Connectivity Standards Alliance (CSA) が発表したMatter 1.4.2は、Matter規格を大きく進化させる内容となっています。今回のアップデートはセキュリティ、スケーラビリティ、ユーザー・エクスペリエンスの強化を中心とし、Wi-Fiコミッショニングなどの重要機能が追加されています。このような新機能は、スマートホームの効率性を高め、直感的に利用できるようにすることを目的としています。
Matterが最初にリリースされた2022年11月以来、CSAは信頼性が高く利用しやすいスマートホームの実現に向けて、その進化と強化に取り組んできました。最新リリースとなるMatter 1.4.2では、セキュリティとスケーラビリティの改善を目的として、以下の表で簡単に紹介するいくつかの機能強化が加えられました。
| 特長 |
説明 |
| Wi-Fiのみでのコミッショニング |
他の機能でBluetooth LEを使用しない場合に、Wi-Fiを使用したシンプルなセットアップを可能にします |
| 高度なセキュリティ強化 |
ベンダーID検証、アクセス制限リスト (ARL)、証明書失効リスト (CRL) の各機能が提供されます |
| シーン管理の改善 |
複数のMatterデバイスでコントローラによりシーンを定義してアクティブ化する方法を標準化しました |
| 効率的なネットワーク通信(レポートの効率化) |
デバイスが属性変更を報告するタイミングと頻度を定義するデータ・モデルを最適化することで、ネットワークの使用率を減らし、バッテリ寿命を延ばします |
| ノード再構成の標準化 |
新機能が自動的に使用できるようになる方法を提供します |
| 一貫したエンドポイント・ユニークID |
各エンドポイントにAdmin非依存の永続的なIDを付与することで、デバイスを再構成したときやMatter接続を更新したときにデバイスの重複や混同が生じることを防止します |
| ロボット掃除機 (RVC) の動作標準化 |
想定される動作、特にシーケンシャル・コマンドが関わる動作を標準化することで、動作の予測可能性を高め、信頼性の高い掃除パフォーマンスを実現します |
| ネットワーク・インフラ要件の強化 |
ルータやデバイス内のアクセス・ポイントなどのネットワーク・インフラストラクチャ・マネージャ (NIM) の要件が更新され、Threadボーダ・ルータとWi-Fiアクセス・ポイントでそれをサポートすることが必要になります |
| 認証プロセスの改善 |
テスト計画、スクリプト、ツールが更新されたことで、テストの自動化がさらに進み、曖昧さが最小限に抑えられ、認証プロセスが効率化されます |
今回の最新リリースの重要な機能強化の1つであるWi-Fiコミッショニングは、Matterの新機能です。従来、MatterデバイスをMatterネットワークにコミッショニングする手段はBluetooth Low Energy (LE) のみに限られていました。Bluetooth LEは幅広いデバイス・タイプに対応しますが、アプリケーション自体にBluetooth LEが不要な場合には問題が生じ、コストと複雑さの増加につながります。たとえば、洗濯機や乾燥機などの大型家電にはインターネットに接続するためにWi-Fi機能が実装される場合がありますが、Bluetooth LEを実装する必要性のあるユース・ケースは見当たりません。また、デバイス製造メーカーは、Wi-Fiのみに対応する家庭用デバイスに簡単なファームウェア・アップデートでMatterを導入することで、新しい機能を追加することもできます。
このデモでは、Matter 1.4.2と、その新機能であるWi-Fiのみのコミッショニングについて紹介しています。Bluetooth LEを必要としないデバイス・アプリケーションで、コストを抑えつつ複雑さを軽減することができます。
Wi-Fiを使ったMatterデバイスのオンボーディングを可能にするために、CSA Matterワーキング・グループとWi-Fi Allianceが協力し、このようなユース・ケースや要件に対応するソリューションを提供しました。Wi-Fi規格の新機能であるUnsynchronized Service Discoveryは、デバイスの同期を利用することなく、軽量なデバイス間サービス検出とメッセージ交換を使用する機能です。
NXPの包括的なMatterポートフォリオでは、NXPのトライラジオ・ソリューションによってThread、Wi-Fi、イーサネットをサポートするMatter製品を提供しています。たとえば、RW612ワイヤレス・マイクロコントローラ・ユニット (MCU)(またはIW612)、IW610システム・オン・チップ (SOC)、さらにMCX WワイヤレスMCUは、Matterに含まれる幅広いデバイス・タイプやユース・ケースに対応します。Matterがサポートするデバイスが拡大の一途をたどる中で、特に家電製品などのWi-Fiのみ対応することが多いデバイスでは、この機能に対するニーズが特に高いことをNXPは認識していました。CSAおよびWi-Fi Allianceと連携して開発を進める中で、NXPチームはWi-Fiコミッショニングの開発にリソースを供給してきました。この機能のデモは、市場から肯定的なフィードバックが得られています。
NXPは、Matterエコシステム全体をカバーする数多くのソリューションを用意しています。NXP Matterで詳細を確認して、Matter製品の開発を始めましょう。
NXPが提供するMatterプラットフォームの概要については、以下の表を参照してください。