わずか数サイクルで複雑な三角関数を処理し、ソフトウェアのオーバーヘッドを大幅に削減できるモーター制御設計が可能だとしたら、どうでしょうか。それこそ、NXPのMCX A34ミックスド・シグナル・マイクロコントローラが実現するソリューションです。
MCX A34ファミリの概要
MCX A34ファミリは、最大180 MHzで動作するArm®Cortex®-M33コアと豊富なオンチップ・メモリ、さらに強力な演算処理アクセラレーション、充実したアナログ・ペリフェラル、先進的なモーター制御サブシステムを組み合わせることで、優れた精度と効率性を備えたモーター・ドライブ・ソリューションを実現します。シンプル化を目的として設計されており、部品表 (BOM) コストの削減、制御ループの高速化、開発の合理化に貢献します。
MCX A34がモーター制御を得意とする理由
先進的なモーター・コントローラの設計では、高速制御ループ、正確なセンシング、信頼性の高い通信を実現するために、多くの場合、複数のチップを複雑に組み合わせる必要があります。それこそ、MCX A34ファミリが最適な分野であり、そのような問題点を正面から解決できる機能を搭載しています。
MCX A34に搭載されたMAU (Math Acceleration Unit) は、Sin/Cos/Tan/Sqrtとその逆関数をCMSIS-DSP (Common Microcontroller Software Interface Standard-Digital Signal Processing) の最大17倍の速度で実行できるため、CPUサイクルの負担を増やすことなく、フィールド指向制御 (FOC) ループを短縮できます。多数の16ビット・アナログ・デジタル・コンバータ (ADC) と演算増幅器(オペアンプ)、さらに1基の12ビット・デジタル・アナログ・コンバータ (DAC) によって外部アナログ・フロント・エンドが不要になり、コストとノイズが低減されます。また、MCX A34にはSmartDMA、高速タイマ、インダストリアル機器向け通信機能が統合されているため、効率性の高いモーター・ドライブの設計に対応するワンチップ・ソリューションとして利用できます。
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MCX A34が最適な用途
MCX A34は、インダストリアル&IoTの現場で使用される機械を想定して設計されています。電力&エネルギー分野では、HVAC制御、スマート・サーキット・ブレーカ、太陽電池インバーターの用途に適しており、正確な電流検出と高速制御ループによってコンプレッサの騒音を軽減し、効率性を高めます。ファクトリ・オートメーション機器、たとえばウォータ・ポンプ、ACモーター・ドライブ、プロセス制御機器などについては、内蔵のADC、パルス幅変調 (PWM)、直交デコーダが役立ち、複数モーターの同期処理が外部デジタル・シグナル・プロセッサ (DSP) なしで可能になります。
ホーム&ビルディング用途(家電用モーター、電磁調理器、ビル制御、ファン)については、オペアンプ、DAC、耐タンパ・セキュリティの組み合わせにより、設計をシンプル化できます。医療用ポンプ、電動工具、ドローンなどの一般的な組込み機器でも、MCX A34の高解像度アナログ/演算アクセラレーション機能を活用することで、パフォーマンスの安定化と長時間のバッテリ駆動を実現できます。
また、MCX A34はMCUXpresso開発者エクスペリエンスによって完全にサポートされるため、このようなアプリケーションの開発に携わるエンジニアは早期に開発に着手するために必要なツールと柔軟性が得られ、安心して規模を拡大することができます。
MCX A34:内部の詳細
内部の構成を見てみましょう。MCX A34ファミリのコンポーネントはこのようになっています。
MCX A34ファミリのブロック図。 ブロック図をダウンロードすると、拡大図がご覧いただけます。
MCX A34の主な特長:
- Arm Cortex-M33コア、最大180 MHz、FPU/DSP搭載
- 最大1024 KBのフラッシュと256 KBのスタティック・ランダム・アクセス・メモリ (SRAM)、誤り訂正符号 (ECC) 対応
- 三角関数/逆関数演算を高速化するMAU
- 16ビットADC (3.2 Msps) x 4、オペアンプ x 4、12ビットDAC
- 柔軟なパルス幅変調器 (FlexPWM)、拡張直交デコーダ (eQDC)、および/またはロジック反転 (AOI) を備えた、先進的なモーター制御サブシステム
- 柔軟なデータ処理と制御を実現するSmartDMAコプロセッサ
- 改ざん検知とセキュア・ブートによるインダストリアル・グレードのセキュリティ
- 豊富な接続性:ユニバーサル非同期レシーバ・トランスミッタ (UART) 最大6個、集積回路 (I²C) 4個、シリアル・ペリフェラル・インターフェース (SPI) 2個、コントローラ・エリア・ネットワーク・フレキシブル・データ・レート (CAN FD)
- MCUXpresso開発者エクスペリエンスおよびFRDMエコシステムによるサポート
内部の差別化要因:MCX A34が競合製品よりも優れている点
MCX A34が競合製品よりも優れているのは、モーター・ドライブの統合に対する総合的なアプローチです。ほとんどのマイクロコントローラ・ユニット (MCU) では、アナログの忠実度、演算性能、コストの間でトレードオフが避けられませんが、MCX A34なら、いずれも尊重できます。
MAUによって三角関数処理のサイクル数が大幅に減る一方、統合された3.2 Msps ADCとオペアンプによって、クリーンで同期されたセンシングを1つのパッケージ内で実現できます。SmartDMAと豊富なシリアル・ポートにより、コアに負担をかけずにデータをストリーミングできます。さらに、堅牢なセキュリティ、包括的なモーター制御タイマ、拡張性の高いメモリ・フットプリントを備え、高効率、デュアル・モーター、力率補正 (PFC) の各アプリケーションに適したデバイスを設計できます。
開発環境:充実し、使いやすい
組込み機器の開発を合理化するMCUXpressoは、柔軟なワークフローをサポートし、プロジェクトに合わせて規模を調整できます。開発者はMCUXpressoのソフトウェアとツールを使用して、モーター制御アプリケーションを迅速に構築してテストし、導入することができます。
MCX A34向けのMCUXpressoソフトウェア開発キット (SDK) には、最適化されたペリフェラル・ドライバ、ミドルウェア、ユーティリティ、サンプル・プロジェクトが含まれています。次のような幅広い統合開発環境 (IDE) をサポートしています。
- MCUXpresso for Visual Studio Code (VS Code):ソフトウェア開発キット (SDK) がシームレスに統合された、軽量で先進的な開発環境
- MCUXpresso IDE:デバッグとトレースの機能が統合された、フル機能のEclipseベースIDE
- IAR Embedded Workbench:先進的なコード最適化に対応し、安全性の認定を受けたツールチェーン
- Arm® Keil® MDK:幅広いミドルウェアをサポートする高性能コンパイラ
開発を始める準備ができたら、アプリケーション・コード・ハブ (ACH) をご覧ください。開発作業に役立つコード・スニペットとデモが200種類以上用意されており、試行錯誤の必要性がなくなります。
FRDM-MCXA346開発ボード。
MCX A34用評価ボード
FRDM-MCXA346開発ボードで、新しいモーター制御プロジェクトを一気に進めましょう。MCX A34の強力なペリフェラルやサブシステムにフル・アクセスできる、コスト効率に優れた使いやすいプラットフォームです。
このプラットフォームの主な特長:
- 最大180 MHz駆動のArm Cortex-M33を搭載したMCX A34
- MAU、SmartDMA、オペアンプ、ADC、DACを統合
- Arduino互換ヘッダ、USB-Cプログラミング、オンボード・デバッグ
- 拡張ボード・ハブを使用した拡張ボードの接続をサポート
MCX A34の利点
要約すると、MCX A34ファミリには次のような独自の機能が組み合わされています。
- 三角関数/逆関数演算を従来の17倍の速度で実行でき、高速な応答制御を実現
- 高分解能アナログ処理により、シンプルかつ正確なセンシングを実現
- インテリジェントなデータ移動によってCPUの負担を軽減
- 最大1024 KBのフラッシュと256 KBのスタティック・ランダム・アクセス・メモリ (SRAM) という、大容量のメモリ
- 組込みのセキュリティ機能と柔軟なインダストリアル・レベルの接続性
スマート性能の高いHVAC、次世代家電、ファクトリ・オートメーション・システムなど、どのような機器を開発する場合でも、MCX A34は開発作業をシンプル化しながら、最大限のパフォーマンスを実現するために役立ちます。