FRDM-IMX91Sのスタート・ガイド

最終更新日時: Sep 14, 2025サポート FRDM-IMX91S

このドキュメントの内容

  • 1

    パッケージの内容
  • 2

    ソフトウェアの入手
  • 3

    ビルドと実行
  • 4

    開発者エクスペリエンス

1. パッケージの内容

次のセクションでは、FRDM-IMX91Sをブートする手順について説明します。

開発キットの内容:

  • NXPのWi-Fi 6トライラジオIW610Gに基づくオンボードu-blox MAYA-W476モジュールを搭載したFRDM-IMX91Sボード
  • ケーブル:アセンブリ、USB 2.0、Type-Cオス - Type-Aオス
  • TFカード:32G TFカードにLinux® BSPイメージをプログラム済み
  • クイック・スタート・ガイド

パッケージ内容の説明ビデオを見て、FRDM-IMX91Sでのアプリケーションの開発を始めましょう。詳細については、i.MX 91アプリケーション・プロセッサのドキュメントをご覧ください。

1.1 ボードの概要

Figure 1. FRDM-IMX91S top

Figure 1. FRDM-IMX91S top

Figure 2. FRDM-IMX91S bottom

Figure 2. FRDM-IMX91S bottom

1.2 ブート・オプション

FRDM-IMX91Sでは、ビルド済みのNXP Linuxバイナリ・デモ・イメージがTFカードに書き込まれています。内部のバイナリを変更することなく、TFカードCからのブートにより、Linux上で他のアプリケーションをビルドするための特定の機能を備えたデフォルトのシステムが提供されます。

FRDM-IMX91Sボードは、直接ブート(NANDブート)をサポートする256 MBのNANDフラッシュ・メモリを内蔵しています。これに格納されるファイル・システムは大幅に軽量化されており、信頼性を高めてリソース消費を最小限に抑えられるよう最適化されています。フットプリントが小さいため、効率的な動作を確保しながら使用可能なストレージを最大化できます。このファイル・システムは最適な出発点として機能します。モジュール型の設計により完全なカスタマイズが可能であり、特定のアプリケーションのニーズに合わせてさらに調整し、パフォーマンスを最適化できます。

1.3 USBデバッグ・ケーブルの接続

付属のUSB Type-Cケーブルをデバッグ用UARTポートJ11に接続し、ケーブルのもう一方の端をホスト・コンピュータに接続します。

2つのUART接続がホスト・コンピュータに表示されます。最初のポートがA55コアのシステム・デバッグ用です。

ターミナル・アプリケーションに慣れていない場合は、ステップ1.4に進む前に、次のいずれかのチュートリアルを参照してください。MinicomチュートリアルTera TermチュートリアルPuTTYチュートリアル

Linuxでデバッグする場合は、CH342F Linuxドライバがインストールされていることを確認してください。

1.4 ブート・スイッチの設定

SW1 [4-1]はブート設定用スイッチです。デフォルトでは、ブート・デバイスはUSDHC2 4ビットSD3.0です。

ブート・モード SW1-4 SW1-3 SW1-2 SW1-1
シリアル・ダウンローダ 0 0 0 1
USDHC2 4ビットSD3.0 0 0 1 1
FlexSPIシリアルNAND 0 1 0 1

1.5 ボードの起動

電源ケーブルをベースボードの電源コネクタ (J1) に接続すると、ボードに自動で電源が入ります。

ボードが起動すると、シリアル・ポートからPCへのログ情報の出力が開始されます。これで準備が完了しました。

2. ソフトウェアの入手

i.MX Linuxボード・サポート・パッケージ (BSP) は、特定のi.MX開発プラットフォームで組込みLinuxイメージをブートするために使用されるバイナリ・ファイル、ソース・コード、およびサポート・ファイルの集まりです。

Linuxバイナリ・デモ・ファイルの現在のリリースは、Linuxダウンロード・ページにあります。その他のドキュメントは、i.MXソフトウェアおよび開発ツールのLinuxセクションにあるi.MX Linuxドキュメント・バンドルで入手できます。

2.1 概要

FRDM-IMX91Sは、NANDおよびSDカードからのブートをサポートしています。

このスタート・ガイドでは、Linux BSPイメージをSDカードに書き込むいくつかの方法の概要を説明します。経験豊富なLinux開発者は、必要に応じて他のオプションを検討することができます。

2.2 NXP Linux BSPのビルド済みイメージのダウンロード

FRDM i.MX 91S開発ボードには、FRDM-IMX91S用の最新のビルド済みイメージが用意されています。

ビルド済みのNXP Linuxバイナリ・デモ・イメージは、プロセッサの使用および評価のための標準的なシステムと基本的な機能のセットを提供します。システムを変更する必要なしに、ユーザーはハードウェアのインターフェースを評価し、SoC機能をテストし、ユーザー空間のアプリケーションを実行できます。

2.3 Universal Update Utility (UUU) を使用したNXP Linux BSPイメージの書き込み

「パッケージの内容」セクションで紹介した接続ケーブルに加えて、適切なUSBケーブルを用意し、USB1 (J5) とホスト・マシンを接続します。

ボードの電源を切ります。「1.4 ブート・スイッチの設定」セクションを参照し、シリアル・ダウンロード・プロトコル (SDP) モードでブートするようにボードを設定します。

ホスト・マシンで使用されているOSによっては、Linux BSPイメージをSDカードに転送する方法は異なります。詳細な手順については、以下のオプションを選択してください。

3. ビルドと実行

このセクションでは、FRDM-IMX91S用Yocto BSPイメージをビルドする方法に加えて、Matterのサポートを追加する方法、およびDebianのリリース・イメージをビルドする方法の概要を説明します。

3.1 FRDM-IMX91S用Yocto BSP

FRDM-IMX91S BSPリリースは、Yocto Project 5.0 (Scarthgap) を使用したi.MX SW 2024 Q3リリースがベースとなっています。ソース・コードからFRDM-IMX91Sイメージをビルドするには、まずi.MX Yoctoプロジェクトのユーザー・ガイドをお読みになり、YoctoプロジェクトとYoctoのビルドについて理解してください。その後、以下の手順に従ってFRDM-IMX91S用のイメージをビルドしてください。

  1. i.MX SW 2024 Q3 BSPリリースのダウンロード:
  2. $ repo init -u https://github.com/nxp-imx/imx-manifest -b imx-linux-scarthgap -m imx-6.6.36-2.1.0.xml 
    $ repo sync
  3. Yoctoコード・ベースへのFRDM-IMX91Sレイヤの統合:
  4. $ cd ${MY_YOCTO}/sources
    $ git clone https://github.com/nxp-imx-support/meta-imx-frdm.git
  5. Yocto Projectの設定:
  6. $ cd ${MY_YOCTO}
    $ MACHINE=imx91frdmimx91s DISTRO=fsl-imx-xwayland source sources/meta-imx-frdm/tools/imx-frdm-setup.sh -b frdm-imx91s
  7. イメージのビルド:
  8. $ bitbake imx-image-full
  9. SDカードのイメージの書き込み:
  10. $ zstdcat imx-image-full-imx91frdmimx91s.rootfs.wic.zst | sudo dd of=/dev/sdx bs=1M && sync

    または、uuuを使用してSDカードにイメージを書き込む場合:

    
    $ uuu -b sd_all imx-image-full-imx91frdmimx91s.rootfs.wic.zst
  11. ブート・スイッチSW1[4:1] を「0011」に切り替えてSDカードのブートを選択したら、SDカードを挿入してFRDM-IMX91Sボードの電源を入れます

3.2 FRDM-IMX91SでのMatterのサポート

FRDM-IMX91SはMatterをサポートしています。Matterのサポートを追加するには、以下の手順に従ってYoctoのビルドにMatterのレイヤを含めてください。

  1. i.MX SW 2024 Q3 BSPリリースのダウンロード:
  2. $ repo init -u https://github.com/nxp-imx/imx-manifest -b imx-linux-scarthgap -m imx-6.6.36-2.1.0.xml
    $ repo sync
  3. i.MX Matter Yoctoレイヤのダウンロード:
  4. $ cd ${MY_YOCTO}/sources/meta-nxp-connectivity
    $ git remote update
    $ git checkout imx_matter_2024_q3
  5. Yoctoコード・ベースへのFRDM-IMX91Sレイヤの統合:
  6. $ cd ${MY_YOCTO}/sources
    $ git clone https://github.com/nxp-imx-support/meta-imx-frdm.git
  7. Yocto Projectの設定:
  8. $ cd ${MY_YOCTO}
    $ MACHINE=imx91frdmimx91s-iwxxx-matter DISTRO=fsl-imx-xwayland source sources/meta-imx-frdm/tools/imx-frdm-matter-setup.sh bld-xwayland-frdmimx91s
  9. イメージのビルド:
  10. $ bitbake imx-image-multimedia

3.3 FRDM-IMX91SでのDebian

FRDM-IMX91SはDebian 12 OSをサポートしています。i.MX Debian Linux SDKディストリビューションでは、NXPが提供するカーネルおよびブート・ローダとDebianディストリビューションのユーザー空間イメージが組み合わされており、これには以下のものが含まれています。

  • Debianに基づくrootfs:
    1. Debianベース(基本パッケージ)
    2. Debianサーバ(GUIデスクトップを含まない、より多くのパッケージ)
    3. Debianデスクトップ(GNOME GUIデスクトップを含む)
  • Linuxカーネル
  • BSPコンポーネント
  • 各種アプリケーション(グラフィックス、マルチメディア、ネットワーク、コネクティビティ、セキュリティ、AI/ML)

NXPのDebian Linux SDKディストリビューションの詳細については、NXPのi.MXおよびLayerscape用Debian Linux SDKディストリビューションのページを参照してください。

Debianでのクイック・スタート

DebianでFRDM-IMX91S用にSDカードを作成するには、以下の手順に従ってください。

  1. Linuxホストにflexインストーラをダウンロードします。
  2. $ wget http://www.nxp.com/lgfiles/sdk/lsdk2412/flex-installer
    $ chmod +x flex-installer
    $ sudo mv flex-installer /usr/bin
  3. LinuxホストにSDカードを差し込み、以下のとおりにイメージをインストールします。
  4. # format SD card
    $ flex-installer -i pf -d /dev/sdb
    # automatically download and install images into SD card
    $ flex-installer -i auto -d /dev/mmcblk1 -m imx91frdmimx91s
  5. FRDM-IMX91SボードにSDカードを差し込み、以下のとおりに追加パッケージをインストールします。
    1. イーサネット・ネットワーク・インターフェースをDHCPで設定するか、手動で設定します
    2. $ dhclient -i end0
    3. 例えば以下のように、正確なシステム時刻を設定します。
    4. $ date -s "22 Nov 2024 09:00:00"
    5. GNOME GUIデスクトップ・バージョン用の追加パッケージをインストールします。
    6. $ debian-post-install-pkg desktop
    7. または、GUIデスクトップを含まないサーバ・バージョン用の追加パッケージをインストールします。
    8. $ debian-post-install-pkg server
    9. インストールが完了したら、rebootコマンドを実行してDebianデスクトップまたはサーバ・システムを起動します

Flexbuildを使用したDebianイメージのビルド

Flexbuildを使用してFRDM-IMX91S用のDebianイメージをビルドするには、以下の手順に従ってください。

  1. ビルド環境の設定:
  2. $ git clone https://github.com/nxp/flexbuild
    $ cd flexbuild && ./setup.env
    #Continue to run commands below in case you need to build in Docker due to lack of Ubuntu 22.04 or Debian 12 host
    $ bld docker
    $ source setup.env
  3. Flexbuildを使用したイメージのビルド:
  4. $ bld -m imx91frdmimx91s
  5. Flexbuildの使用:
  6. イメージの個々の部分をビルドするには、Flexbuildを使用するための以下のコマンド・リストを確認してください。
    $ bld uboot -m imx91frdmimx91s (compile u-boot image for imx91frdmimx91s)
    $ bld linux (compile linux kernel for all arm64 i.MX machines)
    $ bld bsp -m imx91frdmimx91s (generate BSP firmware)
    $ bld boot (generate boot partition tarball including kernel, dtb, modules, distro bootscript for iMX machines)
    $ bld multimedia (build multimedia components for i.MX platforms)
    $ bld rfs -r debian:server (generate Debian server rootfs)
    $ bld apps -r debian:server (compile apps against runtime dependencies of Debian server RootFS)
    $ bld merge-apps -r debian:server (merge iMX-specific apps into target Debian server RootFS)
    $ bld packrfs -r debian:server (pack and compress target debian server rootfs)

4. 開発者エクスペリエンス

NXPでは、あらゆるスキル・レベルのユーザーが開発を迅速化できるように、プラットフォームのさまざまな特長や機能に基づく広範なサンプル・アプリケーションを提供しています。

4.1 アプリケーション・コード・ハブ

アプリケーション・コード・ハブ (ACH) リポジトリでは、NXPの社内エキスパートが開発したマイクロコントローラおよびプロセッサのソフトウェア・サンプル、コード・スニペット、アプリケーション・ソフトウェア・パック、デモなどを簡単に見つけることができます。このスペースでは、マイクロコントローラおよびプロセッサのアプリケーションをすばやく簡単に一貫した方法で検索できます。

ACHには、特定のアプリケーションをすばやく見つけるためのフィルタと検索のオプションがあります。Git機能のサポートにより、ユーザーの開発環境でアプリケーションを簡単にインポートして使用できます。

ACHの詳細については、こちらのリンクをご覧ください。

4.2 I.MXアプリケーション・プロセッサ用GoPoint

i.MXアプリケーション・プロセッサ用GoPointは、Linux BSPに含まれているビルド済みアプリケーションを起動するためのユーザー・フレンドリーなアプリケーションで、i.MX SoCのさまざまな機能をすばやく実際に体験してみることができます。GoPointは、高度な機能に加え、GitHub で提供されているアプリケーション用のソース・コードとビルド・レシピを使用して、実装のための実用的なソリューションを提供します。

GoPointの詳細については、こちらのリンクをご覧ください。

デバッグ・ターミナルの設定

Linuxのデバッグ・ターミナル

Windowsのデバッグ・ターミナル

セキュリティと整合性

セキュリティと整合性

システムのセキュリティと整合性は常に、製品開発において考慮すべき最も重要な側面の1つです。

FRDM-IMX91Sは、セキュア・ブート機能と暗号化されたブート機能をサポートし、デバイスのブート・シーケンス中の不正なソフトウェアの実行を防止し、ブートローダのデータを不正アクセスから保護します。

セキュア・ブート機能の詳細については、アプリケーション・ノート「AN12312 AHAB対応デバイスのセキュア・ブート」を確認してください。

暗号化されたブート機能の詳細については、アプリケーション・ノート「AN13994 AHAB対応デバイスのi.MX暗号化ブート」を確認してください。

高速ブート

高速ブート

特定のユース・ケースでは、デバイスのブート時間の要件があります。これは、デバイスのブートを所定の時間内に完了させる必要があることを意味します。

ブート時間を最適化するために、FRDM-IMX91SはU-BootのFalconモードをサポートしています。FalconモードはU-Bootの機能で、SPLがLinuxカーネルを直接起動できるようにすることで高速ブートを可能にします。U-Bootのローディングと初期化を完全にスキップし、ブートローダで費やされる時間を短縮する効果があります。

Falconモードを有効にしてブート時間を最適化する方法については、「AN14093 Falconモードとカーネル最適化を使用したi.MX 8Mおよびi.MX 9での高速ブート」を参照してください。

NANDブート

NANDブート

FRDM-IMX91Sは、256 MBのオンボードNANDフラッシュ・メモリを搭載しています。フル機能のrootfsは通常5 GB以上あるため、256 MBのNANDストレージに収まるようにrootfsをカスタマイズする必要があります。NANDブート用にブートローダとrootfsをコンパイルする方法、およびイメージをNANDにダウンロードする方法については、「i.MX FRDMソフトウェア・ユーザー・ガイド」を参照してください。