産業オートメーション市場は転換点を迎えています。工場の自律化とインテリジェント化が進むにつれて、エッジとのセキュアなリアルタイム通信の重要性が高まっているからです。NXPはこの転換に取り組んでおり、この度その実現への大きな一歩として、port GmbHの買収を行いました。
インダストリアル・ネットワークの伝統企業
port GmbHはドイツのハレ(セール)に本社を置く1990年設立の企業であり、さまざまな規格に準拠した高品質の産業通信ソリューションで世界的に高い評価を得ています。同社の代表的な製品としては、PROFINET、イーサネット/IP、EtherCAT、Modbus、POWERLINK、CANopenなど、広く普及しているテクノロジ向けのプロトコル・スタックが挙げられます。またport GmbHでは、TSN (Time-Sensitive Networking) や OPC-UA (Open Platform Communications Unified Architecture) など、産業システム全体の相互運用性を高める新規格もサポートしています。
port GmbHの特徴は、堅牢な製品を展開するだけでなく、豊富なエンジニアリングに関する専門知識を活かし顧客の成功に尽力している点にあります。既製のスタックから顧客ごとに合わせたフィールドバスや産業用イーサネット・ソリューションまで、port GmbHはさまざまな業界にわたり顧客が組込みシステムに信頼性の高いリアルタイム通信を実装できるよう支援してきました。そのサポート・サービスやトレーニング、世界に広がるパートナー・ネットワークにより、30年以上にわたって産業オートメーション業界で信頼を築いています。
port GmbHに、NXPに加わっていただけることを嬉しく思います。同社の実績あるソフトウェア・スタックや豊富な業界知識により、当社のインダストリアル・エッジ・ポートフォリオはさらに完全なものとなるでしょう。同社とともに、お客様がよりインテリジェントで、よりセキュアで、より適応性のあるインダストリアル・システムを素早く構築できるよう支援してまいります。
NXP Semiconductors、VP兼インダストリアル/ネットワーク・エッジ・プロセッシング担当GM、Jeff Steinheider
この度のNXPへの参加は、port GmbHにとって大きな転機と言えます。私たちは数十年にわたってリアルタイム産業用通信を可能にするプロトコル・スタックの開発に努めてきましたが、ソフトウェアは対応するシステムとともに進化しなければならないと常に考えてきました。NXPの一員となったことで、当社の立ち位置はより強固なものとなりました。お客様がパフォーマンスや相互運用性を犠牲にすることなく統合を容易化し、プラットフォームの枠を越えて拡張を進め、最新の産業機器設計に対する要求を満たせるよう、これまで以上に支援してまいります。
port GmbH、最高マーケティング責任者、Christian Bornschein氏
この時期の買収が重要である理由
この度の買収がこの時期に行われたのは偶然ではありません。現在の産業分野は、以下のようなニーズが要因となって急速に発展しています。
- 製造システムの柔軟性および再構成可能性の向上
- 新たな規制に合わせたサイバー・セキュリティ保護の強化
- リアルタイムの意思決定と自動化を可能にするエッジ・インテリジェンス
現代産業の発展の主役はネットワーク・テクノロジ
今回の買収により、NXPは開発時間の短縮と展開の簡素化に役立つより統合性の高い産業分野向けソリューションを提供できるようになりました。
現代の発展の主役は、ネットワーク・テクノロジです。AIの活用によりインサイトを得て、複雑化と自律化の進む機器も正確に制御できるのも、このテクノロジがもたらすデータ・パイプラインのおかげです。従来、こうした機能は専用のネットワーク・モジュールで提供されていました。しかし今日のインフラ分野では、産業オートメーション用のコントローラ、センサ、アクチュエータ、プロセッサにコネクティビティを直接組み込んだ、コスト効率と統合性に優れたソリューションが求められるようになっています。
NXPが描く産業界のビジョンに適合
port GmbHの力がNXPに加わったことで、インテリジェントなインダストリアル・エッジに対応した拡張性の高いターンキー・プラットフォームの展開をより一層進められるようになりました。お客様は同社のプロトコル製品と、NXPのi.MX RT1180クロスオーバーMCUやi.MX 94アプリケーション・プロセッサをはじめとする産業用プロセッサを統合することで、開発スピードを速め、プロトコル切り替えを容易化して、ソフトウェア・デファインド・ファクトリに対する要求を満たせます。
これらのプロセッサには、リアルタイム・ネットワーク用の専用ハードウェア拡張機能、絶縁型コネクティビティ・サブシステム、セキュリティ用の統合型EdgeLock®セキュア・エンクレーブが備わっています。NXPにport GmbHの実績あるソフトウェア・スタックが組み合わさることで、お客様が目的の性能、レジリエンス、コンプライアンスを満たした複雑な産業用製品をより一層迅速に市場へ投入できるようサポートする体制が整いました。
スポットライト:port GmbH
port GmbHは世界中に500社以上の顧客を抱え、そのテクノロジを活かしたデバイスを数千台展開し、産業用通信のリーダーとして知られています。同社のミドルウェア・プラットフォームGeneric Open Abstraction Layer (GOAL) を使用すると、幅広いハードウェア・プラットフォームをマルチプロトコルに対応させられます。こうした柔軟性から、port GmbHとNXPはインダストリー4.0対応ソリューションの開発でお客様の頼りになるパートナーとなります。
幅広い業界トレンド
今回の買収は、以下のような産業オートメーションの未来を形作る主要トレンドに一致したものです。
- ソフトウェア・デファインド・マニュファクチャリング:機能固定のハードウェアから柔軟なソフトウェア駆動システムに移行
- サイバーセキュリティ・バイ・デザイン:EUのサイバーレジリエンス法 (CRA) などの新しい規制に準拠するため、インダストリアル・スタックの全層にセキュリティを組み込む。NXPのハードウェア機能とソフトウェア機能の統合により、独立系ソフトウェア・ベンダはコンプライアンス上の課題に対処できる
- エッジ・インテリジェンス:より多くのデータを高速で処理し、意思決定の効率を向上
- プロトコルの俊敏性:複数の産業用イーサネット規格をサポートし、柔軟性と相互運用性の向上と複雑性の軽減を両立
業界はベンダに依存しないオープンな規格に向けて収束しつつありますが、多様な産業環境にわたり互換性を確保するため、マルチプロトコル・サポートがいまだに必要とされています。こうしたトレンドが加速する中、NXPはport GmbHとともに業界をリードしていきます。