IoT (Internet of Things) は、スマートホーム・テクノロジの進歩、コネクティビティの向上、業界標準の進化に後押しされ、2024年も急速な拡大を続けました。続く2025年も、スマートホームやビルディングを中心に、さらなるイノベーションが見込まれています。ここでは、2025年にIoTのランドスケープを形成すると予想される7つの主要なトレンドを紹介します。
- AI/MLがワイヤレスを活用してエッジにインテリジェンスをもたらす
AI/MLの最近の進歩は、特にスマートホームやスマート・ビルディングにおいて、かつてないほど多くのインテリジェンスと自動化を私たちの生活にもたらすでしょう。しかし、スマート・デバイスで生成された膨大なデータをクラウドにストリーミングすることで、バッテリ寿命が短くなり、システムの応答時間は長くなります。多くのエッジ・デバイスでは、AI/MLの一部をローカルで実行すると、システム全体のパフォーマンスに大きな影響が及びます。NXPは、eIQ Neutronニューラル・プロセッシング・ユニット (NPU) AIアクセラレータなどのハードウェアや、eIQ Toolkitおよび最新のeIQ Time Series Studioなどのソフトウェアの革新を通じて、組込みデバイスでのエッジAIの実現を支援しています。Wi-FiやThreadなどのワイヤレス・テクノロジにより、これらのインテリジェントな機器をローカル・ネットワークやインターネットに接続することで、クラウド・コネクティビティやデバイス間通信が確保されます。2025年のエッジ・デバイスは、Matterとの組み合わせによって、シームレスなコネクティビティと相互運用性を確保し、次世代のAI/ML機能の実現を可能にします。
- 相互運用性がインテリジェントなエネルギー管理の基盤となる
二酸化炭素排出量の削減に向けた規制や取り組みにより、世界中で住宅や建物のエネルギー効率の向上が進んでいます。新たなレベルのエネルギー効率を達成するには、インテリジェントなエネルギー・オーケストレーションが必要です。つまり、電力グリッド、家庭用発電機、蓄電システム、および主要な電化製品がシームレスに連携することで、全体的なエネルギー消費を最適化します。たとえば、ソーラー・パネルが十分なエネルギーを生み出しておらず、グリッドの需要も大きい場合には、洗濯機が洗濯の開始を遅らせることができます。このレベルの調整を可能にするためには、家電製品、太陽光発電システム、スマート・メーターが相互運用性を持ち、共通の規格を通して通信できなければなりません。Matterの進歩により、2025年にはこのビジョンが実現に近づき、NXPのインテリジェントなシステム・ソリューションが、消費者に新たなレベルのエネルギー効率をもたらすためのツールを開発者に提供します。
効率の向上には、相互運用可能なデバイスとエネルギー調整が必要になります。最新のMatterとエネルギー管理について、詳しくはこちらをご覧ください。
- Threadエンド・デバイスの普及が引き続き加速し、Threadがスマートホームのインフラストラクチャを改善する
真に自律的なスマートホームを実現するための鍵となるのが、Threadが提供する低消費電力で低データ・レートのメッシュ・ネットワークです。Threadを使用すると、デバイスは1個の小型バッテリで数年間も動作でき、Threadの自己修復型メッシュ・ネットワークから堅牢なコネクティビティが得られます。IPv6に基づいて構築されたThreadは、Matterで完全にサポートされており、より高いデータ・レートのWi-Fiネットワークを補完します。Threadの最新版であるバージョン1.4では、いくつかの機能強化が加えられ、2025年には導入がさらに加速するでしょう。たとえば、Threadで新しいデバイスや境界ルーターとネットワーク認証情報を共有するための標準化された方法が導入され、すべてのデバイスが1つのThreadネットワークに参加できるようになりました。また、バージョン1.4は、Wi-Fiやイーサネットを利用したThreadネットワークの拡張にも対応しており、Threadネットワークの堅牢性を高めています。これらの改善により、2025年にはThreadの導入がさらに加速し、より多くの機器がMatterのエコシステムに参加できるようになることで、スマートホームのコネクティビティと自動化がさらに進み、エネルギー効率も向上します。
Wi-Fi、Bluetooth、Thread、MatterをサポートするNXPのワイヤレスMCUは、Thread境界ルーターからThreadエンド・デバイスまでの包括的なソリューションを提供します。 画像をダウンロードして、詳細をご覧ください。
- ワイヤレスの普及によって建物のインテリジェンス、効率、安全性が向上
ワイヤレス・コネクティビティは、住宅に新たなレベルのインテリジェンスと効率性をもたらすだけでなく、2025年のスマート・ビルディングの進化においても重要な役割を果たします。ワイヤレスで接続されたセンサやサーモスタットなどのIoTデバイスにより、既存のビルをスマート・ビルディングに変えることができます。スマート・ビルディングは、会議室に誰もいないときはブラインドを閉じ、冷暖房空調設備 (HVAC) の使用量を自動的に調整し、外光の強さに応じて照明を調光することで、エネルギー使用量をインテリジェントかつ効率的に最適化します。また、ワイヤレス・コネクティビティとエッジ・インテリジェンスを組み合わせることで、多くのビルディング・システムに、障害を予測したり、ダウンタイムを最小限に抑えるためにメンテナンスを推奨したりする機能を追加できるようになります。さらに、新しいシステムではIPネットワークや、複数層のセキュリティを備えたKNX IoTなどの標準プロトコルを採用することで、ビルのネットワーク・セキュリティが向上します。このようなインテリジェンス、効率性、セキュリティの向上により、2025年を通じて、ワイヤレス接続されたスマート・ビルディングへの移行が加速し続けるでしょう。
NXPとgeoは、インテリジェントなエネルギー管理の先駆者です。私たちの取り組みと継続的な協力関係について 、詳しくはこちらをご覧ください。
- スマートホームやビルディングが接続デバイスを増やす中で、共存がより重要になる
スマートホームやスマート・ビルディングで使用される接続デバイスの数は2025年にも飛躍的に増加し続け、多くの専門家は、業界で毎年20億台以上の接続デバイスが出荷されることになると予測しています。その結果、スマートホームやビルディングには何百台もの接続デバイスが設置されることになり、それらは多くの場合、異なるメーカーから提供され、真に自律的でインテリジェントな住宅やビルを実現するには、それらが互いに連携する必要があります。スマートホームでは、異なるエコシステムやデバイスがシームレスに相互運用できる標準プロトコルを提供するMatterが、このビジョンの実現に役立っています。Matter対応の照明スイッチは、メーカーやエコシステムに関係なくMatter対応の電球を制御できます。Matterには、Matter以外のスマートホーム・デバイスをブリッジ接続する機能もあり、古いデバイスも統合Matterスマートホームに接続できます。同様に、ビルについても、CSA (Connectivity Standards Alliance) やKNX Associationなどのグループが、コネクテッド・ビルディング・システムにおける同様のイノベーションに向けた基盤構築に取り組んでいます。こうした共存の進展により、多数のスマート・デバイスが互いに連携して、住宅やビルを真にインテリジェントで自律的なものにすることができます。
スマートホームやスマート・ビルディングの増加に伴い、デバイスが連携して動作する必要性が高まります。NXPがどのようにしてコネクティビティの共存を促進しているかをご覧ください。
- アンビエント・コンピューティングが住宅やビルの自律性を高める
アンビエント・コンピューティングでは、位置情報を使用することで、システムが他の方法では実現できないような、コンテキストに沿ったインテリジェントな意思決定を行えるようになります。住宅やビル内のどこに人や物体が存在するかを判断する機能により、自動化に向けた潜在能力が大きく向上します。たとえば、スマート・ドアロックは、住人がドアの前にいることを検出すると自動的にロックを解除できます。スマート・ビルディングの会議室では、入室した人とその数に基づいて照明、冷暖房空調設備 (HVAC)、IT機器を自動的に設定できます。場所を特定するデバイス測距や、動きや存在を検出するアンビエント・センシングなどの機能は、超広帯域 (UWB)、Wi-Fiセンシング、Bluetoothチャネル・サウンディングなどのテクノロジをエッジ処理と組み合わせて使用することで、アンビエント・コンピューティングの基盤となります。2025年には、スマートホームやスマート・ビルディングの増加と、AliroやMatterなどの新しいアプリケーション標準のリリースに伴い、アンビエント・コンピューティングの時代が到来します。
NXPのアンビエント・コンピューティング・ソリューションは、UWBやBluetoothチャネル・サウンディングなどのテクノロジをサポートし、スマートホームに必要な自律型システムを構築します。 画像をダウンロードして、詳細をご覧ください。
- IoTのセキュリティに対する規制と要求が引き続き増加する
世界中の政府が、IoTのセキュリティを強化し、消費者を保護するための新しい規制の制定を迅速に進めています。EUは、サイバーセキュリティの脅威に対処するために、サイバーレジリエンス法や無線機器指令(Radio Equipment Directive:RED)の更新を含む新しい法律を制定しました。米国政府は、業界の複数の大手企業と提携して「U.S. Cyber Trust Mark」を制定しました。多くのブランドが自社製品のセキュリティを宣伝するようになり、セキュリティに対する消費者の意識も高まっています。スマートホームやスマート・ビルディング向けのIoTデバイスは、暗号にとどまらず、デバイス、通信、ネットワークを保護するシステムレベルのセキュリティを実装する必要があります。Matter、Thread、Wi-Fiなどの標準には、ネットワークと通信に対する複数のセキュリティ要件が含まれていますが、NXPのEdgeLock Secure Enclaveなどのシリコン・セキュリティは、これらの要件を実装し、デバイス自体を保護するのに役立ちます。2025年には、IoTデバイスのセキュリティ要件がさらに引き上げられ、デバイス・メーカーはこれらの要件を満たすために新しい標準とテクノロジを採用することになるでしょう。