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ニコラ・テスラが初めて提唱した、環境からエネルギーを取り込んで発電するという果てしない夢は、技術革新の新たな時代に息吹きを与え続けています。今日では、AI、ロボティクス、自動接続するスマート・デバイスなどが登場し、かつてはSFの世界だけのものであったその野望を実現するところまできています。
これらのテクノロジの融合とは、単に遠隔制御や自動化だけを示しているのではありません。それは、ニーズの予測、自己制御、そしてインテリジェントかつ持続可能なシステムの創出を意味します。
Horizonイニシアチブなどのプロジェクトは、目の前の限界を越えて、サステナビリティへとつながる小型化を実現するよう私たちに強く促しています。材料と電力を削減するという概念は、もはや遠くの目標ではなく、現実的に不可避なものとなっています。
私たちのビジョンは明確です。それは、サステナビリティと利便性を最適な形で両立できる、普遍的なエネルギーと情報のネットワークを世界中に普及させることです。
この潮流の最前線に立つNXPオーストリアは、欧州連合の研究とイノベーションのためのプログラム「Horizon 2020」による資金提供を受けたREINDEERプロジェクトを実施しました。このプロジェクトでは、スマート・コネクティビティ・テクノロジを進歩させるために欧州全域から卓越した研究者やエンジニアが結集し、最終的に、超応答性で常時利用可能なデジタル・エクスペリエンスのために設計された新しいconnect-compute(通信と演算が融合した)プラットフォームという成果が得られました。
REINDEERプロジェクトのIoTに対するビジョンをご紹介します。Smarter Worldブログ「バッテリーやコードが不要なIoTとは?」をお読みください。
REINDEERの活動が契機となり、ワイヤレス・コネクティビティの再定義を目指す野心的取り組みとして「AMBIENT-6Gコンソーシアム」が立ち上がりました。AMBIENT-6Gは、エネルギー効率の限界を押し上げることを目指しており、周囲に存在するエネルギーを収穫し、ワイヤレスでの電力変換を活用することで自律的に動作するスマート・デバイス、すなわち「エネルギー・ニュートラル・デバイス (END)」を導入しています。これは、バッテリーおよびプラグやケーブルを不要にし、真に持続可能なIoT (Internet of Things) の基礎となるものです。
エネルギー・ニュートラルな自律型デバイスに向けたビジョンを実現するために、AMBIENT-6Gでは、以下のようないくつかの革新的イノベーションを導入しています。
NXPは、真にエネルギー・ニュートラルなデバイスを実現するために、超低消費電力のハードウェア、最先端のワイヤレス・テクノロジ、セキュアなコネクティビティでのイノベーションを促進することで、AMBIENT-6Gの取り組みに貢献しています。NXPは、高度な半導体設計における専門知識を活かし、エネルギー・ハーベスティングおよび最小限の消費電力のために最適化された回路を開発するとともに、IEEE 802.11bpの標準化(将来のコネクティビティ・ネットワークに向けて、AMBIENT-6G内で注視し続けている)を通じて、次世代の低消費電力通信のあり方を積極的に方向付けています。これを補完するように、NXPではエッジ・インテリジェンスを統合することで、デバイスが適応しながら通信や処理に対応し、最大限の効率と応答性を実現できるようにしています。これらの複合的な取り組みにより、NXPは、エネルギー・ニュートラル、セキュアなコネクティビティ、スマートな自律性が融合した、持続可能なIoTおよび6Gエコシステムの中心的存在としての地位を確立しています。
AMBIENT-6Gは、実験室での実際的なデモを通じたテクノロジの検証に尽力しています。その目標は、これらのイノベーションが日常の場面において確実に機能し、以下のような明確な利点をもたらすことを証明することです。
スマート環境で持続可能な新時代の農業を想像してみてください。そこでは、エネルギー・ニュートラルな小型センサが畑や森林全体に点在し、土壌の水分、養分、植物の健康状態、および火災の危険性をモニタリングしており、それらセンサのすべてが周囲に存在するエネルギーを利用し、スマート・グリッドで相互接続されています。これは、森林火災の防止、生物多様性の保全、目的を絞った灌漑による水消費の改善、さらには人工農薬や肥料の使用削減による自然生息地の保護にも役立ちます。
または、相互接続された何千もの小型デバイスを活用したスマートシティでの生活をイメージしてみてください。これらのセンサは、手動でのメンテナンスも追加のエネルギー源も必要とせずに、空気質、交通量、騒音レベルを継続的にモニタリングし、都市空間での質の高い生活を確保します。
ビジョンを具現化するには、夢を見るだけでなく、徹底して実行に移すことが必要です。AMBIENT-6Gは、地球規模での調和と相互運用性を確保することにより、国際標準化への取り組みに積極的に貢献しています。このプロジェクトは、世界中の研究ロードマップとの整合性を図ることで、そのイノベーションが長期的な影響力を有し、6Gテクノロジのみならず全人類の未来の形成に寄与できるようにします。
持続可能なコネクティビティの未来を探求する。詳細については、AMBIENT-6Gをご覧ください。
その道のりには困難も伴います。信頼性の高いエネルギー・ハーベスティング、堅牢な通信プロトコル、妥協のないセキュリティは、乗り越えなければならないハードルです。NXPが培ってきたセキュアなコネクティビティに関する専門知識は、NXPをこの取り組みにおける最適なパートナーとして位置付けるとともに、デジタル化が進む世界においてコネクテッド・システムの完全性を保護します。
社会的側面および継続性のためにセキュリティを確保することは極めて重要です。デジタル・インフラがますます普及していく中、セキュアなコネクティビティの重要性はどれだけ誇張してもしすぎることはありません。AMBIENT-6Gはセキュリティを戦略の中核に据えており、安全性やプライバシーを犠牲にすることなく、エネルギー・ニュートラルなコネクティビティの利点が確実にもたらされるようにします。
REINDEERからAMBIENT-6Gへの移行は、エネルギー・ニュートラルなコネクティビティの進化における重要な転機を示しています。これらのプロジェクトは、先を見据えた思考、技術革新、戦略的な将来予測を統合することで、最先端テクノロジを進歩させているだけでなく、持続可能で相互接続される未来のための基盤を築いています。夢のようなエネルギー自律型デバイスが現実のものとなりつつあり、来たるべき世代に環境面、経済面、社会面での利益をもたらすことを約束しています。
AMBIENT-6Gプロジェクトは、欧州連合の研究とイノベーションのためのHorizon Europeプログラム に基づいたスマート・ネットワーク・サービス共同事業(Smart Networks and Services Joint Undertaking:SNS JU) より助成金を得ています(助成合意書番号101192113)。
Daniel Pöhlは、NXP Austriaのジュニア・システム・アーキテクトであり、アンビエント・ワイヤレス・コネクティビティの標準化への取り組みを含め、主にRAIN RFIDおよびアンビエントIoTに携わっています。無線周波数エネルギー・ハーベスティング、RFID、アンビエント・パワー通信などを研究テーマとしており、低消費電力でエネルギー・ニュートラルなワイヤレス・アプリケーションやRF後方散乱対応システムの設計と解析に注力しています。
Ulrich Mühlmannは、GratkornにあるNXP Semiconductors Austriaで20年以上にわたり技術革新を推進してきました。NFC DSPのエンジニアリング・チームを率いており、NXPのシステム・エンジニアリング・チーム内で先進的NFCおよびUWBシステムに貢献しています。また、将来のアンビエントIoTやスマート・コネクティビティ・ソリューションの研究にも深く関与し、次世代のワイヤレス・テクノロジの形成に寄与しています。
タグ: テクノロジ, ワイヤレス・コネクティビティ