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糖尿病患者は常にバランスに配慮した生活を送っています。血糖値は、食物、活動、ストレス、病気、環境条件など多くの要因の影響を受け、1日を通して変化します。多くの患者にとって、血糖値の安定を維持するためには、炭水化物の量を計算し、測定値を確認し、いつ、どのくらいの量のインスリンを注射するかを決定するなど、頻繁な計算作業が必要となります。小さな計算ミスでさえ、緊急事態を招くおそれがあります。
何百万人もの人々が毎日インスリンに依存していますが、ほとんどの人は現在でも、糖尿病向けの専門テクノロジを利用することなくそれを管理しています。米国では、170万人が1型糖尿病を患っていますが、そのうちインスリンポンプを使用しているのは約40%のみです。基礎-追加 (Basal-Bolus) インスリン療法を受けている2型糖尿病患者の場合、使用率はさらに低く、約5%です¹。多くの人にとって、ケアは継続的な注意を必要とする手動のシステムに依存しています。インスリン療法の必要性が高まるにつれて、従来型のアプローチの限界がますます明らかになっています。
InsuletとNXPは20年以上にわたり、糖尿病管理の推進のために協力してきました。NXPは、Insuletのチップ・サプライヤから信頼できるパートナーへと進化しています。この協力関係では、Insuletが持つこの分野の専門知識とNXPのセキュアな低消費電力 コネクティビティおよびパワー・マネジメント・テクノロジを活用し、InsuletのOmnipod®によるインテリジェントなインスリン送達をサポートしています。Omnipodは、糖尿病管理の重要な部分を自動化するチューブレスでウェアラブルなインスリン送達システムです。
この連携は、糖尿病ケアの毎日の負担を軽減することを目的としています。自動化されたインスリン送達をサポートすることで、より一貫した管理が可能になり、患者の日常生活の自由度が高まります。
インスリン送達では、1日の中で分刻みの正確さが必要となります。患者は、通勤、運動、旅行などの活動中や睡眠中にもポンプに依存しています。このシステムには、ダウンタイムはありません。常に高い信頼性で動作する必要があります。無線通信も安定し、セキュリティも常に保護されていなければなりません。
InsuletのOmnipodプラットフォームは、複数世代にわたって、糖尿病管理における日常的な手順の多くを着実に支援してきました。最新の世代であるOmnipod 5では、システムが新しいレベルに移行し、インスリン送達そのものを自動化します。
この進歩により、新たに技術的な複雑さが一段階高まります。システムは、血糖値データを継続的に受信し、数分ごとに投与の決定を行い、条件が変化したときには予測的に応答する必要があります。これらすべてが、小さなバッテリーで数日間動作するよう設計された1個のコンパクトなデバイス内で行われます。
閉ループの自動インスリン投与をサポートするために、Omnipod 5には以下のものが必要となります。
そして、これらすべての機能を、FDAおよびグローバルな医療基準に準拠した、コンパクトでウェアラブルかつ費用対効果の高いデバイスに実装する必要があります。
Insuletの要件を満たすには、コネクティビティ、プロセッシング、セキュリティ、電力効率を1つの強力なプラットフォームに収める、緊密に統合されたシステム・アプローチが求められます。
システムレベルの要件を満たすために、InsuletはNXPと緊密に連携し、Omnipod 5に合わせたセキュアで低消費電力のエッジ・アーキテクチャを設計しました。
Omnipod 5は、ユーザーの皮膚に直接装着し、速効型インスリンを投与する小型のチューブレス・ポンプです。血糖値の測定自体は行いませんが、自動投与アルゴリズムを通じて持続血糖測定器(Continuous Glucose Monitor:CGM)からの測定値に応答します。ユーザーは、米国のスマートフォン・アプリまたはInsuletが提供するコントローラを介してシステムと直接やり取りできます。
小型フットプリントの超低消費電力Bluetooth Low Energy 5.3ソリューション。NHS52S04デバイスは、マイクロコントローラとフラッシュを搭載した高集積、超低消費電力のシングルチップBluetooth® Low Energy 5.3ワイヤレス・トランシーバです。
Insuletでは、重要なシステムの課題に対処するために、Arm® Cortex®-M33マイクロコントローラを内蔵した超低消費電力Bluetooth® Low Energy 5.3ソリューションであるNXPのNHS52S04を選択しました。
NXPはまた、バッテリーの性能を管理し、ポンプを作動させ、機能安全要件をサポートするよう設計されたカスタムのパワー・マネジメントASICも提供しました。
これらのテクノロジにより、Insuletは最新のウェアラブル・システムに必要な精度、効率、信頼性を備えた自動インスリン投与療法を実現することができます。
NXPのコミットメントと継続的なパートナーシップを通じて、InsuletはOmnipod 5のビジョンを実現しています。
臨床試験によれば、Omnipod 5は1日に複数回の注射を行う場合と比較して、より安定した血糖値制御とHbA1cレベルの改善を達成するのに役立つことが示されています²。また、手動による管理が少なく、ストレスが軽減されることで、患者の生活の質も向上しています³。Omnipodのようなハイブリッド閉ループ・システムは、夜間低血糖を減らしながら目標範囲内時間 (time-in-range) を増加させることが示されています ³ 。
それにより、日常的な使用において、いくつもの利点が得られます。
今日、Omnipod 5は米国で最も多く処方されている自動インスリン送達システムです⁴。世界中で60万人以上の人々が毎日Omnipod製品を使用しています。
InsuletとNXPは、長年にわたって協力関係を築いてきました。Insuletの最初の製品リリース以来、NXPはOmnipodプラットフォームをサポートする10億個以上のチップを出荷してきました。これは、信頼性、セキュリティ、パフォーマンスに重点を置いた何十年にもわたる連携のたまものです。
この協力関係は、今後も続いていきます。将来の世代のOmnipodは、より適応力の高いアルゴリズムを組み込み、Omnipod本体とCGM、スマートフォンとの間でさらに緊密な調整を行います。
目標は引き続きシンプルなままです。より多くのインテリジェンスをシステムに移行して、糖尿病患者が状態の管理に費やす時間を減らし、より多くの時間を生活のために費やせるようにすることです。
出典
¹ Insuletが現在展開している市場に基づく総獲得可能市場(Total Addressable Market:TAM)。内部推定に基づく価格を反映しており、市場によって異なります
² 1型糖尿病の小児および成人患者を対象にカスタマイズ可能な血糖管理目標を用いた、チューブレス装着型自動インスリン送達システムの多施設臨床試験
⁴ Insuletのレポート:2024年全体の売上高が前年比22%増、2024年第4四半期の売上高が同17%増
マサチューセッツ州に本社を置くInsulet Corporation (NASDAQ: PODD) は、Omnipod製品プラットフォームを通じて糖尿病やその他の病気を患った人々の生活を簡素化することに特化した革新的な医療機器会社です。Omnipodインスリン管理システムは、従来のインスリン送達方法に代わる独自の方法を提供します。シンプルでウェアラブルなデザインのチューブレス使い捨てポッドによって、針を見たり使用したりする必要なしに、最大3日間ノンストップでのインスリン送達を実現します。Insuletの主力イノベーションであるOmnipod 5自動インスリン送達システムは、持続血糖測定器と統合されることで、毎日複数回の注射なしで血糖値を管理し、フィンガースティックを使用せず、互換性のある個人用スマートフォンまたはOmnipod 5コントローラで制御できます。Insuletはまた、Omnipodの独自の設計を活かし、他の治療領域でも非インスリン皮下注射薬を投与できるように、Omnipodテクノロジ・プラットフォームの調整を行っています。
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Director of Engineering and Marketing, ISEM Healthcare
Pierluigi Gardella is an experienced executive with over 20 years in the semiconductor industry, specializing in IC and medical application technology. He led a global medical business unit for six years, driving innovation in ultrasound imaging, vital signs monitoring, molecular diagnostics, and ASIC/ASSP design. Holding a Master’s in Electronics & Telecommunication from Politecnico di Milano, he began his career in 3D and 2D graphics hardware IC development. In 2023, he joined NXP as Director of Engineering and Marketing for Healthcare within the Industrial and IoT Systems organization.