i.MXプロセッサに対するDDR (Double Data Rate) メモリの選択は、組込みシステムの設計者にとって複雑な課題となっています。スペックに加えて、入手可能性、規格への準拠、ベンダーの安定性、ライフサイクル全体のサポートといった要素が極めて重要となります。NXPのサポートによって適切なメモリを選択することで、長期的な成功を実現するためのよりスムーズな開発プロセスを確保できます。
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不確実な環境でのDDRメモリの決定
AIや高性能コンピューティングが先進的メモリ・テクノロジの需要を押し上げている中、NXPは、提供するプラットフォーム全体でのダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ (DRAM) の使用を継続的に最適化し、性能、コスト、長期的な入手可能性のバランスを図っています。次世代のシステムは、より高帯域幅、より高密度へと移行していますが、NXPの車載およびインダストリアル&IoTソリューションの多くは、信頼性と長期のライフサイクル・サポートのために、実績のあるLPDDR4 (Low-Power Double Data Rate 4) およびLPDDR4X (Low-Power Double Data Rate 4X) テクノロジに依拠しています。
LPDDR4およびLPDDR4xメモリ・テクノロジは、i.MXアプリケーション・プロセッサで構築される組込み設計に不可欠であり、システムのコスト、消費電力、処理性能、OSの互換性、およびタイムラインに影響を与えます。LPDDR4xは、動作電圧が低減され、電力効率が向上しており、バッテリー駆動のアプリケーションに最適です。一方、LPDDR4も、コスト面および豊富な構成オプションから、産業用および商用での実装における現実的な選択肢であり続けています。スペースおよびコスト面での制約に対処するために、NXPでは、認定済みのコンパクトなLPDDR4/4x x16デバイスを100ボールの電子素子技術連合評議会 (JEDEC) パッケージで取り揃えており、i.MX 93およびi.MX 91のフル・パフォーマンスを小型フットプリントで実現するとともに、部品表 (BoM) コストを削減しています。
メモリ要件および構成は、アプリケーションやユース・ケースによって異なります。たとえば、エッジAIやディスプレイ中心のアプリケーションでは一般的に、より高いメモリ帯域幅とより大きな容量が必要です。それに加えて、産業用および車載用の実装では、高温での動作と少なくとも10年以上にわたるコンポーネントの供給が求められます。その一方で、民生用製品は、コスト面で厳しい制約があり、ユニットあたりの限界利益が市場の競争力を決定する傾向があります。
NXPのi.MX 6、i.MX 7、i.MX 8Mシステム・オン・チップ (SoC) は、性能が最優先されないアプリケーション向けの現実的な選択肢であり続けている、従来のDDR3L (Double Data Rate 3 Low Voltage) メモリをサポートしています。DDR3Lは一般的に、DDR4 (Double Data Rate 4th Generation) と比較して価格や供給が安定しているため、コスト重視で長期ライフサイクルの設計に最適です。その成熟度と広範なエコシステム・サポートは、予測可能な調達と統合にも寄与しています。
NXPは、LPDDR4などの複数のDDRインターフェースもサポートするS32車載プロセッシング・プラットフォーム製品や、LPDDR5/5xが搭載される最新のS32N車載超統合プロセッサを提供しています。
すべての要件を満たすメモリは存在しない
最適なインターフェースやメモリを選択する際には、以下のようなさまざまな要素が考慮されます。
- 性能:より低レイテンシ/より高帯域幅
- 密度:より大容量のストレージの必要性
- 消費電力 (IDD):低消費電力
- コスト:より低価格
- セキュリティ:よりセキュアな耐攻撃性
- 機能安全および高耐久性誤り訂正符号 (ECC)
- 信頼性:品質向上
- デザインインの複雑さ:よりシンプルなPCB設計
- フットプリント:より小型のパッケージ・サイズ
- 入手可能性:より短いリード・タイム
システムの設計者は、確実に最適なメモリを選択するために、製品におけるさまざまな要件のバランスを図る必要があります。
LPDDR5 (Low Power Double Data Rate 5th Generation):高性能、高効率、NXPによる献身的なサポート
LPDDR5は、最大6.4 GT/sのデータ・レート、エネルギー効率の向上、インラインECCや暗号化などによる優れた信頼性を特徴とし、低消費電力メモリ・テクノロジの飛躍的な進歩を決定づけています。これらの利点により、LPDDR5は、AI推論、車載システム、産業用エッジ・コンピューティングなど、高性能な組込みアプリケーションに最適です。
6.4 GT/sのデータ・レートを持つLPDDR5は、より高い帯域幅とより低いレイテンシを実現し、より高速での起動、よりスムーズなマルチタスク処理、およびバッテリー駆動および熱的に制約のある環境に不可欠な消費電力の削減を可能にします。LPDDR5は、メモリ・ベンダーによる複数年に及ぶサポートや最小限の製品離脱率を背景に、長期供給が重視される設計に特に適しており、ミッションクリティカルなシステムにとって将来性が確保された選択肢となっています。
NXPのi.MX 95および94ファミリは、最大x32幅のLPDDR5構成をサポートするとともに、ダイレクト・リンクECCプロトコル (DLEP)、インラインECC、暗号化の機能を備えており、堅牢なデータ完全性とセキュリティを確保します。性能が重視され、信頼性に妥協が許されない場合、NXPによるLPDDR5のサポートは、速度のみならず安心感ももたらします。現在、i.MX 95および94プロセッサは評価のために利用可能であり、DLEPでの新たなベンチマークを打ち立てています。これは、競合他社からはまったく提供されていない能力です。
NXPのメモリ統合サポートのフレームワーク
NXPでは、メモリのサポートについて、コンポーネントの選択に関わる単独のタスクとしてではなく、i.MXのソリューション全体にとって不可欠な部分と見なしています。NXPは、連携によるメモリ統合アプローチを採用しており、それによりメモリの選択とお客様固有の実装におけるニーズとの整合性を確保しています。さらに、新たに登場したエッジAIアプリケーションでは、より高いメモリ帯域幅と大容量が必要となりますが、NXPは、KinaraのAIアクセラレーションをi.MXプラットフォームに統合した新しいソリューションにより、この課題に対応しています。
部品表 (BoM) コスト削減のために最適化されたソフトウェア・ディストリビューション
ハードウェアに加えて、NXPは、お客様のオペレーティング・システムとアプリケーション・ソフトウェアでのメモリ容量要件を評価するとともに、市場で優位に立つためのコスト目標を設定することで、ソフトウェアの効率を最適化しています。ただし、メモリ構成でのニーズはユース・ケースによって異なります。たとえば、Androidのシステムでは、ボード・サポート・パッケージ (BSP) の帯域幅と容量の要件を満たすために、少なくとも4 GBの構成が必要です。
NXPの軽量なYoctoベースのLinuxディストリビューションは、最小限のメモリ・フットプリントで設計可能であり、RAMの要件を軽減し、全体的なBoMコストを削減できます。このアプローチは、お客様が性能に妥協することなくコスト削減を実現できるようにし、NXPのソリューションをリソースに制約のある設計にとって最適なものにします。たとえば、i.MX 6ULLファミリは、NXPが提供する適切なサイズのYoctoソフトウェア・ディストリビューションを活用しながら低密度のDDR3Lに適合する、ローエンドのLinuxアプリケーションをサポートしています。さらに、NXPは、温度範囲や機械的ストレスへの耐性など、産業用途での制約を評価すると同時に、地政学的な要因や長期的な入手可能性要件に照らしたサプライ・チェーン面の要素についても考慮しています。
メモリ・ベンダー・イニシアチブ:広範なコンポーネント検証
NXPのメモリ・マルチベンダー・イニシアチブ (MVI) は、数多くのメモリ・サプライヤに広範なJEDEC特性と検証を提供します。MVIは、機能面の検証のみならず、さまざまな動作条件下での詳細な電気的特性、シグナル・インテグリティの評価、およびストレス・テストも提供します。NXPは、i.MXプロセッサを使用した特定の設計向けに、この検証プロセスに合格した検証済みのメモリ部品とともに、各ベンダーのコンポーネントに合わせてカスタマイズされたメモリ・インターフェース初期化コードをお客様に提供しています。
NXPは、世界トップクラスのDDR i.MX構成ツールを無償で提供し、メモリに仮想アイ・ダイアグラムの視覚出力を事前構成することなどにより、ソリューションの迅速な市場投入を可能にしています。また、NXPは、複数のDRAM構成で機能する簡素化された一様な初期化フローを導入しており、これにより複雑さを軽減し、お客様によるシステムの立ち上げを加速させます。MVIプログラムのドキュメントでは、信頼性の高い動作を実現するために設計チームが理解すべき、異なるベンダー間での構成のバリエーションについて記載しています。たとえば、特定のベンダーでは、シグナル・インテグリティを最適化するために独自のオンダイ終端 (ODT) 構成が必要です。別のベンダーでは、リフレッシュ・タイミング要件やパワーダウン・モード特性が異なっている場合もあります。NXPは、MVIの一環として、複数のサプライヤのLPDDR5、LPDDR4/4x、DDR4、DDR3Lコンポーネントを積極的に検証し、事前認証済みメモリの選択肢と、シームレスなプラグ&プレイの信頼性と統合のためのカスタマイズされた初期化コードをお客様に提供しています。たとえば、さまざまな構成にわたる10社以上のi.MX 93向けメモリ・ベンダー について検証済みです。
長期供給プログラム:持続可能なコンポーネント調達
産業および車載分野において、コンポーネントの入手可能性を広げることは、利便性のためではなく、事業上極めて重要な要件となっています。たとえば、自動車の単一のコンポーネントを置き替えるための再認証に係る費用は、数十万ドルを超えることがあります。
NXPの長期製品供給プログラムは、i.MXプロセッサおよび検証済みメモリ・サブシステムに対して10~15年間のサポートを提供します。このプログラムでは、長期にわたる安定供給や、再設計が必要となりうる製品の変更を最小限に抑えることに注力しているメモリ・ベンダーと連携しています。i.MX SoCファミリは、LPDDR4、LPDDR4x、LPDDR5を搭載した最新のi.MX 9ファミリを含め、NXPの長期製品供給プログラムの対象です。コンポーネントに変更が生じる場合、NXPは代替案を検証し、混乱を最小限に抑えるための緩和策を通じてお客様をサポートします。認証データへのアクセスやベンダーによる長期製品供給への取り組みは、お客様が十分な情報に基づいて調達の決定を下すのに役立ちます。
サプライ・チェーン・インテリジェンスとリスク軽減
メモリ市場の情勢は、ベンダーの合併、製造能力の変化、および国際貿易に影響を与える政策転換により、急激に変化しています。米国による関税免除措置の変更により、特に一部のサプライヤからの特定のメモリ・コンポーネントの供給が妨げられています。これらの規制の変更により、お客様は、プロジェクトのスケジュールや予算とのバランスを取りながら、ベンダーとの関係性や調達アプローチを再検討することを強いられています。
変動の激しい今日の国際市場において、メモリ調達先の多角化はレジリエンスを高めるために不可欠となっています。それに応じて、NXPでは、起こりうる混乱を予測しながらDRAMベンダーの供給状況と価格をモニタリングすることで、お客様による継続的な調達を支援する積極的なアプローチを取っています。たとえば、仮にベンダーが買収された場合、製品ラインナップが統合されて、SKUが排除される可能性があります。別の考えられる状況として、製造施設の問題によって一時的な不足が生じたり、輸出管理の変更によって特定のサプライヤから特定のお客様または地域への供給が制限されたりする可能性もあります。
NXPはこのような市場動向をモニタリングし、それらに関する知見をお客様に提供します。供給に制約が生じた場合、NXPは、技術仕様を満たす検証済みの代替サプライヤを特定できます。コスト削減が必要になった場合、NXPは、サプライヤとの関係性や市場におけるノウハウにより、性能や品質を犠牲にすることのない代替手段をお客様に提供します。また、NXPは、メモリ・ベンダーとの確立された関係性ならびにNXPのパートナーを活用することで、メモリ・ベンダーによる供給と価格の問題に直面しているお客様を支援します。変動の激しい今日の国際情勢において、NXPは、本番環境の構築前に十分な余裕をもって発注を行うこと、および少なくともメモリ・コンポーネントの二社購買戦略を導入することを強く推奨します。これらの措置は、供給のリスクを軽減し、極めて重要なプログラムの継続性を確保するのに役立ちます。
NXPとともに、自信を持って設計を
i.MXを使用した設計でメモリを選択する際には、コスト、サプライ・チェーンのレジリエンス、コンポーネントの長期供給に関する現実的な考慮事項に基づき、技術的要件との間でバランスを図る必要があります。NXPは、i.MXプロセッサとDDRメモリを統合システム・ソリューションに不可欠なコンポーネントとして扱うことで、お客様がより多くの情報に基づいて決定を行えるように、技術的検証、サプライヤとのパートナーシップ、およびマーケット・インテリジェンスを提供します。
NXPは、コスト重視の設計向けのDDR3L、低消費電力アプリケーション向けのLPDDR4/LPDDR4x、および次世代の高性能を実現するLPDDR5のサポートを、10~15年間の長期製品供給プログラム、MVI、軽量なYoctoディストリビューションと組み合わせて提供することで、妥協ではなく、自信を促します。お客様は、NXPによる世界トップクラスのメモリ検証およびイネーブルメントを通じて、i.MX SoCと適切なメモリを組み合わせることで、開発に係る時間とコストを削減し、自社のアプリケーションを競合他社と差別化することができます。
成熟したメモリ・ノードを維持することはますます困難になりつつありますが、NXPはこれからもお客様のために継続性を確保しながら、チップレットや異種統合などのスケーラブルなアーキテクチャに加え、安定性を損なうことなく将来のイノベーションを実現するパッケージ・ソリューションを探求し続けます。他社では短期的な対策を提供するような場合であっても、NXPは、お客様のロードマップに合わせてスケールを調整し、サプライ・チェーンの変動性からお客様を保護するレジリエントな長期的ソリューションを提供します。
| 特長 |
DDR3L |
DDR4 |
LPDDR4/4x |
LPDDR5 |
| 現在の相対コスト |
最も低い |
高い |
中程度 |
中~高程度 |
| 性能 |
最大1866 MT/s |
最大3200 MT/s |
最大4266 MT/s |
最大6400 MT/s |
| 電力 |
中程度 |
やや低い |
非常に低い |
最も低い |
| サポートされる密度 |
低 |
中 |
高 |
最高 |
| 信頼性 / ECC |
標準 |
標準 |
インライン |
アドバンスト |
| 長期的な入手可能性 |
持続 |
減少 |
強力 |
新たなサポート |
| NXPによるサポート |
あり |
あり |
あり |
あり |
NXPのi.MXプロセッサおよびメモリ・ベンダー・イニシアチブの詳細については、nxp.com/imxをご覧ください。
公開されているメモリ互換性ガイドへのリンク