今後、Matterは市場での存在感を急速に高めて、共通のアプリケーション・レイヤー・プロトコルによるスマートホーム・デバイスの統合化と、シームレスな相互運用性を実現することになるでしょう。しかし、対応チップセットが5億個以上出荷されているZigbeeは、対応するデバイスが既に大量にスマートホームに導入されています。
Connectivity Standards AllianceはMatterの開発時に、Matter非対応デバイスをMatterファブリックに接続する手段として、ブリッジ・デバイスを標準でサポートすることにしました。以下の図に示すように、Matter to Zigbeeブリッジを経由することで、ZigbeeデバイスがMatterファブリック上のデバイスと通信し、MatterデバイスがZigbeeネットワーク上のデバイスと通信できます。
Matterブリッジによって既存Zigbee デバイスがMatterファブリックと通信できるようになります。
たとえば、Matter to Zigbeeブリッジで3種類のZigbeeデバイス(スマート電球、スマート・ブラインド、スマート・プラグ)のブリッジングをサポートするとします。Matterの仕様では、ZigbeeデバイスをブリッジドMatterデバイスとしてMatterファブリックに割り当てる方法が規定されています。エンド・ユーザーや他のMatterデバイスからは、Zigbee対応のスマート電球、スマート・ブラインド、スマート・プラグがいずれもMatterデバイスとして認識されます。これにより、最新のMatterデバイスと連携した自動化が可能になることから、既存のZigbeeデバイスで新しい機能を利用できるようになり、ユーザーの評価が高いMatterのさまざまなメリットを得られます。さらに、このブリッジ機能を新しいハブやゲートウェイに組み込んだり、既存のハブやゲートウェイにソフトウェア・アップデートで追加したりできるため、ユーザーはZigbeeデバイスをMatterに簡単に追加できます。
3種類のデバイス・タイプをサポートするシンプルなブリッジ。
ユーザーにとっては、ブリッジは既存のデバイスに新しい機能を追加してくれる存在です。開発者の目線で見ると、ブリッジの開発は急速に複雑化する可能性があります。Matterの仕様では、Matter非対応デバイスをMatterファブリックに割り当てる手法が大まかに規定されています。各ブリッジド・デバイスは、それに対応するMatterブリッジド・ノード・デバイス・タイプのエンドポイントとしてMatterファブリックに追加されます。ただし、MatterをZigbeeに変換する仕組みや、その他のブリッジド・ネットワークに変換する仕組みの開発は開発者に委ねられています。ほとんどの場合、ブリッジでZigbeeデバイスをMatterに割り当てるだけでなく、元のグループ化を維持し、MatterデバイスをZigbeeネットワークに割り当てることも必要になります。下図の例のように、Zigbee対応照明スイッチでMatter対応電球を制御したい場合、双方のデバイスがキッチンに設置されていると、ブリッジの機能が大幅に複雑化します。
NXPは、Matter to Zigbeeブリッジのサンプル・ソフトウェアを提供し、開発を支援しています。まずは、 アプリケーション・コード・ハブでデモをご覧ください。
高度なZigbeeブリッジでは、デバイスのグループ化が維持され、ZigbeeデバイスがMatterデバイスと通信することができます。
NXPは開発者向けに、Matter to Zigbeeブリッジのサンプル・ソフトウェアを提供しています。このサンプル・ソフトウェアには必要なドキュメントがすべて付属し、オープンソースで提供されるため、開発者はエンド・アプリケーションに合わせてカスタマイズできます。さらにNXPは、Linuxベース設計とRTOSベース設計の両方に対応する幅広いハードウェア・ソリューションを提供しています。MCX W71マルチプロトコル・ワイヤレスMCUとRW612 Wi-Fi 6トライラジオMCUを組み合わせることで、RTOSベースのソフトウェア・ソリューションを使用しながら、Wi-Fi 6、Bluetooth LE、Thread、Zigbeeとの接続機能をブリッジに組み込むことができます。Linux設計向けには、NXPのi.MX 93アプリケーション・プロセッサにMCX W71およびIW612 Wi-Fi 6トライラジオ・ソリューションを組み合わせた、高性能のブリッジ・ソリューションを提供しています。
NXPのRW612とMCX W71が、RTOSベースのブリッジ・ソリューションを実現します。
i.MX 93にMCX W71およびIW612を組み合わせることで、高性能なLinuxベース・ブリッジが実現します。
Matterへの関心が高まり、導入が進む一方で、多数のスマートホーム・デバイスを既に利用しているユーザーは新しい規格の導入をためらうかもしれません。その背中を押してくれるのが、Matter to Zigbeeブリッジです。これによって既存のZigbeeデバイスに新しい機能が追加されるとともに、スマートホームに新しいMatterデバイスを導入しやすくなります。