コネクテッド・デバイスのスマート化が進むにつれ、コンピューティング要件も複雑化の一途をたどっています。デバイスは、マシン・ビジョンなどのAIアプリケーションから送られる膨大なデータを迅速に処理し、送信する必要があります。システムには信頼性、安全性、セキュリティ性が求められます。NXPの i.MX 95プロセッサ・ファミリは、この新たなエッジ・イノベーションに対応できるよう特別に設計されています。
i.MX 95ファミリの多くのメリットを説明するために、4部構成のブログ記事を開始します。この第1部の記事では、機能安全の機能について説明します。第2部ではAI機能とML機能、第3部ではコネクティビティとセキュリティの詳細、第4部ではi.MX 95ファミリのグラフィックスとディスプレイのテクノロジについて解説します。今回は、NXPがコネクテッド・デバイスに最新の機能安全をどのように実装しているのかについて、詳しくご紹介します。
エッジでのイノベーションを推進するには、安全性が非常に重要です。i.MX 95ファミリ・アプリケーション・プロセッサの詳細について、こちらをご覧ください。
機能安全が重要である理由
機能安全とは、系統的な原因からランダムに発生する障害によって電子システムが誤動作するリスクを減らすために役立つ安全機能を実装することを言います。機能安全はシートベルトのようなものと考えてください。つまり、何かの問題が発生する場合に備えて用意されるものです。機能安全の導入によって、システムが予測可能かつ安全な方法で障害に対応することが保証されます。これはシステム障害が大きなコストにつながる可能性があるユース・ケースだけでなく、人を巻き込む事故につながるようなアプリケーションでは特に重要です。
NXPのフラッグシップ製品であるi.MX 95ファミリは、車載アプリケーションおよびインダストリアル・アプリケーションの機能安全ニーズを満たすために、高い柔軟性と拡張性を備えたアーキテクチャを採用しています。これにより、お客様は安心してセキュアで安全性の高いエッジ・プラットフォームを設計できます。i.MX 95ファミリは自動車、インダストリアル環境、スマートホームなどにおける組込みアプリケーションに最適です。
i.MX 95ファミリのアプリケーション・プロセッサは、安全でセキュア、低消費電力のエッジ・コンピューティングを実現し、さまざまなエッジ・アプリケーションに導入できます。
自動車の機能安全
現在の自動車はかつてないほどの安全性を備えていますが、何らかの異常が起きるリスクは常にあります。自動車メーカーは自動車に機能安全を組み込むことで、搭乗者の安全性を高めてリスクを減らす、追加の保護層を加えることができます。
以下に、i.MX 95ファミリが想定している車載アプリケーションのごく一部をご紹介します。
-
コネクティビティ・ドメイン・コントローラ:
車両のワイヤレス・インターフェースを統合したシステムで、カー・ラジオやGPSナビゲーションなどの機能を提供します。予定どおりの時間に到着したり、必要な情報を入手したり、ドライブに役立つ機能を実現します。
-
電子コックピット
多くの自動車は、インフォテイメント機能、コネクティビティ機能、セーフティ・モニタリング機能を1つのインターフェースに統合した、電子コックピットまたはeCockpitと呼ばれるインターフェースを備えています。セーフティ・モニタリング機能の例としては、車線逸脱警告やインスツルメント・ライトなどがあります。
-
ソフトウェア無線
これは、デジタル・ラジオでお気に入りの曲を聴くだけの機能ではありません。自動車メーカーはソフトウェア無線 (SDR) プラットフォームを利用して、車車間 (V2X) 通信テクノロジや、新機能や国内基準に対応するための無線アップデートを導入できます。
-
乗員監視システム
最近発売された自動車では、運転中に誤って車線を外れるとコーヒーカップのアイコンが表示されることがあります。乗員監視システムによって、運転者に対して休憩を取ったり、集中して運転するよう注意を促したりできます。さらにこのタイプのシステムでは、車の後部座席に同乗者が置き去りにされていないかどうかを検出することもできます。
-
乗員監視システム
最近発売された自動車では、運転中に誤って車線を外れるとコーヒーカップのアイコンが表示されることがあります。乗員監視システムによって、運転者に対して休憩を取ったり、集中して運転するよう注意を促したりできます。さらにこのタイプのシステムでは、車の後部座席に同乗者が置き去りにされていないかどうかを検出することもできます。
-
死角監視システム (BSM) とマルチカメラ監視
高速道路で素早く車線変更するときや、車庫からバックで車を出すときに、監視テクノロジが役立ちます。このようなテクノロジはここ数年で劇的な進化を遂げ、走行時と駐車時の安全性を高めてくれるようになりました。
i.MX 95 MPUは、自動車市場向けの安全性向上を目的とする多様なアプリケーションに対応する処理性能を備えています。
i.MX 95ファミリはNXPのSafeAssure®プラットフォームを基盤とし、ISO 26262 ASIL BおよびSIL-2 IEC 61508に準拠しています。ISO 26262は自動車の機能安全を保証する規格で、インフォテイメント、コネクティビティ、セーフティに関連する幅広い車載アプリケーションに適しています。自動車機能安全度水準 (ASIL) は、さまざまな車載コンポーネントに対する安全要件を規定する規格です。
インダストリアル・アプリケーションの機能安全
i.MX 95ファミリはインダストリアル・アプリケーションの機能安全要件も想定して設計されており、巨大な工作機械からハンドヘルド・デバイスまで幅広く対応します。i.MX 95プロセッサは、ロボティクス・コントローラやAIを使用した画像検査機器などのファクトリ・オートメーション機能のパフォーマンス・ニーズを満たす十分な性能を備えています。その一方で、このプロセッサは電力効率に優れており、デジタル・キオスク、サイネージ、産業向けPC、画像決済システムにも適しています。NXPのテクノロジは労働者の安全確保だけでなく、高価な設備機器の故障リスクを減らすためにも役立ちます。
SIL-2 IEC 61508は、安全性が重視される幅広い業界の電子システム向けに策定された、重要機能安全規格です。IEC 61508の目的は、システム障害を防止しながら、問題が発生してもセーフティ・メカニズムを確実に機能させることにあります。たとえば、IEC 61508に準拠した機器であれば、温度が上がりすぎた状態になってもシステムをセーフ状態に切り替えて損傷を軽減します。
i.MX 95アプリケーション・プロセッサは、インダストリアル・アプリケーションにおけるAI画像検査に対応します。
高性能と高効率を両立する、新時代のコンピューティング
i.MX 95プロセッサは最大6個のArm Cortex-A55コアを搭載し、車載アプリケーションとインダストリアル・アプリケーションのパフォーマンス・ニーズに対応します。Arm Cortex-M33プロセッサを含む独立したセーフティ・ドメインと、Arm Cortex-M7プロセッサを統合したリアルタイム・ドメインが組込まれています。この高集積設計によりリアルタイムの高性能プロセッシングが実現し、車載アプリケーションやインダストリアル・アプリケーションで即時の意思決定が可能になります。
i.MX 95ファミリもEnergy Flexアーキテクチャを採用することでシステム・レベルのエネルギー消費量を最小限に抑えています。このプロセッサは、アプリケーション領域とセーフティ領域の電力を別々にきめ細かく管理する機能を備えています。セーフティ領域では高い信頼性と予測可能性を確保することが重要であるため、このアプローチによって、セーフティ領域を中断なく実行し続けながら、必要なときにアプリケーション領域のみを使用することができます。その結果、電力消費量を抑えることができます。
さらにレベルの高い機能安全へ
NXPは機能安全に関して、高品質と信頼性を最も重視しています。NXPのSafeAssureプログラムにより、i.MX 95を購入したお客様は開発中の製品が厳しいセキュリティ基準を確実に満たすという安心感を持って設計に取り組むことができます。これによりコンプライアンス・プロセスを合理化できるため、企業は製品をより迅速に市場に投入できるようになります。
このシリーズの第2部では、i.MX 95によってエッジでのAIイノベーションがどのように促進されるかについて詳しく解説します。
早期アクセス・プログラムへの参加をご希望の場合は、i.MX 95ファミリの製品ページを見るか、NXPまたはディストリビュータのセールス・チームまでお問い合わせください 。