2024年11月にリリースされたMatter 1.4の特徴の1つは、ホーム・エネルギー・マネジメント・システム (HEMS) のサポートが大幅に拡張された点です。Matter 1.3では、大型家電や電力供給機器のエネルギー管理のユース・ケースに対応するエネルギー・レポート機能が導入されました。Matter 1.4ではさらに進化し、デバイスの種類が追加され、自律性が強化されるとともに、エネルギー管理の柔軟性を高め、家全体のエネルギー使用量の調整を可能にしています。
高まる風潮
CSA (Connectivity Standards Alliance) がMatterの最新リリースで省エネ化を最優先している点は、驚くべきことではありません。これは、エネルギー効率、電気料金の節約、およびCO2の削減に対する消費者需要の高まりを反映しているものです。
米国を拠点とするIoT市場調査会社Parks Associatesの最近の報告書 によると、米国内のインターネット利用世帯の約半数がコア・スマートホーム・デバイスを所有しており、家庭内のエネルギー管理の向上が、この種のデバイスを設置している最大の理由の1つとなっています。これは、消費者が各デバイスや各家電製品のエネルギー消費量を把握することを求めており、さらにその情報をもとに省エネや電気料金の節約方法を決定したいと望んでいるためです。
Matter 1.4は、自動化をさらに推進し、電力グリッドの柔軟性を高め、居住者が手動での調整を繰り返したり多数の設定をプログラムしたりしなくても容易にエネルギー消費を削減できるようにすることで、この風潮に応えています。
Matterでのインテリジェントなエネルギー管理についてご紹介します。この新しいデモ・ビデオ をぜひご覧ください。
より多くのデバイス、さらなる自律性
たとえば、Matter 1.4では、太陽光パネルとハイブリッド太陽光発電/蓄電システムのサポートが追加されています。これにより、家庭内やグリッドに電力を戻すことができる蓄電池システムを実現できます。CSAではこれを「バーチャル・パワー・プラント」と呼んでいます。ヒート・ポンプは、消費量を予測して、需要ピーク時の使用量を調整したり、エネルギーの使用をピーク時以外の時間帯にシフトさせたりすることができます。また給湯器は、訪問客が宿泊するときなどの生活パターンの変化に対応できます。さらに電気自動車充電装置 (EVSE) は、希望する充電設定を使用して利便性やコストを最適化することができます。これらが組み合わさって、家庭におけるよりスマートでより自動化されたエネルギー管理へのアプローチを実現します。
CESでのNXP/geoによるデモ
ラスベガスで開催された今年のCES (Consumer Electronics Show) では、NXPは「Brighter Lives」をテーマに、Matterに基づくホーム・エネルギー管理の自律的調整のデモを行いました。私たちは、この体験をEmbedded WorldのNXPブースでも実現できることを楽しみにしています。
CESでのホーム・エネルギー管理のデモ。
このデモでは、英国のgeo (Green Energy Options, Ltd.) によって設計された次世代のHEMSシステム「SeeZero」を披露しました。SeeZeroは、世界初の量産市場向けMatter対応宅内ディスプレイであり、NXPのシリコン技術を活用してZigBeeスマート・メーターならびにWi-FiデバイスやThreadデバイスと接続し、Matterでのエネルギー管理を実現しています。
このデモについては、こちらのビデオ でご覧いただけます。SeeZeroは、家庭内のエネルギー・スマート家電 (ESA) を一元管理し、各家電が以後のエネルギー需要をHEMSにセキュアに伝達できるようにすることで、それらをすべて自動で調整します。
このデモのバーチャル・ホームには、スマート・メーター、給湯器、洗濯機と乾燥機、太陽光パネル、SeeZeroサーモスタット、家庭用蓄電地、EV充電器が設置されています。これらすべてのESAのエネルギー消費量が、居住者が介入することなく管理および調整可能です。Matterは、メーカーが異なっていたとしても、すべてのESAと通信できます。
消費者が太陽光パネルや蓄電池を設置している場合には、発電した余剰電力を活用して、電力をグリッドに戻す代わりにESAをオンにすることができます。EVの充電は、蓄えたエネルギーを使用して夜間に行ったり、朝は曇りで午後には晴れる予報であれば正午まで延期したりするなど、柔軟にスケジュールを設定できます。余剰分の太陽光電力は、グリッドに戻すのではなく、朝方に給湯器で使用するように設定できます。その後、日中には給湯器をオフし、夕方家庭で使用するためにエネルギーをHVACに分散させることもできます。
より広い範囲で見ると、デモのような自律的に調整されるHEMSシステムは、特に猛暑日などの過酷な事象の発生時に、グリッドのバランスを図るために活用できます。電力会社は節電の必要性を家の所有者に警告でき、一方で家庭ではそれに対応して自動的に電力消費を減らすことができます。HVACシステムは、エアコンの設定を高から中に切り替えたり、EV充電器をオフにしたりして、電力を節約できます。過酷な事象が過ぎ去って節電要請が解除されると、家での電力使用状況は自動で元に戻ります。その結果、需要と供給のバランスが取れて、化石燃料を使用する予備発電機の必要性が低下します。
NXPが可能にする
geo SeeZeroの中核を成しているのが、NXPのi.MX RT1060クロスオーバーMCU(Arm Cortex-M7コアで動作し、1 MBのRAMを搭載)、K32W0xワイヤレスMCU(Matter、ZigBee、Thread、Bluetooth Low Energy 5.0をサポート)、および88W8801 2.4 GHzシングルバンド1x1 Wi-Fiソリューション(Wi-Fi搭載デバイスへの接続用)です。
CESでは、Neal KondelがNXPの最新のエネルギー・システム開発プラットフォームのデモを行いました。
Matter 1.4に対応するデモをこの規格の正式リリースからわずか数か月に実施できたことは、NXPがいかにCSAと緊密に連携してMatterをサポートしているか、およびエネルギー、コネクティビティ、セキュリティ、プロセッシング、ソフトウェアへの対応の幅広さを証明しています。
NXPは、スケーラブルで柔軟性が高いセキュアなプラットフォームを含む、業界で最も広範なMatter対応製品ポートフォリオを取り揃えている企業の1つであり、geoのようなデバイス・メーカーによる製品のイノベーションと市場投入の迅速化を支援できます。これはホットな話題なので、数ヶ月のうちに新しいビデオ・シリーズで引き続き議論を進める予定です。まずは、NXPがどのようにMatterでのイノベーションの実現に役立つことができるかをご確認ください。