療用ポンプや人工呼吸器から公共交通機関の制御装置まで、国際的に認められた安全規格(IEC60601、EN50128、IEC61511)を満たすように設計されています。そのため、単にデバイスを製造するだけでなく、信頼性、安全性、そして安心感を構築することになります。
組込みの差別化
競合するMCUの多くは、汎用シリコンに認証済みのソフトウェア・ライブラリを組み合わせることで機能安全を実現するアプローチを採っています。しかし、このアプローチは、システムの複雑さが増し、設計チームによる認証取得の負担が増大するため、完璧ではありません。
しかし、MCX E31は違います。安全性がハードウェアの設計自体に組み込まれており、TÜVによるSIL 2の整合性認証を取得し、SIL 3の体系的能力を備えています。これにより、エンジニアはコンプライアンスのためのより強固な基盤を手に入れ、外部のセーフティ・メカニズムの必要性を減らすことができます。
安全性が重視されるアプリケーションをさらにサポートするために、MCX E31には包括的なセーフティ・イネーブルメント・スイートが付属しています。これには次のものが含まれます。
- ECC機能を補完し、リアルタイムのメモリ診断を可能にするメモリ・テスト・ライブラリ。
- プロセッサの継続的な整合性を保証するCPU内蔵セルフテスト (BIST) 機能。
- 統合と認証の取り組みを効率化する安全性に関するドキュメントと分析レポート。
他のソリューションは、あまり普及していないプロセッサ・アーキテクチャに依存しており、エコシステムによるサポートと長期的な拡張性が制限されています。一方、MCX E31は広くサポートされているArm Cortex-M7をベースにしているため、導入障壁がありません。そのため、MCX E31は統合が容易で、ツールチェーンによるサポートが手厚く、将来の設計への適応性も優れています。
開発者向けイネーブルメント
MCX E31ファミリは、エンジニアが概念から実装までをより迅速に進められるよう、FRDM-MCXE31B開発ボードでサポートされています。このソリューションは、モジュール式の使いやすいプラットフォームで、デバイスのペリフェラルやサブシステムに即座にアクセスできます。以下の特長を備えています。
- 最大160 MHzで動作するArm Cortex-M7コア
- TSN対応のオンボード10/100 Mbpsイーサネットと、最大3つのCAN FD物理層 (PHY) およびコネクタ
- シールドやペリフェラル・ボードを取り付けるためのArduino、MikroBUS、PMODコネクタ
- 内蔵の加速度センサ、磁気スイッチおよび8 MBの外部SPIフラッシュ
- 3.3 Vまたは5 V動作を選択可能なUSB Type-C電源、およびシリアル・ワイヤ・デバッグ/マイクロコントローラ・ユニット・リンク (SWD/MCU-Link)
このソリューションは、MCUXpressoソフトウェアおよびツールと組み合わせることで、最適化されたドライバ、ミドルウェア、および認定申請中のライブラリ*を提供し、実装を簡素化して、開発サイクルを短縮します。さらに、開発を迅速に進めたい場合は、アプリケーション・コード・ハブ (ACH) から、MCX E31向けにカスタマイズされた安全性やコネクティビティに関するユース・ケースを含む、140以上のすぐに使えるサンプルやチュートリアルにアクセスできます。
FRDM-MCXE31B開発ボード。
セーフティ対応イネーブルメント
MCX E31は、従来のイネーブルメント・ツールに加え、以下を通じてセーフティ・アプリケーションの開発を加速します。
- カスタム・セーフティ・アプリケーションの開発を迅速に開始するための必須のライブラリとドキュメントをまとめたベース・イネーブルメント・パッケージ。
- FuSa開発パッケージ(業界で唯一)。シリコンが動作するための基本的な安全機能を実装するTÜV認定申請中のセーフティ・ソフトウェア・フレームワーク (SAF)* が含まれています。NXPがライセンス供与するこのパッケージは、開発時間、コスト、そしてエンジニアリング作業を大幅に削減するのに役立ちます。
- NXPのSafe Assureプログラムへの統合。これにより、開発者がより広範なセーフティ・コミュニティおよびNXPのダイレクト・サポートとつながり、ポートフォリオをまたいだ機能安全の取り組みが強化されます。
MCX E31の利点
要約すると、MCX E31ファミリには次のような独自の機能が組み合わされています。
- TÜV認証申請中のSIL 2のハードウェア整合性*とSIL 3の体系的能力を備え、安全性開発パッケージでサポートされる内蔵の機能安全
- 最大135 °Cの認定と105 °Cでの10年間のミッション・プロファイルによる高い信頼性
- 160 MHz Arm Cortex-M7コアおよび統合モータ制御サブシステムによる高性能コンピューティング
- 最大6つのCAN FDインターフェースとTSN対応10/100 Mbpsイーサネットを含む豊富なコネクティビティ
- PSAレベル2認証を取得したEdgeLockセキュア・エンクレーブによるセキュアな運用
MCX E31ファミリは、産業オートメーション、エネルギー・システム、先進的な家電製品のいずれを設計する場合でも、認証取得の迅速化、システム設計の簡素化、長期的な性能の最大化を支援します。
MCX E31の詳細や、自信を持って開発するためのツールについては、以下のリソースをご確認ください。
*2026年1月に認証取得予定。