NXPでは、システム統合を簡易化する手法に着目してきました。その一例が、既に何百万ものNXP製品搭載デバイスに採用されているNXP Platform Acceleratorの開発です。ここでは、NXP Platform Acceleratorが秘めている可能性とその開発の契機となった課題について説明し、NXPがどのようにIT業界の優れたアイデアやコンセプトを採り入れ、スマート・コネクテッド・デバイスに活用できるようにしてきたのかを詳しくご紹介します。その結果生まれたのが、開発を容易にし、現場でのアップデート、資産の資本化、ライフサイクル管理の改善を可能にするソフトウェアIPとその関連ツールです。
システム統合と互換性によりIoTの可能性を広げる
NXP Platform Acceleratorは、IoTデバイスやインダストリアル・デバイスの開発時に極めて重要となる、システム統合の課題を解決するために役立ちます。従来、リソースに制約のあるデバイス向けの組込みソフトウェアの開発には、多大な労力が必要でした。膨大な量のコーディングとデバッグを手作業で行わなくてはならず、急速に進化するテクノロジとの互換性を確保するにはかなりの苦労が伴いました。
独自のリアルタイム・オペレーティング・システム (RTOS) で動作するスマート ・サーモスタット、Linuxベースのプラットフォームで動作する照明制御システム、カスタムの組込みOSを使用するセキュリティ・カメラでは、それぞれ開発にどのような違いがあるでしょうか。この状況では、各デバイスが固有のソフトウェア・コンポーネント・セットを最適に機能させることが必要になってきます。多種多様なハードウェア・プラットフォームやソフトウェア・プラットフォームが存在するため、複数のデバイスがシームレスにデータをやりとりして共有し、同様のユーザー・エクスペリエンスを提供できる統一的エコシステムを構築することは困難です。
Platform Acceleratorが役立つのは、このような複雑さを解消しようとするときです。MicroEJのコンテナ化機能により、ソフトウェア・アプリケーションとその依存関係を仮想実行環境に整然とパッケージ化することで、多様な技術基盤全体で一貫性のあるパフォーマンスを実現できます。
NXPのエッジ・プロセッシング向けの包括的ソリューション
以前にご紹介したMICROEJ VEEは、40 KB未満のメモリでバイナリ・アプリケーションをパッケージ化し、さまざまな技術的状況でアプリケーションのシームレスな移植と再利用を可能にする、組込みソフトウェア・コンテナです。この画期的なテクノロジがNXP Platform Acceleratorの中核であり、これによってソフトウェア資産の再利用、移植性、最適化を重視した包括的なソリューションを作り上げることができました。
Platform Acceleratorでは、MCU (RTOS)、クロスオーバー (RTOS/Linux)、MPU (Linux) などのNXPのエッジ・プロセッシング製品群にソフトウェア・コンテナを実装できるため、プロセッサやIPのバリエーションを問わず、さまざまなプロセッサでNXP IPの機能を活用でき、一貫したソフトウェア・エクスペリエンスを実現します。さらに、Platform Acceleratorはメモリ・フットプリント、電力効率、全体的なパフォーマンスの改善に注力して開発されており、最初から最適な統合とパフォーマンスを実現できます。
NXP Platform Acceleratorが組込まれたアーキテクチャ:電子システムの総所有コストを最適化するソリューションです。
仮想デバイスおよびAndroid StudioのサポートのIoTエコシステムへの統合
Platform Acceleratorの最も画期的な特徴の1つが、IoTエコシステムを統合できることです。Platform AcceleratorはMICROEJ仮想実行環境 (VEE) をサポートしているため、Android Studio、IntelliJ、Gradleビルド・ツール、仮想デバイスなど、Android分野で使用されているものと同じ開発ツールを活用できます。この統一的なアプローチによって、IoTの真の可能性を引き出せるシームレスなエクスペリエンスを開発者に提供します。
NXPのMCU製品、クロスオーバー製品、MPU製品を活用してソフトウェア定義電子デバイスを実現するソリューション。
組込みデバイスでのマイクロサービスのアップグレード、更新、展開
NXP Platform Acceleratorによって、マイクロサービスとダウンロード可能アプリケーションの更新、アップグレード、展開が容易になるため、最新のコネクテッド・デバイスに求められる重要な要件を満たしつつ、長期製品寿命と適合性を確保できます。NXP Platform Acceleratorのアーキテクチャは軽量かつセキュリティ性に優れ、最新の機能やパッチをダウンタイムや中断なしにシームレスに適用できます。
MICROEJ VEEは、隔離された環境で複数のアプリケーションを実行することでデバイスのセキュリティをより一層強化するとともに、マイクロサービスの展開を容易にします。このアプローチにより、アプリケーション開発のさらなるモジュール化と拡張性の向上が実現します。加えて、NXP Platform Acceleratorはダウンロード可能アプリケーションをサポートしているため、エンド・ユーザーがデバイス・エクスペリエンスをカスタマイズできる一方、メーカーにとっても製品販売後の顧客エンゲージメントが可能となります。
NXPは新しい機能やサービスを容易に組み込むことができるダイナミックなエコシステムの形成を推進しており、デバイス・メーカーは製品を継続的に進化させ、競争力を維持し、絶えず変化し続ける市場の需要を満たすことができます。
市場トレンドの大局を変える
Platform Acceleratorは、次のような多様な分野や用途における幅広い市場トレンドを変化させる役割を担います。
柔軟なスマート・グリッドとスマート・ファクトリ
アプリケーションやマイクロサービスを通じて継続的な進化を促進し、PaaS(サービスとしての製品)への移行を促すことで、適応性に優れたスマート・グリッドやスマート・ファクトリを実現させます。
進化したスマートホーム
商品開発やMatterなどの革新的機能の統合を促進し、製品の省電力化と低コスト化によって二酸化炭素排出量の削減に貢献します。
高性能のウェアラブル
機能が豊富で低消費電力かつコスト効率に優れた革新的なウェアラブルの開発を可能にし、消費者にとっての利便性を新たなレベルに引き上げます。
ソフトウェア定義の世界への移行
お客様、OEM、エンドユーザーが機能をカスタマイズして適応させることができるソフトウェア定義時代の到来を後押しし、限りない可能性を広げます。
メーカー/OEM:
- 生産性の向上:チームに新たな人材を加えなくても製品開発の幅を広げることができます
- イノベーションの活性化:製品の製造やカスタマイズを機敏に行うことで、的確な市場セグメントに対応できます
- サービス提供の拡大:デバイス上でサービスを直接提供することで、エンドユーザーへのサービスを強化できます
エンドユーザー:
- 最先端のテクノロジーの利用:民生用途やスマートホーム用途に開発された、さまざまな機能を備えながら低コストの製品を利用できます
- 生活を豊かにする最新機能: アプリケーションやサービスを通じて適応し、成長し、進化する製品を利用して、日常生活を豊かにできます
NXP Platform Acceleratorでイノベーションを解き放つ
NXPとMicroEJはCES 2024にて、MPU(Androidベース)とMCU(FreeRTOSベース)の両方のエッジ・プロセッシングを実行できるスケーラブルなサーモスタット ・プラットフォームのデモを披露しました。このサーモスタットは同じバイナリ・アプリケーション・コードを実行して、同じUIを表示し、Matterを介してスマートホームと通信を行います。
Platform Acceleratorは、IoT業界の組込み系開発者と製品設計のレベルを引き上げます。お客様はNXPと共にNXP Platform Acceleratorの可能性を探求することで、かつてないスピード感で製品の製造、設計、イノベーション、市場投入を実現できます。