Formula Student Electricは、大学生のチームがフォーミュラ・スタイルの完全電気自動車を設計、製作してレースを行う国際的なエンジニアリング・コンペティションです。このプログラムは、より広範なFormula Student(Formula SAEとも呼ばれる)シリーズの一環であり、非常に権威のあるグローバルな学生エンジニアリング・コンペティションの1つになっています。
Raftar Formula Racing Electricはインド工科大学の学生エンジニアリング・チームで、インドで特に多くの栄誉を獲得したチームの1つとして名声を確立しています。このブログでは、NXPとのコラボレーションが、画期的なスピードを誇る自動運転電気レーシング・カーの設計に取り組む学生たちをどのようにサポートしているかを紹介します。
Formula Student Electricの取り組みの中で、直面した非常に重大な課題の1つは、高電圧パック用の信頼性の高いバッテリー・マネジメント・システム (BMS) の開発でした。BMSはバッテリーの頭脳であり、パックを保護し、性能を保証し、車両の他の部分とのスムーズな統合を可能にします。
ゼロからすべてを製作する学生チームにとって、これは困難ではあるものの、やりがいのある作業でした。
今回取り上げた優秀なチームの紹介
出発点
初期段階では、バッテリー・パックの機械設計と、BMSおよび重要なパック機能用のコンパニオンPCBを含む電気設計を並行して進めました。学習曲線を加速させるため、まずETPL(エレクトリカル・トランスポート・プロトコル・リンク)バンドルを使用してNXPの800V BMSリファレンス・デザインをテストすることから始めました。ETPLバンドルには、バッテリー・エミュレータ、MC33774を搭載したペリフェラル・テスト・ボード、18チャネル・バッテリー・セルコントローラIC、800 Vバッテリー・ジャンクション・ボックス (BJB)、そしてメイン・コントローラとして機能するRD-K358BMUバッテリー・マネジメント・ユニット (BMU) が含まれています。
NXP HVBMSリファレンス・デザイン・バンドルは、高度な高電圧バッテリー・マネジメント・システムの開発、テスト、およびデモに必要なすべてを備えています。
このセットアップにより、S32 Design Studio (S32DS) を使用して初期ロジックをテストすることができました。利用可能なドライバと構成ツールに慣れてきたところで、コード開発をさらに進めるためにモデルベース設計ツールボックス (MBDT) に切り替えました。
モデルベース設計への移行
Simulink®によるコーディングは初めてでしたが、NXPのサポート・エコシステムにより、移行はかなりスムーズでした。まずはNXPが提供するサンプル・プロジェクトから始めました。このサンプル・プロジェクトでは、ETPL通信を介してMC33774から電圧やアナログ入力を読み取り、統合のためにCANメッセージを車内の他の部分に送信するなど、BMSの基本的な機能を実証しました。
そこから3か月間の開発期間を経て、NXPのMBDTチームのエンジニアの指導を受けながら、MBDTコミュニティを活用し、より複雑な機能を徐々に構築していきました。このプロセスを通じて、自信を持ってソフトウェア機能を拡張できるようになりました。NXPコミュニティのフォーラムも、問題解決と知見の共有に大きな役割を果たしました。
統合がシンプルに
S32K3用MBDTの最大の利点の1つは、車両の他の部分との統合が極めて容易かつシームレスだったことです。開発済みのモデルや既存モデルをBMSに直接ドラッグ&ドロップして機能を追加できます。たとえば、バッテリー・モデルの充電状態 (SOC) 推定ブロックは、BMSソフトウェアにコピー&ペーストするだけで済みました。
現在の状況
MBDTとNXPのサポートのおかげで、次のような強力なBMSソフトウェア・スタックを開発できました。
- セルごとの電圧と温度のモニタリング
- 充電状態 (SOC) と健全性 (SOH) の計算
- セル・バランシング・アルゴリズム
- 車両の他の部分との統合のための堅牢なCAN通信
- 包括的な故障検出:200以上の自動チェックにより、バッテリーの故障を継続的に監視し、安全性と信頼性を大幅に向上させます。
- スマートなコンタクタ制御:BMSは充電状態と放電状態を自動的に検出し、コンタクタをシームレスに管理することで、人為的ミスを減らし、スムーズな動作を保証します。
BMSおよびS32K3 MBD
このマイルストーンはチームにとって大きな前進であり、パックを安全かつ効果的に運用できるようになると同時に、機械学習ベースの熱暴走検出、アクティブ冷却アルゴリズム、高度な故障予測アルゴリズム、その他の次世代機能といった将来の改良に向けた強固な基盤となっています。また、柔軟性を高めるため、コントローラとペリフェラル・ボードの両方のカスタム・ハードウェア・ソリューションの開発にも取り組んでいます。
まったくの初心者から完全に機能するBMSを構築するまでの道のりを踏破できたのは、NXPが提供するツール、サポート、そしてコミュニティのおかげです。モデルベース設計ツールボックスは開発を加速させただけでなく、組込みソフトウェアの設計に関して大切なことを学ぶことができました。
この勢いのまま、Formula Studentコンペティションに向けて革新を続けていきたいと考えています。