サイバーレジリエンス法(Cyber Resilience Act:CRA)は、欧州市場でデジタル要素を含む製品を設計、開発、文書化、保守する際の要件に大きな変化をもたらします。この規制は多くの製造業者に対して、どこから始めればよいのか?厳密には何が求められているのか?イノベーションを停滞させずに準拠を確保するにはどうすればよいのか?といった重要な疑問を提起します。
CRAによって新しい法的義務が導入されるにあたり、すでに業界全体でその明らかな影響が見え始めています。この規制の中心にある目的は、長い間にわたって確立されてきたサイバーセキュリティのベスト・プラクティスを正式に標準化し、測定可能かつ適用可能な必須条件とすることです。製造業者にとっての真の課題は、個々の要件を理解することではなく、すべてを統合して、製品ライフサイクル全体にわたり構造化された反復可能なアプローチを構築することです。
CRA準拠のための強固な基盤の構築
NXPでは、現在CRAの適用に向けて準備を進めている、影響を受けるすべての市場の製造業者と緊密に連携しています。そこでのさまざまな話し合いを通じて、1つのことが明らかになりました。それは、CRAへの準拠を面倒な義務としてではなく、新たな改善の機会と捉えてアプローチする企業ほど、より速く、より自信を持って作業を進めているということです。
NXPは、この取り組みを簡素化するために、CRAへの対応を4つの実務的なステップに分割します。このアプローチでは、規制の条項について詳しく論じるのではなく、実際の製品を具体的にどのように設計、製造、文書化、保守するかについての基礎的な事項について概説します。この4つのステップを、単なるチェックリストとしてではなく、早期の評価により製造業者が自信を持って長期的な準拠を確保できるよう支援する構造化されたロードマップとして提唱します。このロードマップには、実際にCRAへの対応に向けて製造業者と緊密に連携している、NXPのサイバーセキュリティおよび認定のエキスパートによる洞察が盛り込まれています。
ステップ1:仮定ではなく明確な事実に基づいて構築できるようリスク評価を実行する
CRAへの対応は、製品を理解することから始まります。これには、製品が何を行うのかだけでなく、どのように使用され、どこに導入され、現実的にどのような問題が起こり得るのかを知ることも含まれます。それが、リスク評価と脅威分析がCRAプロセス全体の基盤となっている理由です。
製品固有のリスク評価は、製造業者が以下のことを行うために役立ちます。
- 保護が必要な資産を特定する
- 実際の使用状況に基づいて起こり得る脅威について理解する
- 適切な技術的および手続き的な緩和策を特定し、それらがCRAの基本的なサイバーセキュリティ要件にどのように対応するかを確認する
- CRAに沿った正しい製品分類を特定し、確立する
このステップは、後に続くすべての決定の基盤となるという点で非常に重要です。堅実なリスク評価を行わずに作業を進めた場合、セキュリティ対策が現実にそぐわないものになったり、複雑すぎたり、不十分になったりする可能性があります。多くの場合、これは準拠におけるリスクを減らすよりも、むしろ増やしてしまう結果につながります。
CRAのリスク評価は単なる理論上のものではないことに留意してください。一般的なカテゴリや同様なデバイスを評価するのではなく、特定の製品を評価する必要があります。具体性に焦点を当てることで、セキュリティ対策が有意義で正当化された、確かな防御力を備えたものになります。
ステップ 2:セキュリティ・バイ・デザインの採用により、リスクに関する洞察をレジリエントなアーキテクチャへと変換する
CRAでは、リスクについて理解した後、後の段階で修正を加えたりセキュリティ機能を追加したりするのではなく、製造業者が設計段階からそれらのリスクに対処することが求められます。セキュリティ・バイ・デザインは、CRAの中心原則の1つであり、従来セキュリティを後付けとして扱っていた企業にとっては大きな改善の機会となります。
具体的には、セキュリティ・バイ・デザインには以下のことが含まれます。
- セキュリティ要件を製品アーキテクチャに最初から組み込む
- 攻撃対象となる領域を最小限に抑え、使用しないインターフェースは無効にする
- セキュアな設定を初期設定として有効にする
- データ、ID、ソフトウェアの整合性を保護する
- セキュアな更新や脆弱性への対処について継続的な計画を立てる
- セキュアな製品開発ライフサイクル全体にわたって一貫したセキュリティのベスト・プラクティスを適用する
CRAは、セキュリティが設計上の1回限りの決定ではないことを明確にします。つまり、リスク評価と脅威モデリングは、コンセプトから導入、さらにその先まで、製品ライフサイクルのすべての段階で知見として活用される必要があります。また、パフォーマンス、消費電力、コスト、機能とともにセキュリティについて早期に検討することで、製造業者は2つの利点を得られます。より強力な製品を構築できること、そして準拠を簡素化できることです。これに対し、後の段階になってからセキュリティ関連の改修を行うと、技術的リスクと規制上のリスクの両方が高まります。
製品アーキテクチャに1日目からセキュリティを組み込む方法を学びましょう。CRA EdgeVerse Techcastのエピソード2をApple 、Spotify 、またはYouTube でお聞きください。
ステップ3:セキュアな製品を信頼できる証拠として活用することで準拠を証明する
セキュアな製品を構築することは不可欠ですが、CRAの下では、それだけでは十分ではありません。製造業者は、明確で一貫した、信頼できる形で準拠を実証できる必要があります。これは多くのチームが不安を感じる点です。準拠の証明には、文書化、プロセス、透明性が関わってくるため、単なる技術的な実装以上のものが必要になります。
このステップの主な要素は次のとおりです。
- CRAの基本的なサイバーセキュリティ要件を製品の機能やプロセスにマッピングする
- 適合性の主張を裏付ける技術文書を作成する
- 製品の使用目的、サポート期間、残存リスクを明確にする
- 製品分類に基づく適切な適合性評価手順を選択する
- 適合宣言書を発行し、CEマークを添付する
このステップは、単独でアプローチする場合は困難に見えるかもしれませんが、堅実なリスク評価とセキュリティ・バイ・デザインの基盤に基づいて取り組めば、準拠の証明が管理上の負担になることなく、構造化された論理的な作業として管理しやすいものになります。
CRAへの準拠を証明する際に過度の複雑さを回避する方法を学びましょう。CRA EdgeVerse Techcastのエピソード3をApple 、Spotify 、またはYouTube でお聞きください。
ステップ 4:準拠を長期的なコミットメントとすることで、製品ライフサイクル全体にわたり適合性を維持する
CRAへの準拠は、製品が市場に出た時点で終了するわけではありません。製品は何年間も、ときには何十年間も現場で使用される可能性があり、製造業者はその期間全体を通じてセキュリティと適合性を維持する責任があります。
このライフサイクルの観点から、次のような新しい課題が生まれます。
- 新たに発見された脆弱性について監視し、対応する
- セキュアなソフトウェア更新やパッチを提供する
- アルゴリズムの進化に応じてクリプト・アジリティ(暗号の俊敏性)を確保する
- ソフトウェア部品表 (SBOM)、各種文書、リスク評価を最新の状態に保つ
- 堅牢なインシデント対応および開示プロセスを確立する
CRAは、長期的なセキュリティが任意の要件ではないことを明確にします。これには、明確に定義された責任と持続的なプロセスを含む、技術的メカニズムと組織的準備の両方が必要となります。そのため、最初からライフサイクル全体のセキュリティを計画している製造業者は、これらの義務を果たし、時間の経過とともに顧客の信頼を維持していく上ではるかに優位な立場にあります。
セキュアな更新、脆弱性への対応、組織の回復力などの長期的な課題に対処する方法を学びましょう。CRA EdgeVerse Techcastのエピソード4をApple 、Spotify 、またはYouTube でお聞きください。
NXPとともにCRAに対応
サイバーレジリエンス法は、新たな義務を導入するだけでなく、多くの製造業者にとってもはや常識となっているさまざまな原則を効果的に強化します。これは、セキュリティが意図的かつ具体的で、文書化され、持続的でなければならないことを思い出させるものです。この移行に際して違いをもたらすのが、ガイダンスです。製造業者は、実際の制約の下で、これらの原則を実際の製品にどのように適用すればよいかを知る必要があります。
NXPでは、以下を組み合わせることで、CRAのプロセス全体を通じて製造業者をサポートしています。
- セキュア・バイ・デザインに基づくシリコンとプラットフォーム
- ライフサイクル全体にわたるセキュリティのためのテクノロジとサービス
- CRAの要件に沿った明確なガイダンス
- リスク評価、アーキテクチャ、準拠、ライフサイクル全体のセキュリティに関する深い専門知識
NXPの使命は、単にテクノロジを提供するだけでなく、信頼できるアドバイザおよびパートナーとしてサポートすることです。私たちは、製造業者が規制に関する不安を解消し、自信を持って実行に移れるように支援します。
CRA EdgeVerse Techcastシリーズ の全体をご覧ください。また、nxp.com/CRAでは、CRA対応プロセスに役立つNXPの実地的な専門知識を提供しています。