NXPはMCX NシリーズとMCX Aシリーズのマイクロコントローラに続く、ワイヤレス・マルチプロトコルMCX Wシリーズを発表します。MCX Wは、Arm® Cortex®-M33コアとそのペリフェラルを共通して搭載する、幅広いMCXポートフォリオの中で重要な製品です。
MCX WはMatter、Thread、Zigbee、Bluetooth LEなど複数の規格のワイヤレス接続に対応し、このポートフォリオの価値を高めます。MCX Wは、MCXポートフォリオの中でワイヤレス・アプリケーションに最適な製品です。
ターゲット・アプリケーションには次のものが含まれます。
- インダストリアルIoTのエッジセンサとコントローラ
- アクセス制御、分散ライティング、窓の遮光装置など、商用ビルのインフラストラクチャ製品
- 錠前、ライティング制御、スマートプラグ、窓の遮光装置、センサなどのスマートホーム・デバイス
- 個人向けヘルスおよびフィットネス製品
- 電動自転車
- 一般的な2.4 GHzワイヤレス/ハンドヘルド・デバイス
MCX Wシリーズの先駆けとなるのが、W71ファミリです。W71では、Arm Cortex-M33コアCPUプラットフォームと、Arm Cortex-M33コアCPUが組み合わされています。
MCXW71ブロック図 ブロック図をダウンロードすると、拡大図がご覧いただけます。
次世代のインテリジェント・エッジ・デバイスに対応するNXPの MCX W MCUの詳細をご覧ください。
無線サブシステム専用のMCUコアにより、リアルタイムの低レベル無線機能をアプリケーション・コードから分離できます。また、無線サブシステムのファームウェアを簡単に更新できるようになるため、将来のワイヤレス規格もサポートできます。MCX W71はワイヤレス・エッジ・デバイスに最適で、スタンドアロンMCUとしても、ホストMCU/MPUへのワイヤレス・コプロセッサとしても使用できます。
MCX W72には近日中に、拡張フラッシュ、RAM、GPIO、および付加的な無線機能が追加される予定です。
MCXW72ブロック図 ブロック図をダウンロードすると、拡大図がご覧いただけます。
MCX W72のメインCPU、および無線サブシステムでは、フラッシュとRAMが実質的に2倍になっています。メモリが増えたことで、機能豊富な大型アプリケーションに対応しながら、アプリケーション機能とワイヤレス機能の単一のスタンドアロン実装での信頼性の高いOTA (Over-The-Air) ファームウェア更新を導入するための十分な領域を確保できます。コード・ストレージが増えたことは、Matterなどのフル機能プロトコルを使用した開発で大きな違いをもたらす可能性があります。
Bluetoothチャンネル・サウンディングによる次世代の近接測距
MCX W72は、大幅な機能アップグレードによってBluetoothチャネル・サウンディングをサポートする予定です。Bluetoothチャネル・サウンディングは、2つのデバイス間での距離/近接度の測距を可能にする新しい規格です。
高度な協調アルゴリズムを使用し、多くのチャネルを対象にタイムスタンプ付きパケットと階調位相差を分析することにより、2つのデバイス間での無線信号の飛行時間を測定します。チャネル・サウンディングでは屋内のマルチパス効果と測定推論の曖昧さを管理するために、エンド・デバイスを相互に協調させ、最大72個の無線チャネルを使用します。
スマートフォンのアプリを使って玄関の鍵を開ける少年
MCX W72は、ワイヤレスMCUとして初めてBluetoothチャネル・サウンディングをサポートした製品です。レイテンシを削減するための専用コプロセッサである、NXPのローカリゼーション・コンピューティング・エンジン (LCE) が搭載されています。さらに、MCX W72の無線サブシステムでBluetoothスタック全体が実行されるため、メイン・アプリケーション・コアの負荷が軽減されます。
MCX Wの拡張性に関しては、MCX72では7 mm x 7 mm QFN48パッケージによってMCX W71とのピン互換性が確保される予定です。
インダストリアルIoTエッジのイネーブルメント
MCX W72は2つのCAN-FDインターフェースを搭載し、インダストリアルIoTの分野にも対応します。多くのインダストリアル・アプリケーションや商用アプリケーションでは、ユビキタスCANデータバスが利用されています。CANが最初に導入されたのは自動車分野ですが、フォルト・トレラントな通信を必要とするアプリケーションで広く普及しています。たとえば、HVACシステム、電動自転車、商用車トラッキング、プログラマブル・ロジック・コントローラなどのアプリケーションです。
MCX W MCUは、オフィス内のスマート照明、ブラインド、気候制御などのインダストリアルIoTアプリケーションを可能にします。
Edgelock®セキュリティ・サブシステム
MCX Wシリーズの重要な機能が、EdgeLockセキュア・エンクレーブ・コアプロファイルです。サイバーセキュリティ攻撃に対抗する保護機能のニーズの高まりに対応できるよう、MCX Wには当初からセキュリティ機能が組み込まれています。
EdgeLockセキュア・エンクレーブ、コアプロファイルの図
たとえば、ROMに組み込まれたセキュア・ブート・フロー、暗号化アクセラレータ、暗号化と署名のチェック、真のランダム・ジェネレータ、ワンタイム・プログラマブル (OTP) ヒューズによるデバイス・ライフサイクル管理、組込みセキュリティ・キー管理、ハードウェアの信頼の基点などです。
EdgeLockセキュア・エンクレーブの重要なメリットは、お客様がNXPのEdgeLock 2GOサービス・プラットフォームを利用してIoTデバイスのプロビジョニングと管理を行えることにあります。MatterワイヤレスIoTプロトコルは、実績のある強力なセキュリティ・フレームワークに基づいて構築されています。デバイスがMatterネットワークに参加するには、デバイスが自身のIDを検証し、組込みのデバイス認証証明書 (DAC) によってMatter認証を取得済みであることを証明する必要があります。
NXPはConnectivity Standards Alliance (CSA) の承認を受けた製品認証局 (PAA) であり、製品メーカーに対してMatterの認証とセキュリティ証明書をワンストップで提供し、Matter製品の開発と導入を後押ししています。
MCUXpresso開発エクスペリエンス
MCX Wエクスペリエンスの中心を担うのが、ソフトウェアとツールのMCUXpressoスイートです。MCUXpressoスイートには、コアソフトウェア開発キット (SDK) と統合開発環境 (IDE)、および設定ツールが含まれています。
このSDKは柔軟性が高く、次のような各種のIDEと組み合わせて使用できます。
- MCUXpresso for Visual Studio Code (VS Code):迅速で柔軟な開発を実現する、NXPの拡張機能が追加されたVS Code
- MCUXpresso IDE:NXP MCU向けにカスタマイズされ、使いやすく最適化されたEclipseベースのIDE
- IAR Embedded Workbench:安全性が保証され、高度な最適化が可能なC/C++向けコンパイラおよび開発環境
FRDM EVKを使用したハードウェア開発
MCX Wのリリースに合わせ、MCX W71とW72に対応する低コストのFRDM開発ボードがリリースされます。
プロトタイプの試作を迅速に行えるよう、NXPはFRDM開発ボードを提供しています
2024年のMCX W
MCX W71が先にリリースされ、続いてW72がリリースされます。W71とW72は同じ7 mm x 7 mm QFN48パッケージによりピン互換性とソフトウェア互換性が確保されているため、既存のハードウェア設計を維持しながら、最新のワイヤレス機能を利用できるアップグレードの可能性が得られます。