S32G車載ネットワーク・プロセッサ・ファミリは、S32G3シリーズの発売開始により、製品数が2倍に増え、性能、メモリ、ネットワーク帯域幅はS32G2シリーズの2.5倍まで強化されました。最新のS32G3プロセッサは、S32G2プロセッサとパッケージのピンおよびソフトウェアの互換性を備えているため、お客様の設計において約10倍まで性能を拡張でき、複数の製品階層をサポートするほか、長期にわたる製品性能の向上を実現します。S32Gファミリは、トリプル・デュアルコア・ロックステップ・マイクロコントローラから、オクタル高性能マイコンを組み合わせたクアッド・デュアルコア・ロックステップ・マイクロコントローラに至るまで拡充され、3.9k~36k DMIPSの幅広いプロセッシング・レンジを提供します。
S32G2とS32G3の性能の比較と互換性
スピードおよびさらなるニーズへの対応
自動車業界におけるドメイン・アーキテクチャおよびゾーン・アーキテクチャへの移行に伴い、ドメイン間の機能の統合によって、さらなる処理能力やメモリのニーズに加え、干渉を避けるための分離ドメインのニーズも生じています。S32G3プロセッサは、最大4ペアのロックステップArm® Cortex®-M7マイクロコントローラ・コアと最大8個のCortex-A53アプリケーション・コア(オプションで4ペアのクラスタ・ロックステップが可能)を搭載しており、周波数を30%増の1.3 GHzまで高めることで、処理能力のニーズに対応しています。また、より広範なマイクロコントローラ・アプリケーションに対応するために、システムのRAMは最大20 MBに拡張され、分離ドメインも16ドメインに倍増されました。加えて、コアとアプリケーションの増加に対応するために、より多くのシステム・タイマとウォッチドッグ・タイマが搭載されています。
S32G3は、ネットワーク・アクセラレーションを備えた車載ネットワーク・プロセッサとして、より高い車載データ帯域幅に対応するように機能も強化されています。Low Latency Communication Engine (LLCE) は16のすべてのインターフェースで最大5 Mbit/秒のCAN FDをサポートし、Packet Forwarding Engine (PFE) は3つすべてのイーサネット・インターフェースで最大2.5 Gbit/秒をサポートします。
パッケージ |
525 FC-PBGA、19 x 19 mm、0.8 mmピッチ |
Armコア・クラスタ1 |
- |
1個のCortex-A53 @ 1 GHz |
2個のCortex-A53 @ 1 GHz |
2個のCortex-A53 @ 1.3 GHz |
4個のCortex-A53 @ 1.3 GHz |
Armコア・クラスタ2 |
- |
1個のCortex-A53 @ 1 GHz |
2個のCortex-A53 @ 1 GHz |
2個のCortex-A53 @ 1.3 GHz |
4個のCortex-A53 @ 1.3 GHz |
アプリケーションDMIPS |
- |
4600~5990(*) |
9200~11980(*) |
12000~15500(*) |
24000~31100(*) |
ArmリアルタイムLSコア |
3個のCortex-M7 (400 MHz) |
1個のCortex-M7 (400 MHz) |
3個のCortex-M7 (400 MHz) |
3個のCortex-M7 (400 MHz) |
3個のCortex-M7 (400 MHz) |
4個のCortex-M7 (400 MHz) |
3個のCortex-M7 (400 MHz) |
4個のCortex-M7 (400 MHz) |
リアルタイムDMIPS |
3900 |
1300 |
3900 |
3900 |
5200 |
3900 |
5200 |
DDR |
- |
LPDDR4/DDR3L 32ビット(最大4 GB) |
システムSRAM |
8 MB |
6 MB |
8 MB |
15 MB |
20 MB |
15 MB |
20 MB |
NVM-IF |
オクタルDDR NOR、eMMC/SDXC NAND |
AI / ML |
- |
Arm Cortex Neon: 16 GFLOPS |
Arm Cortex Neon: 32 GFLOPS |
Arm Cortex Neon: 41.6 GFLOPS |
Arm Cortex Neon: 83.2 GFLOPS |
PCIe |
PCIe 2.0(2レーン)x 1 |
PCIe 3.0(2レーン)x 2 |
イーサネット・アクセラレーション |
Packet Forwarding Engine (PFE)
2 Gbps @ 64 B転送 3つの外部ポート |
Packet Forwarding Engine (PFE2)
3 Gbps @ 64 B転送 3つの外部ポート |
高速 イーサネット・ポート (PFE) 車載 ネットワーク・アクセラレーション |
1 G/100M x 2 2.5G/1G/100M x 1 |
2.5G/1G/100M x 3 |
Low Latency Communication Engine (LLCE)
CAN FD x16 / LIN x4 / FR x1 |
Low Latency Communication Engine (LLCE2)
CAN FD x16 / LIN x4 / FR x1 |
非高速IF
CAN FD/LIN/FR
Gb ETH/USB 2.0 SPI/I2C |
4 / 3 / 1 1 / 0
6 / 5 |
4 / 3 / 1
1 / 1
6 / 5 |
タイマ |
12個のFlexTimer、7個のシステム・タイマ、7個のウォッチドッグ・タイマ |
12個のFlexTimer、13個のシステム・タイマ、12個のウォッチドッグ・タイマ |
ADC |
6ch SAR ADC、12ビット x 2 |
温度範囲 |
-40~+105°C (Tj = 125°C) |
S32G3においてS32G2よりも強化された機能 (*) S32G2のシリコン評価での2.995 DMIPS/MHzをベースとしたCortex-A53のDMIPS性能 |
ソフトウェア・デファインド・ビークルを加速
S32G3プロセッサは、自動車メーカーによって、ソフトウェア・デファインド・ビークル (SDV) の車載セントラル・コンピューティングに使用されています。このセントラル・コンピューティングは、車載の各種サービスをホストし、クロスドメイン機能(バーチャルECU)を統合し、セキュアなゲートウェイ機能を提供するとともに、車両全体のOTA (over-the-air) アップデートを管理します。Arm Cortex-M7とCortex-A53プロセッサ・コアの組み合わせは、リアルタイムの各種機能とアプリケーションをホストするのに適しています。これには、安全認証済みのオペレーティング・システムやハイパーバイザ上で実行され、eXtended Resource Domain Control (XRDC) と呼ばれるハードウェアの分離もできるセーフティ・クリティカルなアプリケーションや、ISO 26262 ASIL D機能安全のニーズへの対応も含まれます。ネットワーク・アクセラレータ(LLCEおよびPFE)は、プロセッサ・コアによるデータ・ストリームとパケットの処理能力を高め、IDPS(侵入検知および防御システム)のアクセラレーションに役立ちます。ハードウェア・セキュリティ・エンジン (HSE) は、ハードウェア・アクセラレーションによって公開鍵基盤 (PKI) の暗号化をサポートし、デバイス内および車両全体のOTAアップデートを管理します。場合によっては、車載コンピュータにデュアルS32G3プロセッサを使用して、車載サービスとセキュア・ゲートウェイ機能を分離することで、その多機能性をさらに発揮できます。
S32G3向けGoldVIPは、NXPのオープンソースおよびパートナー・ソフトウェアを統合した車載統合プラットフォームで、ソフトウェアの開発と車載コンピュータのプロトタイピングを迅速化する、すぐに使えるソリューションを提供します。これには、複数の仮想マシンを備えたハイパーバイザ、Linux、および車載サービス実装用のK3s Lightweight Kubernetes環境のサポートが含まれます。さらに、AWS IoT GreengrassとAWS IoT FleetWiseを活用してビークル・ツー・クラウドのサポートを合理化するAWSクラウド・サービスや、クラウド対応ですぐに使えるエクスペリエンスを提供するAirbiquityのOTAサービスもサポートしています。
拡充されたS32Gファミリは、さらに優れた性能、メモリ、ネットワーク帯域幅を提供します。S32G3で、ソフトウェア・デファインド・ビークルの開発を加速しましょう。
セーフティ・プロセッシングに最適
S32G3プロセッサは、Cortex-M7およびCortex-A53コアによる高水準の安全なプロセッシングとともに、マルチギガ・ビット・イーサネットのサポートと4レーンのPCI Express Gen3のサポートを提供し、認識プロセッサとも直接かつ効果的にやり取りできるため、ADASや自律走行車のセーフティ・プロセッシング用およびドメイン・コントローラとしても使用されています。内蔵の機能安全回路とコンパニオンのVR5510 ASIL Dパワー・マネジメントIC (PMIC) に加え、S32セーフティ・ソフトウェア・フレームワークも提供されており 、セーフティ・ソフトウェアの開発を合理化できます。S32G3は、セーフティ・チェック、冗長意思決定、ドメイン制御、これらのシステムでの車両のアクチュエーションなどの機能を実行します。S32G3は、従来のASIL Dマイクロコントローラでは限界に達する、最新のADAS/AVアプリケーションに必要な高次元のセーフティ・プロセッシング性能を実現します。あらゆる車両にわたって将来に対応したセーフティを提供する互換性と拡張性を備えたS32Gファミリは、自動車メーカーにとって魅力的です。
S32G3のターゲット・アプリケーション
S32G3プロセッサで今すぐ設計を開始
S32G3プロセッサには、評価ボードやリファレンス・デザイン・ボードのほか、ソフトウェア、ツール、およびパートナー・エコシステムによる強力なイネーブルメント・サポートが提供されています。車載グレードのリファレンス・デザイン・ボード3 (RDB3) およびGoldBox 3は、それぞれデスクトップ/ラボと車載プロトタイピング/テスト向けのハードウェア・プラットフォームです。NXPは、お客様のハードウェア設計の迅速化を支援するために、回路図、部品表、レイアウト情報などの設計情報を提供しています。
前述のように、S32G GoldVIPは、個々のソフトウェア・コンポーネントを備えるともに、迅速な開発のためのすぐに利用可能なソフトウェア統合を提供します。ソフトウェアの開発は、NXPのS32 Design Studio IDEとツールのほか、FreeMASTER™ランタイム・デバッグおよびビジュアル化ツールによってサポートされています。
さらに、S32G3プロセッサはパートナーのエコシステムによってもサポートされており、トレーニング、ハードウェア、開発ツール、動作環境、アプリケーション、クラウド・サービスなど多くのソリューションが提供されています。NXPおよび販売代理店から入手可能なボードと、S32G3のページから入手可能なソフトウェアを使用して、S32G3でのアプリケーション開発をすぐにでも開始できます。
S32G3のパートナー・エコシステム
S32G3に関するまとめ
S32G3シリーズの4つの新たなプロセッサが加わることで、S32G2ファミリが拡充されます。これらのプロセッサは、評価や開発に利用可能なハードウェアやソフトウェアとともに提供され、強力なパートナー・エコシステムによって支えられています。S32G3プロセッサは、車載コンピュータやセーフティ・プロセッシングのアプリケーションに最適ですが、その高い機能性により、ゲートウェイやドメイン・コントローラなど高性能なその他の車載プロセッシングでの使用も想定されており、輸送や産業など隣接市場でも既に使用されています。