自動車業界は一夜にしてここまでたどり着いたわけではありません。新しい機能を積み重ねていくことで一歩ずつ進化し、数十年にわたる漸進的なイノベーションが反映されたアーキテクチャを形成してきました。
何年もの間、進歩とは、それぞれが独自のハードウェア、ソフトウェア、および統合モデルを持つECUに、一度に1つずつ能力を追加することを意味していました。ただし、このアプローチは、システムが比較的独立している場合に機能するものでした。
しかし、時間が経つにつれて、それは断片化という全く異なる意味を持つものを生み出しました。システムは、統合や更新がより難しくなり、拡張することも極めて困難になりました。最近のAutomotive Newsへの寄稿 で概説されているように、このような断片化されたアーキテクチャは、ソフトウェア・デファインド・ビークルを拡張するうえでの核心的な障壁の1つとなっています。
現在では、インテリジェンスは車両の深部にまで統合されつつあり、それは一般的な特性にとどまらず、車両の動き、挙動、動作を定義するリアルタイム機能にまで及んでいます。これが車両コア(車両の中核)と呼ばれるものであり、この移行の中心に位置しています。
車両コア:一体となって動作すべきもの
車両コア:「車」を車たるものにするセーフティクリティカルな機能。
車両コアは、パワートレイン、車両ダイナミクス、ネットワーク、エネルギー・マネジメントといったセーフティクリティカルな機能がセットになったものであり、これらが相まって、車両が成すこと、すなわち何が「車」を車たるものにするのかを定義します。
これらの機能は車両全体にわたって動作します。しかし、それらが1つの連携の取れたシステムとして協調動作しなければならない度合いがこれまでとは変わってきています。それはつまり、機能ごとの統合ではもはや不十分であり、システム全体が同期され、予測可能で、デターミニスティックでなければならないことを意味します。
基盤となるアーキテクチャの変化が必要である理由
ソフトウェアは、もはや個々のハードウェア要素と密接に結び付いたものではありません。基盤の進化に伴い、より高い能力を備えた少数のコンピューティング・プラットフォームに機能を統合することが必要となっています。このような変化に際しては、機能が独立して動作するのではなくシームレスに連携動作できるようにシステムを構成することも求められます。
聞き覚えがあるようであれば、それには理由があります。
データ・センター業界も似たような進化を経ており、最初は数多くの同様な課題に直面しました。初期のデータ・センターでは、アプリケーションは専用のハードウェアで実行されており、サイロ化され、稼働率が低く、拡張が困難な状態でした。要求が高まるにつれて、複雑さとコストを伴うこのモデルは最終的に崩壊に至っています。
新たな一歩となったのが仮想化です。ワークロードは単独のマシンに縛られることがなくなり、共用インフラ全体で実行できるようになりました。これにより稼働率は向上したものの、断片化は続きました。データ量が増加し、システムの分散化が進むにつれて、ツールの細分化、一貫性のない環境、運用リスクの上昇などが引き起こされ、複雑さがさらに増しました。
仮想化によって実現したこの移行は、インフラを統合されたスケーラブルなシステムとして扱うことに向けた最初の一歩となりました。しかし、それだけではまだ不十分でした。問題を解決するには、以下のような、より広範なアーキテクチャの再構築が必要でした。
- 共有プラットフォームへのコンピューティングの統合
- ソフトウェア環境の標準化
- システム全体を接続するネットワーク化されたバックボーン
- 一度限りの統合に代わるオーケストレーション
結果として、全体が1つにまとまった、確実かつ効率的に拡張できるシステムが生まれました。
自動車は現在、同じような転換期を迎えていますが、同期と予測可能性を最初から組み込む必要があるというさらなる要件が加わります。インテリジェンスが車両の奥深くまで浸透し、システムの複雑さが増すにつれて、統合の労力、コスト、一貫性の欠如により、断片化されたアーキテクチャは崩壊し始めています。
そのような複雑さに対処するには、システムを最初から全体が連携して機能するように設計する必要があります。
| コンピューティングの統合 |
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| OSの整合性 |
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| ネットワーク |
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| 目的への適合 |
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| スケーラブルかつモジュール型 |
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| セキュリティ |
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| リモート管理 |
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車輪の付いたデータ・センターとしての自動車。
現代の自動車は、車輪の付いたデータ・センターと呼ぶにふさわしいものとなっています。一方で、データ・センターとは異なり、車両のシステムは物理的なものであり、安全性が極めて重要で、時間的制約も伴うため、システムの厳密な連携動作に対する基準が上がります。
それこそが、以下のような新しい種類の車両アーキテクチャへの移行をけん引しています。
- 集中型とゾーン型のコンピューティングの連携動作
- 一貫してシステムを接続する車両全体のデータ・ネットワーク
- プラットフォーム全体の電力を管理するエネルギー・ネットワーク
次世代の車両は、一体となって機能するように設計されたアーキテクチャから始まります。
アーキテクチャから機能するシステムへ
システムを正しく設計できたとしても、実行が制御されなければ一貫性のない挙動につながります。そのため、ミドルウェアが不可欠になってきます。デターミニスティックなミドルウェア・レイヤにより、システム全体にわたって実行とタイミングを調整し、予測可能な挙動を確保します。それがあることで、車は単なる部品の集合体ではなく、システムとして動作します。
システムレベルの基盤への移行
業界は、プログラムごとにゼロからすべてを構築するというやり方から脱却しようとしています。
その代わりに、システムレベルの事前統合済みの基盤が登場しています。これは、コンピューティング、ネットワーク、エネルギー管理、ミドルウェアが一貫性のあるベースラインとして連携して機能するアーキテクチャです。
これは柔軟性を制限するものではなく、むしろ以下のことを通じて摩擦を取り除くことを目的としています。
- 統合の繰り返し作業の削減
- より予測可能な実行
- 開発から実装に至るまでの過程の迅速化
基礎となるシステムが一貫して動作するようになれば、その延長線上にあるすべての動作が高速化されます。
NXP CoreRideプラットフォームの活躍の場
CoreRideプラットフォームは、事前統合されたシステム基盤であり、車両アーキテクチャの主要な要素を統合するのに役立つため、自動車メーカーはプログラムごとにそれらを再構築する必要がなくなります。
未来のSDVへの道を切り拓く、NXP CoreRideプラットフォーム。
このプラットフォームは、コンピューティング、ネットワーク、電力およびエネルギー管理、システムの挙動といったすべての要素にわたって一貫したベースラインを提供するため、統合にかかる労力を軽減し、より予測可能な実行を大規模に実現します。それに加えて、MotionWise などのミドルウェア・ソリューションがオーケストレーション・レイヤを提供します。
MotionWiseは、同期されたタイミングとデターミニスティックな挙動によって、分散化された機能が互いに通信しながら確実に実行されるようにします。これは、セーフティクリティカルなシステムを連携させるのに不可欠な要件です。CoreRideプラットフォームとともに使用することで、車両が1つの連携したシステムとして機能するための基盤が確立されます。
CoreRideプラットフォームとMotionWiseは、車両全体にわたる連携のための基盤を提供します。
差別化のための基盤:インテリジェント・プラットフォーム
データ・センターがワークロードの実行と拡張のためのプラットフォームへと進化を遂げたのとまさしく同じように、車両はインテリジェンスの実行と拡張のためのプラットフォームへと進化しています。
自動車業界における次の差別化の波は、車両コア自体をインテリジェントにすること、すなわち単に機能を周辺に追加するだけでなく、車両の中核となる動作にAIを組み込むことです。
たとえば、インテリジェント・シャーシ・システムは、路面の状態(穴など)をリアルタイムで検出し、ミリ秒以内にサスペンションを調整できるため、快適性、安全性、およびパフォーマンスが劇的に向上します。
そして、これはまだ始まりにすぎません。車両コアがインテリジェントかつコネクテッドになるにつれて、まったく新しいユース・ケースが登場するでしょう。その多くが、現在はまだ完全に定義もされていません。実際のところ、これによって差別化要因が変わってきます。
プラットフォーム・アーキテクチャにおける差別化の変化
従来のアーキテクチャでは、個々の機能やECUが差別化要因となっていました。プラットフォーム・アーキテクチャでは、システムが全体としてどれだけ効果的に動作するか、またどのようにインテリジェンスがシステム全体に実装されるかが差別化へとつながります。
AIは、データ、実行、システムの挙動における一貫性に依存します。断片化されたアーキテクチャでは、それを提供するのが困難です。一貫性のあるデターミニスティックな車両コアがそれを可能にします。これにより、独立した各機能を超える域までインテリジェンスが浸透し、車両全体としての動作のあり方をリアルタイムで、さらには他の車両との連携も見据えながら形作ることが可能になります。
車両コアが車両全体で一貫して動作すれば、自動車メーカーはインテリジェントなプラットフォーム、すなわち継続的に性能を向上させ、挙動を適応させ、随時新しい機能を追加できるシステムを構築することができます。これにより、AIは独立した機能からプラットフォームの基礎となる能力へとシフトし、そのプラットフォームは重要な差別化要因になります。
アーキテクチャからその結果へ
お客様が求めているのは、単にソフトウエアで定義される車両ではありません。年を追うごとに性能、安全性、効率性、パーソナライズが向上する車両を期待しています。そのような期待に応えるには、機能の追加以上のことが必要です。それは、継続的で信頼性の高い変更をサポートする基盤、すなわちインテリジェンスと差別化を拡張できるシステム基盤に依存します。
適切な基盤が整っていれば、インテリジェンスは、単に積み重ねられるものではなくその中核的プラットフォームに組み込まれた、車両の動作の一部となります。これこそが、ソフトウェア・デファインド・ビークルをAIデファインド・ビークルへと変革させるものです。