建物のインテリジェント性とエネルギー効率を高めるには、信頼性が高く、安全で、相互運用可能なコネクティビティが必要です。開発者にとって最新のKNX IoT規格は、建物内の制御デバイスを接続する統一的な手段です。
KNX規格は、数十年前から建物内で標準的な通信プロトコルを使用してデバイスを接続する規格として利用されてきました。建物のIoT化が進む中で、KNX AssociationはKNX IoT規格を策定し、KNXにセキュアな無線コネクティビティと有線コネクティビティを追加しました。KNX IoT規格では、既存のKNX有線ネットワークとの下位互換性を残しながら、IPv6接続を使用して建物内のデバイスをセキュアに接続できます。Matterと同様にKNX IoTも、Wi-Fi、Thread、イーサネットなどのあらゆるIPv6ネットワークをサポートするアプリケーション層プロトコルです。KNX IoTではIPv6を活用することで、ネットワークのセキュリティを確保しながら、インターネット接続を容易にしています。
KNX IoTのもう1つの重要な特長は、ETS構成ツールをサポートしている点です。インストーラは、500社を超える製造メーカーの8,000点を超える製品をサポートするETSを利用して、建物内のシステム構成を検討し、計画することができます。次の段階で、ETS構成ツールによってすべての導入予定デバイスが導入計画に従ってプログラムされるため、新規導入作業の複雑さを大幅に軽減できます。
多くの場合、建物システムに複数のバッテリー駆動デバイスを導入する必要があります。Threadは、低消費電力と強靱なコネクティビティの両方を保証する、低消費電力メッシュ・ネットワークを実現します。ThreadはIPv6を基盤とするため、ボーダ・ルータ・デバイスを使ってThreadデバイスを簡単にインターネットに接続できます。ThreadとWi-Fiの両方のネットワークを利用することで、建物全体にワイヤレス・コネクティビティを確立する包括的なソリューションが得られます。
NXPはKNX Associationと協力して、ETSを完全にサポートするオープンソースKNX IoTスタックを開発しています。現在、クローズド・ソース・スタックを使用したKNX IoT over Threadのサンプルをアプリケーション・コート・ハブで公開しています。このようなサンプルを基に、NXPの幅広いワイヤレス製品ラインナップを利用することで、Thread接続デバイスとWi-Fi接続デバイスの両方に対応するソリューションを開発できます。次の図に示すように、NXPのMCX W71ワイヤレスMCUを使用して、アクチュエータや電球などのThread接続デバイスを実現できます。RW612トライラジオWi-Fi 6 MCUは、ThreadコネクティビティとWi-Fiコネクティビティを提供します。下図の例では、RW612がThreadボーダ・ルータとして機能し、Wi-Fiでインターネット接続されたコンピュータにThreadセンサを接続しています。
NXP製品を使用したKNX IoTデモ。RW612をThreadボーダ・ルータとして使用し、Threadネットワーク上のMCX W71 KNX IoTセンサを、Wi-Fiネットワーク上でKNX IoTを実行しているPCに接続しています。
新しい消費電力規制とテナントが期待する設備水準の上昇から、建物所有者は建物のスマート性とコネクティビティをさらに高める革新的なソリューションを求めるようになっています。KNX IoTは、セキュリティ性の高い相互運用可能なデバイス接続を通じて、インテリジェント性と効率性の高い理想の建物を実現するために役立ちます。